月食の日

文字数 1,084文字

 アリーアは蛇王に反発する意思を持つ反乱軍と合流した。彼らは蛇王に身内を生贄に捧げられた人々の遺族で構成されていた。
 彼らは蛇王に関する情報を密かに集めていた。ザッハークはアポピス配下でも強大な力を持つ魔神。まともに戦っては勝ち目は薄い。しかし、月食の時にだけ、ザッハークが大きく弱体化することがある。その時に戦えば勝ち目はあった。
 しかし月食が訪れる日。ザッハークは警固を普段よりも厳重にしていた。アリーアたちと反乱軍。連携した動きが必要になる。
 月食が明けた翌日。ザッハークは普段よりも残忍になり、生贄を多く取る。自分や身内が生贄に取られないように、商人たちが献上品を贈る。
 ザッハークの住む宮殿に、商人たちからの献上品が次々と運ばれる。月食明けの楽しみとして、ザッハークはそれを受け取った。
 夜半。月食がはじまる。普段は寝ている兵も起き出し、厳重な警戒が続く。すると、城下の南で火の手があがる。急いで兵が駆けつけると、今度は北の城門付近で火の手があがった。城下は混乱する。
 宮殿内部。商人から贈られた献上品に化けていたアリーアとセト、反乱兵が、行動を開始する。反乱兵が宮殿内で騒ぎを起こし、火の手をあげる。その隙にアリーアとセトは一気にザッハークの寝所に躍り込んだ。
 両肩から蛇を生やした異形の魔人。それがザッハークだった。しかし月食の影響でザッハークは苦しんでいた。アリーアとセトは、容赦なくザッハークに襲い掛かった。アリーアは聖なる火で、セトは雷を呼んでザッハークを攻撃した。
 アリーアとセト。二人の力に膝をついたザッハークだが、真の姿アジ・ダハーカとなり、再び二人と対峙する。
 三頭三口六目の有翼の蛇竜。火のブレス。猛毒のブレス。吹雪のブレスを吐き、おまけに闇の魔法も使える。アリーアは猛毒にあてられ、セトは闇の魔法を受けて体力を削りとられ、疲労したところをアジ・ダハーカの爪で切り裂かれた。
 アジ・ダハーカの力の前に苦戦するセト。だが、完全なる皆既食となった瞬間、アジ・ダハーカが苦しみだした。それを見たアリーアは聖なる光の呪文を唱える。神聖なる光に当てられたアジ・ダハーカは、のたうちまわり、苦しみながら、溶けるようにしてその場で消滅した。
 奮戦したアリーアとセトは、兵士たちによって医務院に運ばれた。神官の法力治療と、医師の治療。そして手厚い看護を受けて、すぐに快方に向かった。
 脅威は去った。城下に平穏が戻り、民衆は歓喜した。
 だが、真の脅威はまだ滅んでいない。いや、確実に力を増している。
 わずかな静養で、アリーアとセトは再び旅立ちの朝を迎えた。
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