第20話「最終章」:奇抜な、担当交代の方法

文字数 1,443文字

 佐藤君は、半分寝ていた。店を出て、佐藤君がホテルに、帰りましょうと言ってきた。しかし栄子さんが、私は少し疲れたから、コーヒーでも飲みたいなと言うのである。そこで我々の、ホテルのスナックは、夜遅くまでやっているので、行くことにした。

 ホテルに着いて佐藤君が、ごめんなさい、眠いので失礼しますと、部屋へ上がってしまった。
 コーヒーとケーキのセットを頼んで、話し込んだ。早苗さんが、北島さんて、歌もうまいし、踊りも上手で、女の子にもてるでしょうと笑いながら話した。いや、それもこれも、仕事のために覚えたんですよと答えた。

 仕事の事を聞かれ話すと医療系の営業さんですか、通りで歌や踊りが上手な訳だと笑っていた。村下が、いや、あなた方こそ歌がうまいし踊れるし、もてるんじゃないと言うとそんな事ないよ。ここらでは、不良の娘じゃないかと、むしろ白い目で見られる位ですよ、と語った。

 いや、すごいよ、私もいろんな若い人にあったが、こんなにのりの良い女の子に会ったのは、新潟に来て二年になるが初めてだよと言った。静かだった栄子が、おもむろに、それならまた遊びに来てよと言ったのである。いやね、実は今日は、私の送別会なんだ。

 長野へ転勤なんだよと言うと、急に不機嫌になった。それなら、今日が、最初で、最後なのと、ちょっと、怒ったような目で、言い放った。ごめんと言うと、名刺をちょうだいと、言われ名刺を渡すと、彼女がそこにあった紙ナプキンに彼女の連絡先を書いて渡してくれた。

 彼女が転勤後の移動先を連絡してよと、強めの口調で言ったので、わかったと答えた。また、私、旅行がてらに長野へ行くかもしれないからねと、含み笑いを浮かべて話した。食べ終わって、早苗が、眠くなったので、お先に失礼しますと言うので送ろうとすると大丈夫、近いから自分で帰れると言い帰っていった。

 その後、学校時代の話、歌の話、雪国の生活の話など栄子は堰を切った様に話し始めた。そこで、私がビールを出してきて、また飲みはじめた。彼女は笑わないで聞いてよね、実は小さい頃、いつか白馬の王子様が、目の前に現れて、私を救ってくれる話が、好きで何度も繰り返し、その本を読んだんだと、懐かしそうに話していた。

 その後、うまいウイスキーあるから飲もうと言い氷を冷蔵庫から出し水割りにして飲み始めた。そして一時を過ぎた頃、彼女が酔っ払ってきて今晩は、このまま帰りたくないと言うので、
私のホテルの部屋で、長岡の最後の夜を惜しむ様に、情熱的な夜を過ごしたのである。 

 冬の雪国の寂しい夜は、男も女も、ぬくもりが、恋しいと言う気持ちはわかる。ましてや自分が好きだと思った人なら、こうなるのも、良く理解できる気がした。早朝、彼女はスッキリした感じで、ありがとうと言って、颯爽と立ち去っていった。その翌週、新潟営業所の送別会の時が来て、また仲間と別れる事なった。

 村下は、これがサラリーマンの宿命だと強く感じた。特にスナックあゆみのママが、別れ際に、言った、あんたは、「女に気をつけろ」の言葉が、胸に突き刺さった。その後、新潟営業所で、長野県へ移動して、担当病院の交代方法について新潟の営業所長と具体的な検討を始めた。

 すると、所長が、県境に近い、十日町市で、夕方の仕事を終えて、その日のうちに、長野県飯山市へ入り、宿泊する事にした。翌日の朝、長野経由で松本へ移動して担当交代をする事にした。 これは、若いからできる事で、なかなか仕事を終えての移動は、強行軍である。
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