第参話

文字数 1,364文字

 そして、約束していた金曜日になった。今日は坂口と心霊スポットへ向けて夜から車で移動しなければいけないので仕事はできる限り残業をせず、早く終わらせようと俺にしては珍しくやる気を出し仕事に取り組んでいた。しかしそんなときに限って俺に普段は来ないような量の仕事が舞い込んでくる。本当に俺は昔からやる気を出したときに限ってろくなことがない。しかし、文句を言いたい気持ちを抑えこういう時こそ冷静に対処をする。朝からやる気十分で仕事をしていたからか、気が付くと昼休憩の時間になっていた。
すると坂口が俺の席の前までやってきて、
 「ゆうま~、今日は約束の日よ~。わかってる~?」
 「わかってますよ、今日は意地でも残業はするなぅってことですよね?」
 「そゆこと~。」
 俺も正直なところこの定期的に心霊スポットへ行くことは、楽しみでもある。俺は昔から幽霊というものを信じていなかった。だってこれだけ多くの人がいて幽霊を見たことがある人っていうのはほんの一握りだし、本当に亡くなった人が全員幽霊になるならこの世の中は信じられないくらいの人口密度になって幽霊も身動き取れない。などと、様々な理由から絶対いないものだと思っていたし本当に存在するならば見せてみろ、というようなことを思っていた。
 だけど坂口と出会い、俺は色々な心霊現象を目の当たりにしてきたことで俺も幽霊という物の存在を信じるようになっていた。それと同時に幽霊という今まで見たことがなかったし、関わることのなかった、未知の存在に惹かれ、俺はなんだかんだ毎回毎回坂口に連れまわされる羽目になっているわけなんだけど。
 「ちょっと終わるのか微妙なところなんで、昼休憩の時間もやろうかなと思ってます。」と、俺はパソコンを触りながら坂口に言った。すると
 「はーい、そこまで!」坂口はパソコンのモニターの電源を落とした。
 「あ、何するんですか!」俺は坂口のほうを振り向こうとすると、
 「はいはい、いいからお昼ご飯いくよー。休めるときに休んどかないと心霊研究家でやっていけないぞー」
 (本当にこの人のこういうところはずるいな・・・、と思う)
 「別に心霊研究家を目指してませんし。どうせまたあそこに行くんでしょ?」
 (やっぱりこの人のことは嫌いになれないな、と改めて思った)
 坂口とご飯を食べその後は嘘のように調子がよく順調に仕事を進めることができた。
 (よし、もうすぐ仕事も終わるし時間も全然余裕あるしいい感じだな)
 そして俺はラストスパートをかけ、とうとう今日やらなければいけなかった分を終わらすことができた。坂口のほうはどうだろうなと思っていると、
 「お、終わったみたいね。」そこには缶コーヒーを持った坂口が立っていた
 「はい、お疲れ様」そして持っていた缶コーヒーを渡してくれた。
 「ありがとうございます。先輩は仕事終わったんですか?」
 「もちのろんよ!今日のためにこの一週間頑張ってきたといっても過言ではないからね!」
多分俺よりも他の人から頼られている分多くの仕事を割り振られているだろうに、この人はほんと超人だな。
 「よし、それじゃあいったん家に帰って荷物を取って準備できたら迎えに行くわね。」そういって坂口と俺は別れ、自宅へと荷物を取りに帰った。
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