第97話  大胆不敵  2

文字数 3,269文字

 

 ※


 ごく普通に高校へと姿を現した竜王さん。その話題はすぐさま広がっていく。

 彼女が学校に来なくなって二週間ほど経過してるからな。

 中には「中退した」やら思ってる人がいたり「転校した」などと言う生徒もいたし。


 あれだけの美人だからな。前々から噂にはなってたが、急に現れるなんて……


じゃあ俺がずっとあの女を見張っておきます。
頼んだぞ。お前も他のメンバーに連絡しろ。
押忍!

 うるさいって! 耳がおかしくなるだろ。

 気合いが入ってるのは分かったから、もう少しボリュームを考えろよ。

黒澤。

 廊下でバッタリ魔樹と出くわした。

 すると染谷くんや鼻の目を気にしてなのか、俺の腕を持って連れて行こうとする。


 その様子じゃ竜王さんを見かけたんだろう。

魔樹。別に黒澤くんにだけ話さなくてもいいぜ。

あの女だろ?

染谷……

 この場で俺だけに話しかけるのは無理があるだろ。

 魔樹には後でラインで連絡を取ればいいだろう。

魔樹!

 廊下にいるとみんなが集まってきた。

 教室の中を覗くと聖奈は突っ伏して寝てやがるぜ。

 みんな竜王さんの件で集まってきたのは明白なので、俺と染谷くんが事情を話す。

 まぁ話すといっても廊下ですれ違っただけなのだが。

とりあえずは王二朗を呼んである。寝てんのか知らんが連絡がつかねーし。


どちらにせよ。俺は竜王と一回ちゃんと話をしてみようと思うんだ。

そうだね。向こうの事情も聞きたいし、こちらから一方的に迫るのは良くないと思う。

黒澤。染谷。美優を頼む。

僕も分かる範囲で彼女を見張っておく。

任せておけ。喫茶店の連中は死んでも守れって龍姉ぇに言われてるからな。
……龍一くんと龍子さんは同一人物。
大丈夫だよ魔樹。美優ちゃんも勿論、聖奈やクラスのみんなも見てるから。

とにかく、王二朗や龍姉ぇに連絡が付き次第、動くつもりだから。

内情を知ってる者からすると上手いものね。

この会話から二人が同一人物なんて、まるで思わせない。

 と、そこでチャイムが鳴ると魔樹と別れ、自分のクラスに戻った。

 心配そうな顔を向ける美優ちゃんだったが、俺が大丈夫ですと声を掛ける。

わたひはどうしたら……

俺がいる範囲なら大丈夫です。

ただ、トイレとか体育の授業とか、俺が離れてしまうタイミングはまた後で考えましょう。

 体育はヤバそうだな。たまに竜王さんのクラスと一緒になる事もあるし。

 男子とは基本、別の授業になるからな……


 そんな時、「押忍」「押忍」と気合の入った声が聞こえてくる。

 これはアレだ。染谷くんのスマホだろう。

 

ごめん! 爆睡してた。すぐに行くっ!

 染谷くんが俺にラインを見せてくれる。

 王二朗くん……君はアイコンもゴリラなんだね。

王二朗が到着次第行動する。

あと……黒澤くんや白竹さんに協力して欲しい事があるんだけど。

 染谷くんが出した指示とは、俺や白竹さんには何も口に出さずその場にいて欲しいとの事だった。 

「すべて俺達がやる」と言い出した彼に、俺も白竹さんも従わざるをえない。


 どういうつもりなのだろうか。


 ※


 王二朗くんが到着したのは、二十分ほどか。次の授業中であった。

 次の休憩時間に竜王さんに話し合いに行くこととなる。

向こうの出方次第だけどさ、場合によっちゃ僕も怒鳴ったりするかもしれない。

だけど全部演技だから、わかってね。

分かった。事前に教えてくれたほうが助かるよ。

 そして授業が終わると染谷くんは真っ先に廊下へ出ると、俺は美優ちゃんを連れて行く。

 別に美優ちゃんは来なくてもいいのかもしれないが、俺が行くというと付いて行きたいらしい。


 だけど、前に屋上で変貌した竜王さんを怖がってるのか、めちゃブルってる。

大丈夫ですよ。俺がいます。

それに……あの時美優ちゃんは竜王さんに気づかれていないはずだから。

逆に堂々とした方がいいです。

はい……

 普通に手を繋ぐと、ギュっと握り返してくれた。

 そいえば俺と美優ちゃんは付き合ってるって事になってるのなら遠慮しなくていいんだった。

 竜王さんの教室に行く前に王二朗くんを見かけた。

 すると俺達を一目見たあともズカズカと教室へ向かう。そして彼の怒号が聞こえてくるのであった。


 これには染谷くんも駆け足になったので、俺も一緒に教室へと急ぐ。

こらてめー。


何普通に学校来てんだよ!

 騒然となるクラス内。王二朗くんのブチ切れ顔にクラスの連中は一歩も動けないほどであった。

 巨漢の怒号ほど恐ろしいものは無いだろう。

なによ。

いきなり何を怒ってんの? 意味分かんないんですけどー

 王二朗くんの切れ顔を見ても普通な竜王さんであった。

 口調もチンピラではなく、ギリギリ女子高生が言いそうなセリフだな。

お前に言ったよな? 今度あったら容赦しねーって。

分かってんのかよ。今すぐここでボコってやんぞ

 既にブチ切れモードな王二朗くんは、竜王さんの机の前まで来ると、バシっと机を叩いた。

 これには女子生徒も叫び声を上げる始末。

待てよ王二朗。こんなとこでやりあったら、お前速攻退学だぜ。

 王二朗くんは染谷くんの制止も聞かず、竜王さんの胸倉を掴もうとする。

 あっさり捕まった竜王さんは叫び声を上げるのだった。


 王二朗くん! やりすぎだ!

やるね~王二朗。容赦なさ過ぎて笑っちまうだろうが。
何よ。ちょっと学校休んでた間に……こんな酷い事するなんて……

汐らしい竜王さん。屋上のチンピラとはかけ離れた表情を浮かべて周囲を見渡すのであった。



王二朗の読みどおりだな。さすが幼馴染だぜ。

王二朗くんの読みどおりか。

単身学校に来るって事は、明らかに戦意がない事を見せ付ける為だ。


確かに一人で突っ込んできて女子生徒を拉致るなんざ、現実的じゃない。


うるせぇよ。お前分かってんのか。今すぐ表にでろや。半殺しにしてやる

しっかし容赦ねーな王二朗よ。

そこまで極悪なヤツって事なのかもしれんが、ちょっと異常だぜ。

おい。いくらなんでもそりゃダメだろ。大人しくしろよ。


あ? 何だてめー。


てめぇもぶっ殺すぞ!

 暴走する王二朗くんは染谷くんを突き飛ばすと、後ろの机をなぎ倒してしまう。

 あまりにも地獄絵図な状況に、クラスの人間はみな廊下へと非難してしまった。


 ついでに俺も廊下に出ると、そのタイミングで染谷くんもブチ切れてしまう事態に。

おいこら。黙って聞いてりゃ調子ん乗りやがって。


いい加減にしろや王二朗!

邪魔なんだよ。てめーから先にぶっ殺してやる!

王二朗くん。染谷くん、やめよう!

こんな所でケンカしちゃったら、まずい!

 と、そこで教諭が慌てて駆けつけてくると、王二朗くんも染谷くんも、何もなかったかのように教室から出てくるのであった。

 

 王二朗くんだけは「おい。冴子。覚えてろよ」と捨て台詞を残し、俺達を無視して自分の教室に戻っていく。

 染谷くんも自分の教室に戻っていくと、俺達もその後を付ける。

 そして自分の机に座るまで無言だった染谷くんはこちらを振り向くなり、ニッコリ笑顔を見せてくれた。

よし。あれくらいでいいだろう。
これで後は、竜王さんがどう出てくるかだね。
あふ、しょめやくんもおうじろーくんも怖かったでし。
大丈夫ですって。染谷くんも王二朗くんも演技だったんですから。

これで竜王は、王二朗と俺達が決裂しと思ってくれりゃ。やりやすい。

あいつの読みどおりなら……ここから竜王は俺達に接近してくる。

そして、正体を現したとき、現行犯逮捕って訳だね。

しかし、王二朗もやりすぎだよ。マジ怖いし。

あそこまでブチ切れるんだから、竜王とは色々ありそうだな。

確かに。王二朗くんの暴走振りはヤバかった。

もし事情を知らなければ、竜王さんが普通の女の子であれば、俺は真っ先に割って入ったに違いない。

 そんな話をしてると、染谷くんのスマホに王二朗くんのラインが届く。

どうだった? 完璧でしょ?

演技は得意でね、伊達に動物園で飼われてねーから。


あ、白竹さんに「怖くないよ、うほうほっ」って言っておいてくれ。

あふっ! おうじろーくん面白いね。

 仕込みは完了だ。

 今度は染谷くんが竜王さんに接触し、接点を持たせる作戦へと移行する。

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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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