絆創婚

文字数 338文字

同棲を初めて早3年経つが、彼女からはなんの素振りも見えない。
世間体や年齢を気にして焦っているのは自分だけではないのか。
そんなことを考えてしまい、妙にドアを開ける腕が重たい。

「ただいま」
「おかえりなさい」
キッチンの方から声が聞こえる。
ほどよくエアコンの効いた部屋はとても心地よく、まるで彼女の体温のようにも感じた。
「すぐ、食べれるから」
鞄を置き、ネクタイを解いて食卓に着く。
『いただきます』
彼女は少し大きいジャガイモを、隠すように口に運んだ。
「あんまり見ないでよ。」
ぼんやりと彼女を見つめる。
「これ?あぁ、今日ちょっと考え事してて。」
その瞬間、とてつもなく伝えずにはいられない気持ちになった。

「結婚しよう」
気づけば、薬指に絆創膏を巻いた彼女の左手に、自分の手をそっと重ねていた。
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