第96話  白竹美優視点 真実 4

エピソード文字数 3,645文字

 ※


 蓮くんと楓蓮さんが同一人物?

 

 私は二人とのやりとりを思い出しますが、あまりにも衝撃な事実に頭が回ってません。


 放心状態のまま、玄関から出た瞬間、美樹は思いつきました。



うへ。今日は楓蓮さんの出勤日でしっ

 ちょっと待って下さい! 

 わ、わたひ。絶対顔を見れないよ。


 楓蓮さんが蓮くんなんて……信じられなひ!


 


 喫茶店の裏から厨房に出ると、じいじが忙しそうにフライパンを操っていました。

おおっ魔樹っ(美樹)。ピンチじゃ! ヘルプっヘルプっ!
あひっ! すぐに手伝いますっ
 とにかく。料理を作りながら落ち着こうとしてると、やがて楓蓮さんと紫苑さんが一緒に喫茶店に入ってきます。
ちょとまって! わ、わたひ。心の準備が……
おはよう楓蓮さん。紫苑さん
まいどですっ。ってか速攻満員やん。
すぐ着替えてきますねっ!

 あ、あう! ちらっと楓蓮さんを見ただけでドキドキしてしまいました。


 こんなの……駄目です。

 心の準備が出来てないまま、楓蓮さんと普通に喋れる気がしません。


 そんな気持ちのまま、暫くすると紫苑さんと楓蓮さんが更衣室から出てきます。

よっしゃ。やったるで
ですね。気合い入れてやりまっしょい
楓蓮さん。紫苑さん。お願いします!
 魔優はこちらにやってくると、じいじのサポートに回ります。
魔樹(美樹)どうしたの? オーダー溜まりまくってるじゃない!
あひぃ! す、すぐにやりま……

 い、今はお仕事しないと……頑張らないと! 


 頭がグルグルなまま、必死に手を動かしていると、横から急に楓蓮さんの顔が出てきました。

ほい。頼んだぞい
 じいじが作ったオムライス3つは、楓蓮さんの愛情オムライスです。
す~き。す~~~き。す~~~~き。よっしゃでけた!

 ケチャップで文字を書く楓蓮さん。

 愛情オムライスを完成させると盆に乗せ、ささっと行ってしまいました。

すっかりベテランじゃな。初めてでテンパっとったあの頃が遠い昔のようじゃ

 楓蓮さん……

 ほ、本当にあなたは……蓮くんなの?

どうしたんじゃ? 元気が無いのう
ふぇっ! う、ううん……なんでもないのでし

ほい。どんどん作りまくるぞいっ!

いーあるさんすーうーるーちーぱ~~~!

 再びオムライスを作ってるじいじ。

 今度は紫苑さんが厨房に入ってくると、楓蓮さんが「気合いですっ!」と声を掛けていました。

ちょ~~! 何でウチを指名すんねん。アホちゃうかあのおっさん
おうふっ! 紫苑さんもとうとう固定客が出来たみたいじゃな

簡単ですよっ。ただケチャップで書くだけなんで

などと先輩風吹かせてみました

よっしゃ。気合い入れてやったるで!


ん? 魔樹ちゃん?

どないしたん? そんな楓蓮さんに見とれてしもーて

ええっ?
君がいくら男前でも、その熱い視線は突発的すぎるやろ。
あ、ち、ちがいま……
こーいうばあい。関西ちっくに答えるとどんな感じですか?
んもうっ。はずかしい、やん

なるほど。語尾のトーンを上げるんですね?


んもうっ。魔樹くんったら。はずかしいやんっ

あ、あわわわっ

ふはっ!

魔樹ちゃん引いてしもーとるで。まだまだ精進せなあかんな。

ですね。もっと修行しないと……

って店内に誰も居ないので行ってきます~~~!

 店内を走り回る楓蓮さん。そして紫苑さんが愛情オムライスに初挑戦していると、最初から綺麗な文字で書ききっていました。

おお~やるのう。パーフェクトじゃな
すご~い! 私より全然綺麗だし、このお店で一番上手いかも

ちなみにウチは、中学生の時書道部やってん

だから上手いんかいって言われれば、よーわからんけど。でけたで!

そうだったんですね。

私。ちょっと……楓蓮さんのような文字を期待してたんですけど

ははっ。アレやろ? 凄かったらしいやん? それ本人も言ってたで

何処かの国の記号みたいじゃったのー

いいじゃないですか。

あんな綺麗な人でも……そーいうポイントがあった方が可愛いですよね?

魔優はまだ知らない。

楓蓮さんが……蓮くんだってことを。


ど、どうしよう。

 その時でした。店内からオーダーを持って来た楓蓮さんは、申し訳無さそうに答えるのでした。
また。私のオムライス3つ追加です……
ふはっ。楓蓮さん。どんだけ頼まれてんねんマジで

 紫苑さんに突っ込まれると、めちゃ悲しそうな顔をする楓蓮さんでしたが、すぐに顔色を変えます。


 喫茶店に新たなお客さんが来ると、即座に向かっていきました。

魔樹(美樹)お母さんはまだなの?
 あ、言うのを忘れてました
しょ。しょれが……
私はとりあえず、友人に会いに行ったと告げると、魔優が怒ったさんになってしまいました
なにそれ! こんなに忙しいのに
ああっ、怒らないで。だ、だけど。お友達さんがその……急に入院したらしくって

 めちゃ怒ってる魔優は「二人でお願い」と言いながら接客に向かいます。

 するとじいじがフライパンを置いて、小声で喋りかけてきました。

二人には悪いが……ママは好きにさせてやってくれ。

あれでも必死に頑張っておるんじゃよ

 だけど私も……私なりに必死なのです。


 今でさえ、楓蓮さんが入れ替わり体質だと受け入れられず、その場しのぎで対応するのが精一杯でした。

 このままじゃ……

 このままじゃ私。頭が……おかしくなりそう。


 ※



魔樹(美樹)休憩行っておいで

 喫茶店のお仕事が落ち着いてくると、皆で順番に休憩を取ります。


 今日だけは楓蓮さんと一緒になるのは出来るだけ避けたかったのですが……

 更衣室に入ると、紫苑さんと楓蓮さんが椅子に座っていました。

あ、魔樹ちゃん。ご来店~
おい~~っす
あひ。ど、どもです

 楓蓮さん? 最近の掛け声が「おい~っす」になってまし。


 きっと龍子さんの影響だろうけど……

じゃあ日曜日。夕方頃で。ちょいさおりんにも連絡しとこ
はいっ! お願いします!
ん? 何のお話ですか?
 私が質問すると、紫苑さんが立ち上がって「楓蓮さんがわんちゃん飼うんよ」と言い残して「行ってきます」と更衣室から出て言っちゃいました。
わんちゃん? ですか
はい。前々から紫苑さんの後輩さんで、わんちゃんを譲ってくれるって話になってまして、今度の日曜日に引き取りにいく予定なんです
わぁ! そうなんですね
何気に初ペットです。すっごい楽しみなんですよ
 めちゃ嬉しそうな楓蓮さん。その表情を見てると、少しばかり心に余裕が出てきました。
ほら。日曜でしたらそのままGWですし。わんちゃんを付きっ切りで面倒見れますし、最初が肝心ですからね

 そういう事なんですね。

 だけど私が妙に気になったのは……日曜日の夕方って点です。



 別に朝からでもいいんじゃないかなって思ったけど。

 よくよく考えれば……

そいえば。楓蓮さんって、朝方は忙しいのです?

……そうですね。あんまり時間が取れなくて、実家に戻って色々やってます。

平日とかは……全然無理なんですよ

 ……そっか。


 入れ替わり体質だったら……

 蓮くんが活動している時には……楓蓮さんとして外には出られない。


 私達は双子だから、お互いが入れ替わることで正体を隠し合ってますが、普通だったら違う性別になってる。つまり誰の目にも触れない時間があるはず。



 あぁ……やっぱり。目の前にいるのは……

どうしました? そんなに見つめられちゃ恥ずかしいですよ
あひゃう!

 私が叫び声を上げると、彼女はニコっ~と笑ってくれる。

 その視線に逃げることができず、じっと見られていると、再び頭がグルグルしてきました。



 あんまり見ないで。ま、また私。変になる……


魔樹くん。どうしました?

顔色が悪いよ

だ、大丈夫……

 私を見つめたまま心配そうな顔をする楓蓮さん。

 たまらず顔を隠してしまうと、私の額に彼女の手が触れました。

熱は無さそうですね。ちょっと休んだ方が良くないですか?

 顔が接近しすぎて、声も出せない状況になってしまい、ついに身体が震えてきました。


 無意識に指の間から覗き込むと、めちゃ目が合ってしまいました。


 その様子が……蓮くんの表情と重なって見えたとき、私の頭の中で、ママが言ったことが思い浮かびました。



 


 わ、私の……王子様。

ちょ! 魔樹! くん?

 そんな楓蓮さんの声。

 と同時に椅子から転げ落ちそうになった私を支えてくれた

無理しない方がいいですよ。なんなら、もう上がった方が良くないですか?

しんどそうです

 ああ……どんどん深みに……

 楓蓮さんに身体を支えられて、顔が目の前にあって、しかもめっちゃ大きな胸が当たっておられまし。


 もうだめ。な、何も出来ない……



 さっきママから聞いて、そんなに時間が経ってないだけに、私は頭の切り替えが全然できなかった。

よいしょ
あ、あうう……か、楓蓮さ……
今日は上がった方がいい。家まで運びます
 いつの間にかおんぶされてる。

 楓蓮さんに……男の子な美樹が……



 その状況を考えれば考えるほど、私は動くことが出来ませんでした。


 こうなってしまえば、頭が完全にストップしてしまい、その身体を楓蓮さんに預け、ただただ動くことも、指も動かすことも出来ないでいました。


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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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