第20話 路側帯の少女

文字数 1,059文字

 怪談、ですか。

 私は別に好きじゃないんだけど、何人かで集まってるときに、いつのまにかそんな話になってるってことが、あるのね。

 あとで考えてみても、だれがそういう話をしはじめたか、どうしてもわからないなんてときは、ああ、魔が差したんだな、なんて思うのね。

 そうそう。たまに、幽霊が見たいって物好きな人がいるのね。

 好奇心、何とやらで、そんな人は本物を一回見たらいいのよって思うから、私が知っている場所を教えたことが何度かあります。

 知りたい? ええ、いいわよ。教えてあげますよ。

 うん。絶対に幽霊に会える場所があるのね。

 ここ(札幌)から道央道をしばらく走ってね、まあ二時間くらいしたらA市を越えるわね。そこから、もうちょっと行ったところ。

 交通量が少ないから、このあたりは一車線よね。

 走ったことある? 高速だから、きついカーブなんてないし、道もまあ走りやすいよね。

 飛ばしやすい道だけど、百キロも出しちゃダメよ。

 百で走ってしばらくしたら慣れちゃうけど、あっという間に通り過ぎちゃうからね、そこを。だいたい、このあたりは七十制限だから。

 幽霊を見たかったら、スピードを押さえた方がいいわよ。

 どんな幽霊かって?

 子供。小学校低学年くらいの、女の子。

 赤いランドセルを背負ってて、髪をツインテールにしてるから、すぐわかるわよ。

 Tインターを過ぎて十キロくらい走ると……その子が、中央の路側帯に立っているのね。

 そう、必ずね。

 霊感とか霊能力とか、それに時間も関係なし。

 絶対に、見える。

 実家が向こうの方だから、よく通った道なんだけど、毎回見てるわよ。

 さっきもいったけど、たまに物好きな人に教えることがあってね、みんな見たっていうのね。

 最初は、ああ私だけじゃないんだって思ったんだけど、もう五人も六人も見てるからね。今のところ、百パーセントよ。

 その子……迷子になって、親を捜し回っているうちに、くたびれちゃったって感じなのね。

 そんな寂しい雰囲気で、かわいそうなんだけど……私にはどうすることもできないからね。いつか親元に帰れたらいいなって思うくらいで。

 ううん。道へ飛び出してきたり、車に乗ってきたりはしないのね。ただそこに立ってるだけ……。

 ああ、そう……疑ってるのね。

 百聞は一見に如かず。見に行けばいいじゃない。

 くれぐれも飛ばさないように。スピード出してたら、すぐに通り過ぎちゃうからね。
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