飴と鞭より愛の鞭
文字数 3,834文字
眠い。
目がしょぼしょぼする。
頭の片隅がしんと冷えていてるのに、体は熱を持っていて、鼓動がいつもより早い。
「あふ……」
「どうしたよ、ヨースケ」
右腕を突 いてきたのは同級生で、同じトランペットのリョータだ。
リョータのトランペットはすごくいい。
昨日はパートリーダーがほめてくれたけど、俺は肺活量で迫力を演出しているだけだ。
でも、リョータのトランペットは本物だと思う。
多彩で澄んだ音のフレーズはずっと聞いていたいくらいで、俺にしては珍しいんだけれど、入部してすぐに声をかけた。
それ以来、何かと仲良くさせてもらっている。
「目の下、クマができてんぞ。徹夜?昨日カノジョとイイコトしちゃった?」
「カノジョなんかいねぇの知ってんだろ。……マンガの一気読み」
「意外~、木場野 君、マンガとか読むんだ。……カノジョ、いないんだ」
前列にいる森本が、ちらっとこっちを振り返った。
「何のマンガ読むの?そんなに面白いなら、今度貸して?」
ふぅん、なるほど。
昨日のデキゴトはスルー案件ってことだな。
よし、乗ってやろうじゃないか。
変なウワサを流さないなら、それでいい。
「漫画日本の歴史」
「それ、一気読みするもんなの?」
ぷはっとリョータが笑ったところで、パートリーダーのチョップが後ろ頭にさく裂した。
「コラ新人。もうすぐOBも来るのに、あんま私語が多いと締め出すぞ。あと木場野 、お前ホント顔が死んでるから、ちょっと顔洗ってこい」
「へーい」
正直助かったと、すぐに立ち上がる。
貫徹の末の眠気が最高潮で、ちょっとクラクラきてたから。
こんな大事な日の前に貫徹するなんて、本当に馬鹿だと思うけど。
でも、仕方ないだろう?
朝起きて「やっぱり夢だった」なんてことになったらと思うと、目を閉じるのが怖かったんだ。
だって、そんな夢を何度見たかわからない。
そして、今度こそ現実だと思えば思うほど、緊張で目は冴えわたった。
失望されないかな。
おねえさんはどんな大学生になってるんだろう。
「会いたかった」って、いきなりハグとかされたりして!
……いや、ないない。
「懐かしいねぇ、元気だった?あ、これ、イマカレなの」なんてことになったら、なったら……。
いや、まだそうと決まったわけじゃない。
とにかく落ち着け、俺!
なんて。
それはもう想像と妄想が頭を駆け巡って、眠るどころではなかったのだ。
音楽室を出て、床に目を落としながらペタペタと廊下を歩いた。
ズルだけど、ちょっと遠い手洗い場まで行くことにする。
おねえさんにカッコ悪いところは見せたくないから、なんとか眠気を覚まさなくっちゃ。
なんて思いながら、帰りも遠回りして戻った音楽室は、出ていったときとは様相が一変していた。
音楽室の扉が両開きに大きく開け放たれていて、各楽器を構えて座る部員たちの姿が、廊下からでもよく見える。
「1年生?」
扉のすぐ脇に立っている私服姿の女性が、戻った俺を見て声をかけてきた。
高校生でもないし、教師でもない年齢のその女性を見てピンとくる。
俺が顔を洗っている間に、OBたちが結集していたようだ。
「あ、はい」
「みんな待ってるわよ、早くしないと、」
「遅いぞ、木場野 !」
女性の言葉の途中で、鋭いバリトンボイスが飛んできた。
「え?」
聞き慣れている声だけど、違和感ある口調に目を向ければ、普段、部長が指揮者としてタクトを振るう場所に田之上先生が立っている。
「速やかに着席を」
そこにいるのは、別人かと思うほどオーラが違う”顧問の先生”だった。
あのひょろひょろの”田之上先生”はどこへ?
「も、申し訳ありません」
眠気なんか一瞬で吹っ飛んだ俺は、妙に姿勢よく座っている部員の間を抜けて、定位置に座った。
「では、最初から」
俺が楽器を構えるのを待って、顧問の腕がおもむろに上げられる。
あごを下げて、俺たちを見据える目は鷹のようだ。
曲は「インヴィクタ序曲」。
ゆったりとして華やかな始まりを演出するための緊張が、一気に高まった。
「もう一度!力任せに吹くんじゃない!風呂を沸かしてるんじゃないんだぞっ」
「クラリネット、雑!」
「主役の音を出せ、トロンボーン!もう一回!」
「勘違いするな、ソロじゃない!隣の音を聞けっ」
「もう一回!」
「そこは歌え!怒鳴り声はいらない」
「いいぞ、この感覚を忘れないうちに、通しでもう一回!」
ナニコレ。
唇が痺れそう。
久しぶりに、全身の筋肉を意識している。
「俺、運動部に入ったっけ」と、隣のリョータに確認する暇もない。
繰り返し繰り返し、ダメ出しが飛んでくる。
しつこいくらい音を重ねて曲を練り上げ、やっと顧問の指揮棒が下げられた。
「よし、今日はこんなものだろう。……どうだった?OB。今年の出来を聞こうかな、最年長の鬼龍院 」
指揮棒を目で追うと、入り口すぐの壁際に立つ、かっちりメイクのキレのある美人にたどり着く。
「最年長のコールは必要ですかね、二重人格顧問。1年生が怯 えてるじゃないですか。今年初降臨?」
くっきり美人がにっと笑ったのと同時に。
「……来るぞ」
「鬼のアイコ」
ぼそぼそっと誰かがつぶやく声がする。
「全体的に粗削りだけど、迫力があって悪くないんじゃないですか。ただ、我がまままな音ですね。商店街で歳末商戦の呼び込みやってんじゃないんだから、少し抑えろってんですよ。必死すぎ。余裕なさすぎ。緊張してるのを差っ引いても、まとまり感が足りない。名付けて、”個人商店主バンド”」
「はははっ」
二重人格顧問はとても満足そうだ。
「相変わらずうまいこと言うなあ。去年は何だったっけ、冴木 」
「え。……はぁはぁしすぎの”発情バンド”」
うつむいた部長の耳が真っ赤に染まっている。
男子高校生に「発情」を言わせるとは、なかなか鬼畜な顧問だ。
「ぶつぶつ切れるのはすごくよくなってるじゃん。努力の成果が如実に表れてるね」
「鬼のアイコ」の口元がさらに上がって、鬼というよりヤマンバっぽい。
「筋トレ重視しましたから」
「そうだね、確かに頑張っていたと思うよ。さて、雪下 は?」
バリトンボイスが告げた名前を耳にしたとたんに、ドクンと大きな鼓動が胸を打った。
ああ、さっきから俺の視線を奪い続けている人は、本当に「雪下 」の名前を持つ人なんだ。
まだどこか信じられない思いでいたけれど、やっと、やっと。
音楽室に戻ってきたときには気づかなかったけれど、それでよかったと思う。
だって、気づいてしまったら、きっとその場から動けなくなっていただろうから。
瞬きもできずにいる俺の前で、「雪下 」おねえさんがふわっと笑う。
「個人の音は多少、目立っていたけど、この曲が好きだっていう気持ちが伝わってきたから、いい演奏だったと思いますよ。主張できる音の技術があって、気持ちもある。これから、どんどんよくなるんじゃないかな」
「まったまた~。ゆっきーは甘いんだから」
「鬼のアイコ」が隣に立つ「ゆっきー」の足を軽く蹴った。
「アイ子が鞭 ばっかり振るうから、私が飴 役をやるんでしょ。もしアイ子が飴 るなら、私も鞭 るよ?」
「うそ~ん。ゆっきー、鞭 振るえんの?」
「できるよ」
「本当かなぁ。よーし、やってみようじゃないの。ふむ、そこの少年」
「鬼のアイコ」の声は聞こえていたけど、俺はそれどころじゃなかった。
だって、おねえさんとがっつり目が合ってしまったんだから。
見てる!
おねえさんが俺を見てる!
「おい、そこの!アスパラが伸びすぎちゃったみたいな、トランペットの1年生!」
「……俺ですか?」
我に返って「鬼のアイ子」に目を向けた視界の端で、お姉さんの目が丸くなった。
「そうそう。アスパラ少年、キミだよキミ。キミのトランペット、すごくクリアな音を出してたね。音程も安定しててぶれないし、しかも、ワンブレスでどこまで吹くのさって感じだから一体感がある。風呂なら一気に沸きそうだよ。あ、田之上先生」
「ん?」
「今どきの子に、火吹き竹の例えは、伝わんないんじゃないですかね」
「ああ、そうか」
すっかりヒョロヒョロに戻った田之上先生が、にこっと笑う。
「昭和生まれの鬼龍院 じゃないと、わからないか」
「誰が昭和っ子ですか!そこは知識が豊富と言ってくださいよっ。ほら、ゆっきー、飴 ってみたよ」
むっとしたまま、「鬼のアイコ」が肘で「ゆっきー」を押した。
「うん」
おねえさんの微笑 は、俺の周りの酸素を奪ってしまったようだ。
胸が苦しくて、呼吸がままならない。
おねえさんの柔らかな眼差しに絡めとられて、俺は身動きも瞬きもできなくなる。
トランペットを持つ手が汗でぬめっていくのに、それを拭 うこともできない。
もう高校生じゃないおねえさんは、俺の想像の百倍も千倍もきれいになっていた。
長くまっすぐだった髪は、肩下でふわふわとしたウェーブを描き、薄化粧が顔立ちの可愛らしさを引き立てている。
俺がせっかく高校生になったというのに。
ずっと会いたかった女性 はとっくに大人になっていて、プールの雫も木漏れ日もないのに、ただキラキラと輝いている。
「鞭 ってみ?」
おねえさんはいつだってほめ上手で、大げさなくらい、何でも喜んでくれる人だ。
そのおねえさんに鞭 役をやらせようとは、さすが「鬼のアイコ」と思ったのだけれど。
「トランペット、好きじゃないでしょう」
笑顔のままのおねえさんが振るったその鞭 は、浮かれていた俺の心を一瞬で粉砕したんだ。
目がしょぼしょぼする。
頭の片隅がしんと冷えていてるのに、体は熱を持っていて、鼓動がいつもより早い。
「あふ……」
「どうしたよ、ヨースケ」
右腕を
リョータのトランペットはすごくいい。
昨日はパートリーダーがほめてくれたけど、俺は肺活量で迫力を演出しているだけだ。
でも、リョータのトランペットは本物だと思う。
多彩で澄んだ音のフレーズはずっと聞いていたいくらいで、俺にしては珍しいんだけれど、入部してすぐに声をかけた。
それ以来、何かと仲良くさせてもらっている。
「目の下、クマができてんぞ。徹夜?昨日カノジョとイイコトしちゃった?」
「カノジョなんかいねぇの知ってんだろ。……マンガの一気読み」
「意外~、
前列にいる森本が、ちらっとこっちを振り返った。
「何のマンガ読むの?そんなに面白いなら、今度貸して?」
ふぅん、なるほど。
昨日のデキゴトはスルー案件ってことだな。
よし、乗ってやろうじゃないか。
変なウワサを流さないなら、それでいい。
「漫画日本の歴史」
「それ、一気読みするもんなの?」
ぷはっとリョータが笑ったところで、パートリーダーのチョップが後ろ頭にさく裂した。
「コラ新人。もうすぐOBも来るのに、あんま私語が多いと締め出すぞ。あと
「へーい」
正直助かったと、すぐに立ち上がる。
貫徹の末の眠気が最高潮で、ちょっとクラクラきてたから。
こんな大事な日の前に貫徹するなんて、本当に馬鹿だと思うけど。
でも、仕方ないだろう?
朝起きて「やっぱり夢だった」なんてことになったらと思うと、目を閉じるのが怖かったんだ。
だって、そんな夢を何度見たかわからない。
そして、今度こそ現実だと思えば思うほど、緊張で目は冴えわたった。
失望されないかな。
おねえさんはどんな大学生になってるんだろう。
「会いたかった」って、いきなりハグとかされたりして!
……いや、ないない。
「懐かしいねぇ、元気だった?あ、これ、イマカレなの」なんてことになったら、なったら……。
いや、まだそうと決まったわけじゃない。
とにかく落ち着け、俺!
なんて。
それはもう想像と妄想が頭を駆け巡って、眠るどころではなかったのだ。
音楽室を出て、床に目を落としながらペタペタと廊下を歩いた。
ズルだけど、ちょっと遠い手洗い場まで行くことにする。
おねえさんにカッコ悪いところは見せたくないから、なんとか眠気を覚まさなくっちゃ。
なんて思いながら、帰りも遠回りして戻った音楽室は、出ていったときとは様相が一変していた。
音楽室の扉が両開きに大きく開け放たれていて、各楽器を構えて座る部員たちの姿が、廊下からでもよく見える。
「1年生?」
扉のすぐ脇に立っている私服姿の女性が、戻った俺を見て声をかけてきた。
高校生でもないし、教師でもない年齢のその女性を見てピンとくる。
俺が顔を洗っている間に、OBたちが結集していたようだ。
「あ、はい」
「みんな待ってるわよ、早くしないと、」
「遅いぞ、
女性の言葉の途中で、鋭いバリトンボイスが飛んできた。
「え?」
聞き慣れている声だけど、違和感ある口調に目を向ければ、普段、部長が指揮者としてタクトを振るう場所に田之上先生が立っている。
「速やかに着席を」
そこにいるのは、別人かと思うほどオーラが違う”顧問の先生”だった。
あのひょろひょろの”田之上先生”はどこへ?
「も、申し訳ありません」
眠気なんか一瞬で吹っ飛んだ俺は、妙に姿勢よく座っている部員の間を抜けて、定位置に座った。
「では、最初から」
俺が楽器を構えるのを待って、顧問の腕がおもむろに上げられる。
あごを下げて、俺たちを見据える目は鷹のようだ。
曲は「インヴィクタ序曲」。
ゆったりとして華やかな始まりを演出するための緊張が、一気に高まった。
「もう一度!力任せに吹くんじゃない!風呂を沸かしてるんじゃないんだぞっ」
「クラリネット、雑!」
「主役の音を出せ、トロンボーン!もう一回!」
「勘違いするな、ソロじゃない!隣の音を聞けっ」
「もう一回!」
「そこは歌え!怒鳴り声はいらない」
「いいぞ、この感覚を忘れないうちに、通しでもう一回!」
ナニコレ。
唇が痺れそう。
久しぶりに、全身の筋肉を意識している。
「俺、運動部に入ったっけ」と、隣のリョータに確認する暇もない。
繰り返し繰り返し、ダメ出しが飛んでくる。
しつこいくらい音を重ねて曲を練り上げ、やっと顧問の指揮棒が下げられた。
「よし、今日はこんなものだろう。……どうだった?OB。今年の出来を聞こうかな、最年長の
指揮棒を目で追うと、入り口すぐの壁際に立つ、かっちりメイクのキレのある美人にたどり着く。
「最年長のコールは必要ですかね、二重人格顧問。1年生が
くっきり美人がにっと笑ったのと同時に。
「……来るぞ」
「鬼のアイコ」
ぼそぼそっと誰かがつぶやく声がする。
「全体的に粗削りだけど、迫力があって悪くないんじゃないですか。ただ、我がまままな音ですね。商店街で歳末商戦の呼び込みやってんじゃないんだから、少し抑えろってんですよ。必死すぎ。余裕なさすぎ。緊張してるのを差っ引いても、まとまり感が足りない。名付けて、”個人商店主バンド”」
「はははっ」
二重人格顧問はとても満足そうだ。
「相変わらずうまいこと言うなあ。去年は何だったっけ、
「え。……はぁはぁしすぎの”発情バンド”」
うつむいた部長の耳が真っ赤に染まっている。
男子高校生に「発情」を言わせるとは、なかなか鬼畜な顧問だ。
「ぶつぶつ切れるのはすごくよくなってるじゃん。努力の成果が如実に表れてるね」
「鬼のアイコ」の口元がさらに上がって、鬼というよりヤマンバっぽい。
「筋トレ重視しましたから」
「そうだね、確かに頑張っていたと思うよ。さて、
バリトンボイスが告げた名前を耳にしたとたんに、ドクンと大きな鼓動が胸を打った。
ああ、さっきから俺の視線を奪い続けている人は、本当に「
まだどこか信じられない思いでいたけれど、やっと、やっと。
音楽室に戻ってきたときには気づかなかったけれど、それでよかったと思う。
だって、気づいてしまったら、きっとその場から動けなくなっていただろうから。
瞬きもできずにいる俺の前で、「
「個人の音は多少、目立っていたけど、この曲が好きだっていう気持ちが伝わってきたから、いい演奏だったと思いますよ。主張できる音の技術があって、気持ちもある。これから、どんどんよくなるんじゃないかな」
「まったまた~。ゆっきーは甘いんだから」
「鬼のアイコ」が隣に立つ「ゆっきー」の足を軽く蹴った。
「アイ子が
「うそ~ん。ゆっきー、
「できるよ」
「本当かなぁ。よーし、やってみようじゃないの。ふむ、そこの少年」
「鬼のアイコ」の声は聞こえていたけど、俺はそれどころじゃなかった。
だって、おねえさんとがっつり目が合ってしまったんだから。
見てる!
おねえさんが俺を見てる!
「おい、そこの!アスパラが伸びすぎちゃったみたいな、トランペットの1年生!」
「……俺ですか?」
我に返って「鬼のアイ子」に目を向けた視界の端で、お姉さんの目が丸くなった。
「そうそう。アスパラ少年、キミだよキミ。キミのトランペット、すごくクリアな音を出してたね。音程も安定しててぶれないし、しかも、ワンブレスでどこまで吹くのさって感じだから一体感がある。風呂なら一気に沸きそうだよ。あ、田之上先生」
「ん?」
「今どきの子に、火吹き竹の例えは、伝わんないんじゃないですかね」
「ああ、そうか」
すっかりヒョロヒョロに戻った田之上先生が、にこっと笑う。
「昭和生まれの
「誰が昭和っ子ですか!そこは知識が豊富と言ってくださいよっ。ほら、ゆっきー、
むっとしたまま、「鬼のアイコ」が肘で「ゆっきー」を押した。
「うん」
おねえさんの
胸が苦しくて、呼吸がままならない。
おねえさんの柔らかな眼差しに絡めとられて、俺は身動きも瞬きもできなくなる。
トランペットを持つ手が汗でぬめっていくのに、それを
もう高校生じゃないおねえさんは、俺の想像の百倍も千倍もきれいになっていた。
長くまっすぐだった髪は、肩下でふわふわとしたウェーブを描き、薄化粧が顔立ちの可愛らしさを引き立てている。
俺がせっかく高校生になったというのに。
ずっと会いたかった
「
おねえさんはいつだってほめ上手で、大げさなくらい、何でも喜んでくれる人だ。
そのおねえさんに
「トランペット、好きじゃないでしょう」
笑顔のままのおねえさんが振るったその