9 報告

文字数 957文字

 夜明け前。
 リダンは、ルウィンラーナに帰った。
 みんな、まだ寝ている。
 リダンは、静かに家の中に入った。テッダの寝言が聞こえる。
 そして、ろう下を歩き、自分の部屋まで来ると、中へ入り、ちゃっかり寝てしまった。
 
「おはよ」
 朝の食堂に思わぬ人が入ってきた。
「うへ。リダン!」
 ロークルが、パムをくわえたまま、彼を指さす。
 アノネは、となりの部屋で顔を洗ったまま、水もふかずにこっちを見ている。
 ボージャーは、飲み物をくだしてむせながら、やっと言った。
「いま、かえったのかい?」
 この日の朝は、大騒ぎとなった。
 旅行者リダンは、質問のうずに巻きこまれた。
 もちろん、彼はすべてを話した。ハラルドの塔へは、太陽を背にしないと近づけないこと。”キーゴン”の生き残りのキリス・ギーに、会ったこと。
 みんなが驚き、リダンは得意になっていた。彼は、遅く起きてきて、まだ寝ぼけているテッダに、こう言ったものだ。
「いいかい、テッダ。キリスはね、右がトルームで、左がコーティだよ。ぼくが名前をつけたんだぜ!」
「わたし、そのトトームさんとコーティさんに、会ってみたいわ」
「トトームじゃない、トルームだよ」騒ぎは、ずっと続いた。
 
 午後になって、リダンは、ユティと二人きりだった。
 二人で庭のいすに腰かけて、足をぶらぶらさせていた。
「あなた、そのひげ、ずっとそらなかったのね」
「あ、これかい?」リダンは、初めて来た時から、ひげをはやしていたのだ。
「いてっ」
 ユティが、いきなりひげを引っぱった。
「ふふ。そう? やっぱりね」
 二人は、そうしてしばらくふざけていた。
 
 夜。
 第二の旅行者が帰ったことに対する危険は、みんなが承知していた。
 誰もが、リダンに、必ずマントを上にかけて寝るように言って、おやすみをした。
「おやすみリダン。心配ないと思うけど」
「ああ、おやすみ」
 こんなに楽しい日に、彼が一人で消えてしまうなんて、とても考えられないことだった。
 
 真夜中。
 リダンは、まどろみながら、ちょっと風が吹いたかな、と思った。
 
 次の日。
 めずらしく早起きしたテッダは、リダンの部屋のドアが開き、ろう下に投げ出されたマントを見て、恐ろしさに動けなくなった。
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登場人物紹介

リダン|大陸の旅人

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