1-3.木の上
文字数 1,417文字
しばらくして美羽は目を覚ます。
「起きたかな?」
美羽は先と同じように窓の外を見つめている沖津に話しかけられた。
「あ、どうも・・・」
美羽は再び英単語帳を開き続きから読み始めた。
「受験生かい?」
「あ、はい・・・」
「そうか、大変だね、僕は大学に行ったことはないけど、素敵なキャンパスライフを送りたかったなってよく思うんだ」
「そう・・・ですか・・・」
深夜の高速道路を夜行バスは走り続けた。
✳︎
美羽に再び強烈な眠気が襲ってきて、うとうとし始めた。 眠気を抑えながらも何とかして英単語帳を読もうとした。
「眠い時は寝た方がいい。そんな状態で勉強しても頭に入らない」
沖津は美羽に語りかけるように言った。
(確かにそうかも・・・)
美羽は返事をしなかったが、観念して英単語帳を閉じると、目も閉じた。
しばらくして眠りに落ちた。
✳︎
すると、夜行バスを運転していた30代男は突然アクセルを全開に踏み込んだ。
夜行バスが走行速度を急激に上昇させた。
30代男は夜行バスを暴走させたまま、運転席のドアを開けると外に転げ出た。
バスが目の前のガードレールに突っ込む。
沖津は自らがクッションの役割を果たすよう、美羽を抱きかかえた。
次の瞬間、物凄い轟音がして、美羽は目を覚ました。
(な・・・なに?何が起こったの?)
美羽の口は沖津の大きな手によって塞がれていた。
訳がわからず美羽は自身の口を塞いで自分を抱えている沖津を見る。
「あー、すまない、お嬢さん、いきなり抱きかかえてしまって、ただ、どうか落ち着いて聞いて欲しい」
美羽は混乱して沖津の顔を見つめる。
「お嬢さん、お名前は?」
沖津が美羽の口を塞いでいた手をゆっくり離した。
「み・・・みう・・・」
「美羽ちゃんか、いい名前だね。僕は沖津」
沖津は美羽を抱き抱えたまま、それ以上刺激せぬよう、優しく語りかけた。
「結論から言うと、このバスは、今、道路じゃなくて木の上なんだ」
「・・・木の上?・・・何で?」
「まぁ、話すと長くなるのだが、一言で言えば、僕はただ、事態に対処しただけなんだ」
「・・・事態に・・・対処?」
「最初、君の隣に座っていたサングラスの大男がいただろ?そいつは悪い奴で、ナイフで襲ってきたから、やっつけた。」
「・・・?」
「次、その後ろに座っていた悪いおっさんが首締めてきたので、それもやっつけた」
「・・・」
「で、君が寝ている間に、前に座っていた悪い女が銃を僕に向けたから、それもやっつけた。今度は運転手さんだ。運転手さんも銃を持ってて、僕は悪い女の銃を手に取って運転手さんをやっつけたんだ。あ、これ飲むかい?」
沖津はペットボトルのウーロン茶を取り出すと口を開けて美羽に渡した。
「・・・はぁ・・・」
美羽は沖津に言われるがまま、呆然と差し出されたペットボトルウーロン茶を飲んだ。
「その後、最後の悪い奴に運転を任せていたんだけど、そいつ、運転ほったらかして逃げちゃったんだ、それで、バスがガードレールに突っ込んだ」
「・・・それで?」
「バスはガードレールを突き破って森の木々の中に突っ込んだのだけど、うまい具合に大樹の上に乗っかってさ、運が良かった本当に」
沖津は美羽の身体のほこりを払うと、抱き抱えていた美羽の身体を自由にして席に座らせた。自身もそのまま再び美羽の隣の窓席に座り、外を眺めた。
「・・・それで?」
美羽は沖津の横顔を見ていた。
「・・・以上さ」
沖津は窓の外を見ながら何食わぬ顔で答えた。
「起きたかな?」
美羽は先と同じように窓の外を見つめている沖津に話しかけられた。
「あ、どうも・・・」
美羽は再び英単語帳を開き続きから読み始めた。
「受験生かい?」
「あ、はい・・・」
「そうか、大変だね、僕は大学に行ったことはないけど、素敵なキャンパスライフを送りたかったなってよく思うんだ」
「そう・・・ですか・・・」
深夜の高速道路を夜行バスは走り続けた。
✳︎
美羽に再び強烈な眠気が襲ってきて、うとうとし始めた。 眠気を抑えながらも何とかして英単語帳を読もうとした。
「眠い時は寝た方がいい。そんな状態で勉強しても頭に入らない」
沖津は美羽に語りかけるように言った。
(確かにそうかも・・・)
美羽は返事をしなかったが、観念して英単語帳を閉じると、目も閉じた。
しばらくして眠りに落ちた。
✳︎
すると、夜行バスを運転していた30代男は突然アクセルを全開に踏み込んだ。
夜行バスが走行速度を急激に上昇させた。
30代男は夜行バスを暴走させたまま、運転席のドアを開けると外に転げ出た。
バスが目の前のガードレールに突っ込む。
沖津は自らがクッションの役割を果たすよう、美羽を抱きかかえた。
次の瞬間、物凄い轟音がして、美羽は目を覚ました。
(な・・・なに?何が起こったの?)
美羽の口は沖津の大きな手によって塞がれていた。
訳がわからず美羽は自身の口を塞いで自分を抱えている沖津を見る。
「あー、すまない、お嬢さん、いきなり抱きかかえてしまって、ただ、どうか落ち着いて聞いて欲しい」
美羽は混乱して沖津の顔を見つめる。
「お嬢さん、お名前は?」
沖津が美羽の口を塞いでいた手をゆっくり離した。
「み・・・みう・・・」
「美羽ちゃんか、いい名前だね。僕は沖津」
沖津は美羽を抱き抱えたまま、それ以上刺激せぬよう、優しく語りかけた。
「結論から言うと、このバスは、今、道路じゃなくて木の上なんだ」
「・・・木の上?・・・何で?」
「まぁ、話すと長くなるのだが、一言で言えば、僕はただ、事態に対処しただけなんだ」
「・・・事態に・・・対処?」
「最初、君の隣に座っていたサングラスの大男がいただろ?そいつは悪い奴で、ナイフで襲ってきたから、やっつけた。」
「・・・?」
「次、その後ろに座っていた悪いおっさんが首締めてきたので、それもやっつけた」
「・・・」
「で、君が寝ている間に、前に座っていた悪い女が銃を僕に向けたから、それもやっつけた。今度は運転手さんだ。運転手さんも銃を持ってて、僕は悪い女の銃を手に取って運転手さんをやっつけたんだ。あ、これ飲むかい?」
沖津はペットボトルのウーロン茶を取り出すと口を開けて美羽に渡した。
「・・・はぁ・・・」
美羽は沖津に言われるがまま、呆然と差し出されたペットボトルウーロン茶を飲んだ。
「その後、最後の悪い奴に運転を任せていたんだけど、そいつ、運転ほったらかして逃げちゃったんだ、それで、バスがガードレールに突っ込んだ」
「・・・それで?」
「バスはガードレールを突き破って森の木々の中に突っ込んだのだけど、うまい具合に大樹の上に乗っかってさ、運が良かった本当に」
沖津は美羽の身体のほこりを払うと、抱き抱えていた美羽の身体を自由にして席に座らせた。自身もそのまま再び美羽の隣の窓席に座り、外を眺めた。
「・・・それで?」
美羽は沖津の横顔を見ていた。
「・・・以上さ」
沖津は窓の外を見ながら何食わぬ顔で答えた。