『国立アンブロシア小学校のキッチン・ガーデン』プロット

文字数 1,332文字

【起】
 三食カップラーメン生活で生きてきた小学生の憂美 ( ゆうみ ) 。彼女の転校先は食育に力を入れるカリキュラムが徹底された学び舎、国立アンブロシア小学校だった。
 校内には野菜、果物、香草、様々な食材を育てる広大な菜園畑、つまりキッチン・ガーデンが完備され、温室ではカカオ栽培も行われていた。
 ある日の放課後、校内で迷子になった憂美は銀髪少女ラーリィと出会う。ラーリィの作った『チョコレート・クオリア』を食べて感動していると「ユーミ、私と一緒に校内コンクールへ参加しない?」と誘われる。

【承】
 校内コンクールとは年に四回、四季ごとに一度催される料理バトルのことだった。生徒の誰もが目指すのは大賞『アンブロシア賞』!
 アンブロシアとは不老不死へ至る伝説の果実、つまり『究極の美味』を意味するのだと初代理事長が百五十年前に宣言したことから冠されたという。
 大賞への計画を立てた二人は必要な材料をキッチン・ガーデンで育て始める。何もかも未経験の憂美はラーリィに教えられながら奮闘する。
 近所の農家から家畜糞を肥料としてもらう交渉に一難、隣接するキッチン・ガーデンによってクラスメイトとの対立にまた一難ありながらも、食材はすくすく育つ。

【転】
 ある日、二人のキッチン・ガーデンが荒らされる。怪鳥ヨモツヘグイの仕業だった。
 落ち込む憂美。あることに気づいたラーリィは彼女を励ます。
「ヨモツヘグイの好物はアンブロシアという伝承があるの。私たち、アンブロシアの領域に近づいているんだよ!」
 再起して、再び食材を育てる二人。今度はヨモツヘグイ対策を行う。収穫間近になると泊まり込みで深夜の見張りも行い、二人は交流を深めていく。

【結】
 校内コンクール当日。屋外での調理作業中にキッチンタイマーが壊れたり、雨が突然降り出すハプニングがありながらも周囲の協力を経て作品を完成させた憂美とラーリィ。
 審査を経て、結果発表の時間となった。審査委員長兼小学校の理事長であるサングラスをかけた老婦人が大賞は「なし」と宣言する。結果、憂美とラーリィは他の出場者複数人と共に金賞を授与される。表彰台にはしゃぐ憂美だが、たったひとりの大賞でなければ価値がないと呟くラーリィ。
 放課後、二人きりの教室で食べるカップラーメン。
「会社の人が一生懸命考えて、作ってくれたんだよ。だからカップラーメンって美味しいんだよね。栄養バランスも配慮されてるし」
 だから、と憂美は言葉を続ける。
「ラーリィが作ったものも全部、美味しかったよ。あたしを幸せにして、お腹いっぱいにしてくれた。だから今、あたしはこの学校にいられるの。あたしにとっては価値があったよ」
 憂美の笑顔と、涙を流すラーリィ。
「それにね、もしも価値がないとしても、これから価値を持たせればいいんじゃない? 今までの全部をひっくるめて、何度だってコンクールに出よう。いつか大賞になれたら『何もかも全部が価値あるものだった』ってことになるでしょ? それまで手伝うよ」
 翌日、キッチン・ガーデンを耕し肥料を撒く二人の姿があった。今度は何を作ろうか、と話しながら。次の校内コンクールまで、残り三ヶ月。そして今度こそ大賞を手にしようと互いへ誓い合ったのだった。

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