最後の試練トマトケチャップ味の100円アイス
文字数 2,390文字
*内容をさらにわかりやすくした『映画チャットノベライズ(笑)』のブログもよろしくお願いします。
映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/12/06/154458)
「はっ!」
光景が変わった。
チョコレート地獄から解放され、俺は足を鎖でつながれていた。
鎖は鉄の輪っかにつながっている。
外で飼われている犬みたいだ。
足を切り落とす以外、逃げることはできない。
「門平君……」
リアナがうるんだ瞳で俺を見る。
彼女も鎖でつながれている。
机をはさみ、対角線上にいた。
「起きたようだな」
言左衛門は左の壁際にいた。
怪獣の角みたいに、額に突き刺さった刀は取れていない。
血は出ていないし、大丈夫だろう。
「ふごー!! ぐごー!!」
美雪は俺の右側で、イビキをかいて寝ている。
両目がお尻のように突き出ていた。
背中を壁にして、頭はたれ、両足を投げ出している。
……早く起きろ!
しゃべれない理由は、このゲームの主犯格、萌美が台の上にのって、机を使って、プラスチックのおもちゃの銃を組み立てているからだ。
壁に囲まれてて逃げ場はない。
リアナと言左衛門が俺を起こせなかった理由だ。
萌美は口の周りに焦げ茶色のチョコレートをつけたまま、
「にいにとねえねは知ってる? カカオは精神に影響するの」
「ボゴー!!」
「萌美はこの一週間、チョコばっかり食べてるの。おいしいから」
「むごー!!」
「…………」
知的な会話をひけらかす途中で、萌美はしゃべるのをやめた。
いや、さっきのが知的かどうかは置いとこう。
ポッキーを2本持って、ツカツカと美雪に近づく。
「えいっ!」
「ぼうっ!?」
萌美は美雪の鼻の両穴にポッキーを突っ込んだ。
鼻水を飛び散らせ、美雪が目をさます。
美雪は周りの状況を見て、
「ここは!? みんな無事!?」シリアスな顔つきになり、
「あなたっ! 私たちをここに閉じ込めてどういうつもり! 何が目的なの!」
捕らわれた女刑事ぶりを発揮した。
彼女のイビキが緊迫した状況を殺していたので、「おっおう」としか答えられない。
言左衛門はむすっとし、リアナは苦笑いだ。
萌美はまた銃を組み立て始めると、
「あれは暑い夏でした。萌美はコンビニにアイスを買いに行ったの。ママからおこづかいをもらって。コンビニに入ったとき、にいにとねえねたちが出てきたよね?」
「えっ!?」
頭の中で海馬が活性化する。
大学の講義が終わった帰り、暑いからコンビニ行ってアイスを買いにいった。
お会計を終えて、出て行くときに、金髪碧眼の女の子を見た。
白いワンピースを着て、かわいい子だなとチラ見したおぼえがある。
――あのときの子かっ!
みんなおぼえているのか、萌美を見つめて口を開ける。
俺たちは会ってたんだ。
ゲームマスターと。
しかし、いったい何をしたというんだ?
「まだ罪を思い出せない?」
「……わからない。俺たちは君に何をしたんだ?」
「萌美が買おうとした、トマトケチャップ味を、全部取ってったの!」
「……はいっ?」
コンビニで買ったのは、100円で買える『トマトケチャップ味』の棒付きアイスだ。
めずらしいし、安いから買ったけど、とんでもなくまずかった記憶がある。
売れなかったのか、コンビニからその味は消えた。
「楽しみにしてたのに! 酸味がすごくて癖になってたのに!」
「いっいや、それなら、ほかのコンビニで買えば……」
「疲れるのっ! そこじゃなきゃ嫌なの! 萌美がどんなにくやしかったかわからないの!」
「わかんないよ。それ」
萌美が泣き出したので、あやすように言う。
リアナが同情したのか、
「お姉ちゃんが買ってあげるから……」
「もう売ってないの! 二度と会えなかったの!」
「あー……売れなくて生産中止になってたよね……うん」
ポリポリと頬を指でかいた。
言左衛門は同情したのかうなずいている。
美雪は機嫌が悪くなり、眉間に深いシワが寄った。
萌美は銃を組み立て終わった。
銃身の長いライフルっぽい。
それを机に置き、
「にいにとねえねは選択を間違いました。反省してもらいます。この銃は自由への鍵です。萌美はこれからお昼寝タイムです」
大あくびした。
銃を持って仲間を撃てという意味なのだろうが、緊張感がない。
萌美はあくびしながら、出口に向かい、
「じゃね……あれ?」
金属製の引き込み戸を閉めようとしたけど、重いのか動かない。
「うんんんんんんんんんっ!!」
両手でひっぱってもだめなようだ。
なんだろう。癒やされる。幼女のあどけなさに安らぐ。
美雪が起き上がると、ライフルを持ち、
「あんたたちを殺さないと、自由になれないわ!」
「うんしょ! うんしょ!」
「私は生きなきゃならないのよ! 死にたくないの!」
「閉められないぃぃぃぃっ! ママァァァァァァっ!」
超シリアスな展開なのだろうけど、萌美の幼子ボイスが殺意を殺している。
もう誰か! 閉めるの手伝ってやれ!
銃を撃たれたとしても、たぶん死なないだろうから、展開が読めて、リアナと言左衛門は苦笑い状態だ。
美雪のマジ顔が笑えてしまう。
「あんたたち! 何ニヤついてんの!」
「美雪――やめよう」
「……そうね。めんどくさくなったし。ゲームオーバーでいいわ。もう」
美雪は作っていた顔を崩し、ため息をついて、銃を置いた。
俺たちの海外ドラマはここで終わった。
萌美は扉が閉められないと警察に泣きついて、俺たちを捕らえてたことを忘れており、事件がバレた。
涙を浮かべて国家権力には言わないでという顔つきだったので、かわいいから許してあげた。
銃の中身はミルクキャンディーだった。
ジグソウ ソウ・レガシー解説【了】
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「はっ!」
光景が変わった。
チョコレート地獄から解放され、俺は足を鎖でつながれていた。
鎖は鉄の輪っかにつながっている。
外で飼われている犬みたいだ。
足を切り落とす以外、逃げることはできない。
「門平君……」
リアナがうるんだ瞳で俺を見る。
彼女も鎖でつながれている。
机をはさみ、対角線上にいた。
「起きたようだな」
言左衛門は左の壁際にいた。
怪獣の角みたいに、額に突き刺さった刀は取れていない。
血は出ていないし、大丈夫だろう。
「ふごー!! ぐごー!!」
美雪は俺の右側で、イビキをかいて寝ている。
両目がお尻のように突き出ていた。
背中を壁にして、頭はたれ、両足を投げ出している。
……早く起きろ!
しゃべれない理由は、このゲームの主犯格、萌美が台の上にのって、机を使って、プラスチックのおもちゃの銃を組み立てているからだ。
壁に囲まれてて逃げ場はない。
リアナと言左衛門が俺を起こせなかった理由だ。
萌美は口の周りに焦げ茶色のチョコレートをつけたまま、
「にいにとねえねは知ってる? カカオは精神に影響するの」
「ボゴー!!」
「萌美はこの一週間、チョコばっかり食べてるの。おいしいから」
「むごー!!」
「…………」
知的な会話をひけらかす途中で、萌美はしゃべるのをやめた。
いや、さっきのが知的かどうかは置いとこう。
ポッキーを2本持って、ツカツカと美雪に近づく。
「えいっ!」
「ぼうっ!?」
萌美は美雪の鼻の両穴にポッキーを突っ込んだ。
鼻水を飛び散らせ、美雪が目をさます。
美雪は周りの状況を見て、
「ここは!? みんな無事!?」シリアスな顔つきになり、
「あなたっ! 私たちをここに閉じ込めてどういうつもり! 何が目的なの!」
捕らわれた女刑事ぶりを発揮した。
彼女のイビキが緊迫した状況を殺していたので、「おっおう」としか答えられない。
言左衛門はむすっとし、リアナは苦笑いだ。
萌美はまた銃を組み立て始めると、
「あれは暑い夏でした。萌美はコンビニにアイスを買いに行ったの。ママからおこづかいをもらって。コンビニに入ったとき、にいにとねえねたちが出てきたよね?」
「えっ!?」
頭の中で海馬が活性化する。
大学の講義が終わった帰り、暑いからコンビニ行ってアイスを買いにいった。
お会計を終えて、出て行くときに、金髪碧眼の女の子を見た。
白いワンピースを着て、かわいい子だなとチラ見したおぼえがある。
――あのときの子かっ!
みんなおぼえているのか、萌美を見つめて口を開ける。
俺たちは会ってたんだ。
ゲームマスターと。
しかし、いったい何をしたというんだ?
「まだ罪を思い出せない?」
「……わからない。俺たちは君に何をしたんだ?」
「萌美が買おうとした、トマトケチャップ味を、全部取ってったの!」
「……はいっ?」
コンビニで買ったのは、100円で買える『トマトケチャップ味』の棒付きアイスだ。
めずらしいし、安いから買ったけど、とんでもなくまずかった記憶がある。
売れなかったのか、コンビニからその味は消えた。
「楽しみにしてたのに! 酸味がすごくて癖になってたのに!」
「いっいや、それなら、ほかのコンビニで買えば……」
「疲れるのっ! そこじゃなきゃ嫌なの! 萌美がどんなにくやしかったかわからないの!」
「わかんないよ。それ」
萌美が泣き出したので、あやすように言う。
リアナが同情したのか、
「お姉ちゃんが買ってあげるから……」
「もう売ってないの! 二度と会えなかったの!」
「あー……売れなくて生産中止になってたよね……うん」
ポリポリと頬を指でかいた。
言左衛門は同情したのかうなずいている。
美雪は機嫌が悪くなり、眉間に深いシワが寄った。
萌美は銃を組み立て終わった。
銃身の長いライフルっぽい。
それを机に置き、
「にいにとねえねは選択を間違いました。反省してもらいます。この銃は自由への鍵です。萌美はこれからお昼寝タイムです」
大あくびした。
銃を持って仲間を撃てという意味なのだろうが、緊張感がない。
萌美はあくびしながら、出口に向かい、
「じゃね……あれ?」
金属製の引き込み戸を閉めようとしたけど、重いのか動かない。
「うんんんんんんんんんっ!!」
両手でひっぱってもだめなようだ。
なんだろう。癒やされる。幼女のあどけなさに安らぐ。
美雪が起き上がると、ライフルを持ち、
「あんたたちを殺さないと、自由になれないわ!」
「うんしょ! うんしょ!」
「私は生きなきゃならないのよ! 死にたくないの!」
「閉められないぃぃぃぃっ! ママァァァァァァっ!」
超シリアスな展開なのだろうけど、萌美の幼子ボイスが殺意を殺している。
もう誰か! 閉めるの手伝ってやれ!
銃を撃たれたとしても、たぶん死なないだろうから、展開が読めて、リアナと言左衛門は苦笑い状態だ。
美雪のマジ顔が笑えてしまう。
「あんたたち! 何ニヤついてんの!」
「美雪――やめよう」
「……そうね。めんどくさくなったし。ゲームオーバーでいいわ。もう」
美雪は作っていた顔を崩し、ため息をついて、銃を置いた。
俺たちの海外ドラマはここで終わった。
萌美は扉が閉められないと警察に泣きついて、俺たちを捕らえてたことを忘れており、事件がバレた。
涙を浮かべて国家権力には言わないでという顔つきだったので、かわいいから許してあげた。
銃の中身はミルクキャンディーだった。
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