第7話 玉手箱で目覚めたスタンド使い

文字数 2,291文字

 皆さんは時間を止められたら何をしたいですか?



 私は暴漢相手に時間停止→背後に回る。→「誰かお探しかね?私はこちらだが、どうしたのかね?」→永遠に攻撃が当たらない→最後に無駄無駄ラッシュ をしてみたいです。



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 浦島太郎の標準装備



・腰蓑



・釣り竿



・びく









 特撮でも浦島太郎をモチーフにしたライダーは戦闘向きのイメージを持たなかった。



 それもそうだ。得物が釣り竿のヤツなんて『狩人×狩人』で見た事が有る程度。



 しかも念が本格的に出た後はとんと見かけていない。





 何を言いたいかといえば、本来浦島は戦いには向かない。



 桃太郎の様な鬼退治の伝説は無い。



 金太郎の様な気は優しく力持ちという代名詞も無い。



 子どもから亀を助けただけのお人好しである。



 運良く竜宮城に招かれ、時の流れの違いに翻弄され、最後は有るべき姿にすべく玉手箱に若さを奪われただけ。









 「ク、ソ……、」



 「この、このぅ!」



 「えぇい、離せ、とっととワシらを解放しろ!」



 「ぅるせえよ、クソ。オイお前ら、乙姫は何処だ?」









 その翻弄されたお人好しが今、鬼を相手に大立ち回りをした挙句、息切れ一つせずに鬼を捕らえて尋問していた。



 浦島の目の前には不自然な格好で立っている鬼が何人か居た。



 「チッ、人間相手なら錘放って仕舞いだってのによ。手間掛けさせやがって。」



 鬼に近付き



空中で何かを弾く。



 ピン



 綺麗な音が響く。どうやら彼は絹糸を蜘蛛の巣のように張り巡らし、鬼達を捕らえていたらしい。



 「乙姫?あぁ、あれか。それならこの先の地下牢に放り込んである筈だ。」



 そう言って鬼の一匹が辛うじて動く顎で示す。



 「んぁ?そうか、チッ、あの女、切り刻んでやる。」



 殺意を剥き出しにした姿は童話の主人公や英雄よりも殺し屋や殺人鬼に近い。



 浦島は鬼達に背を向けて地下牢へ向かおうとした。が、



 「オラァ!死ねや!」



 「ハン、これ位で捕まえたつもりかよ馬鹿が!」



 「よくもやったな!」



 「くたばれ!」



 糸から解放された鬼、乱戦で熊谷さんの体当たりから逃げてきた鬼、その他の鬼、色々な鬼が全方位を囲み、浦島目掛けて金棒を振り下ろす。



 先程も行ったが、浦島に戦闘力は無い。



 金棒を全方位から喰らえば即死どころか遺体が遺体じゃなくなる。



 「挽き肉確定だ!」



 同時に振り下ろされる金棒。死角は無い。













ガン・ガン・ガン・ガン・ガン



 浦島が消えた。



 しかし手応えはあった。



 それと同時に痛みも有った。



 「ぇ?何で?」



 全員が同じ気持ちだっただろう。



 殴ったのは自分の隣の鬼で、挙句自分を殴った鬼は反対隣の鬼だったのだから。



 「何が………」



 「ッ!めんどくせぇ。」



 そうしている間にも鬼が四方八方から殴りかかって来る。全てが必殺。浦島の命など風前の灯火。



 しかし、彼はその度その度、何故か彼らの前から消え失せ、次の瞬間には何処からともなく現れ、相手は倒れていた。









 「ッ!なんだよこれは。」



 悪態をつきつつ浦島は困惑もしていた。



 その原因は彼にとって本来必殺である筈の金棒が、そしてそれを振るう鬼達がとても遅かった事だ。



襲い。鈍い。静止して見える。というより、なんなら静止していた。









 彼にはその理由は見当もつかなかった。



 しかし、これには明確な理由が存在する。



 それは玉手箱だ。



 玉手箱本来の役目は若い姿のまま未来の世界に行った浦島を、本来はその時代においては老人であるべき若い浦島を、あるべき老人の姿に戻す。『人の時間をあるべき状態に戻す装置』だった。



 しかし、今回。知っての通り彼は玉手箱の煙を吸わず、老人にならず、彼はあるべき状態にならなかった。彼はあるべき時間の流れに逆らった。時は流れても彼は流されなかった。



 あるべき時の流れに逆らう。という彼の行為が産み出したもの



 『静止した時の中を動く能力。』



 漫画のラスボスが如き反則級能力を彼は身に着けた。









 「死ねぇ!」



 またも鬼が諦めることなく金棒を振る。



 しかし、蝸牛の様な緩慢な動きの金棒が当たる訳もなく。



 振り下ろされるまでの間に浦島は辺り一帯を釣り糸の蜘蛛の巣で一杯にする。



 再び時が動き出す頃、鬼達は蜘蛛の巣に絡め捕られて為す術を失っていた。



 「乙姫はあっちか……」



 何事も無かったかのように彼は地下牢へと歩を進めた。





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