2006年9月25日

文字数 757文字

2006年9月25日
 明日から雨になる予報のせいか、気分がブルーのままだ。それに、図書館へそろそろ本を返しにかなくてはならない。しかし、家から出る気がしない。

 ホッファーはありとあらゆる本を読んでいる。それは百科全書派の姿である。啓蒙主義者は彼の言う知識人とは違う。彼らは自律した知識の学習と共有を目指したのであって、無知な民衆を指導しなければならないと考えていたわけではない。「何でも知ってやろう」というわけだ。

 しかも、ホッファーは図書館の傍の部屋を借り、そこで本を読む。彼は近代の理念に忠実であるが、所有と競争の資本主義的原理に否定的であり、欲望にも慎重である。その意味で、彼は、確かに、資本主義体制に対しミスフィットである。「真に『もてる者』とは自由や自信、そして富さえも、他人から奪わずに獲得できる人たちのことである。彼らは自らの潜在能力を開発し適用することで、これらすべてを獲得する。これに対して、真の『もたざる者』とは、他人から奪わなければ何も得ることができない人たちである。彼らは他人から自由を奪うことによって自由を感じ、他人に恐怖心と依存心を植えつけることによって自信を深め、他人を貧しくすることによって裕福になる」(『情熱的な精神状態』)。

 エリック・ホッファーは百科全書派の指し示した近代の理念を忠実に目指したのであり、近代のあるべき姿を提示している。今、ホッファーを読む意義はそこにある。

 ウェブ上で、独善と他人蔑視にとりつかれた情熱的な精神状態が暴れている光景を目にすることがある。それはホッファーのプライドをめぐる分析通りである。ネット社会も百科全書的な近代の理念によって可能になっているのであって、自律と禁欲が欠かせない。ホッファーはブログの思想として、依然、新鮮に必要とされている。
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