詩小説『町洗いのランドリーマシーン』3分の過去と町。全ての大人へ。

エピソード文字数 1,039文字

町洗いのランドリーマシン

くるり。くるり。
色褪せた遊園地で回れコーヒーカップ。

過去をぶら下げて、お互い辿り着いた古いアパート。
開け放った窓の向こう、あなたは手招きしている。

導かれるようにベランダへ。昼に浮かぶ白い月も。
生温い風も、僕とあなたを静かに包むよ。

町洗いのランドリーマシーン。
生まれ変わって、待ち合わせさ。

やけに落ち着いている、大人のあなたは、
旅先で、どれほどまでに濃い、
経験をしてきたのでしょうか?

あなたのフレームのない眼鏡が、ずれ下がり、
垣間見せる瞳は、
ひとつの汚れもなく透き通って見えるのは、
何故だろう?

想い出話になれば、互いに無口になるのは、
笑えない痛い過去を、笑って欲しい痛い過去を、
隠しながら、あやしながら、いたぶりながら、
ここへ辿り着いたからさ。

風になびくその長い黒髪の匂いに、
包まれていたかった。
幼かったあの日へ帰れるから。

町洗いのランドリーマシーン。
生まれ落ちて、0歳、初めまして。

鼻を撫でるそのか細い指先は、
乾いていて、冷たそうで、
やけに綺麗に見えました。

ただ、黙りこくって見下ろしたのは、
僕等が流れ着いた町。

垂れ下がる電線へ、
独り寂しく鳴り響く踏み切りへ、
無造作に並ぶ古民家へ、
愚かな夢をぶら下げていました。

悲鳴のように甲高い音。
僕等を電車が突き抜けた。

町洗いのランドリーマシーン。
洗い流して、君の香りになろうか。

栓を落とせば、泡は溢れ出して、
あなたは思わず笑って。

持ち寄ったラムネの、
炭酸は弾けて、
澄み切って、
潔く消えた。

真面目な顔して乾杯した。
祝い事などなくても。

町洗いのランドリーマシーン。
真新しい色へ、染まっていくのだ。

小舟に浮かんで漂って。
泪の海を彷徨って、
辿り着いた離島で、
似たような傷を、似つかない傷を、
隠し持つ僕等は出逢った。

シワを作ったワンピースの。
垂れ下がる鎖骨の紐も、
白い肌のほくろも、
ただただ、見惚れるのでした。

町洗いのランドリーマシーン。
生まれ変わって、待ち合わせさ。

サンダル履きの素足の、
重ね合わせる足指に、
愛してる理由なんてのは、
それで充分だと思いました。

ここのアパートは宇宙の果て、
僕等は月面に降り立った。
次はなにして遊ぼうか。

過去はぶら下げて、
名前もない旅の道連れにしようか。

色気は垂れ流されるように、
この町で生きていくのです。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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