第33話 ヴェローナ会議

文字数 1,425文字


ナポレオンが亡くなった翌年、1822年10月。

飛び火した民族独立の埋火を消す為、ヴェローナ会議が開かれた。


[ロシア皇帝アレクサンドル1世]


スペインの反逆者どもに、フランスが兵を差し向ける! 素晴らしい!

わがロシアも、是非、お手伝いしたいものだ!

[アレクサンドル側近(ロシア将校)]


……。

(知らん顔)



(傍白)

なぜロシアの兵が、遠くの国の為に、血を流さねばならないのか。

ヨーロッパの官憲になって、遠くの国の民に、憎まれなければならないのか。

[オーストリア皇帝フランツ]


(久しぶりに会った(マリー・ルイーゼ)と話している)


息災で何より。

[オーストリア皇帝の娘マリー・ルイーゼ(フランツの母)]


パルマを頂けてとても幸せです、お父様。



※イタリアで開催されたので、パルマ公主として参加している。

ウィーンにも、もっとちょくちょく帰っておいで。

フランツが待っている。


(オーストリア皇帝フランツとマリー・ルイーゼ(その娘)に気が付く)

しまった! ロシア皇帝に気が付かれた。

わしは、あの男が苦手でな。

苦手だなんて……。

ロシアは、神聖同盟のお仲間でしょ?

ウィーン会議の時も、お世話になったし。

あれは、あの男(アレクサンドル1世)の騎士道ごっこにつきあってやっただけだ。

神聖同盟なんて、名前だけのものだよ。

げげ、こちらをガン見している。

わしはもう、行くぞ。息災でな、マリー・ルイーゼ。

(息せき切って駆け付ける)

マリー・ルイーゼ大公女! お久しぶり!


(きょろきょろ)

おや? 

オーストリア皇帝は?

あ……、う……、あのう……

そうだ! 義母(皇妃)が呼んでいるとかで、たった今、退出致しました。

それは残念!


ところで、ウィーンに行った時、ご子息にお会いしましたぞ。

執務されている皇帝のそばで、ちょろちょろしていて、とても可愛らしかった。

あら、お父様ったら、また、執務室にフランツを入れていたんですね!
きれいで賢くて、好感のもてる少年ではないですか。ナポレオンの息子は!
[イギリス:ウェリントン将軍]


ナポレオンの息子なら、私も、ここへ来る途中、会ってきましたぞ!

あ、ウエリントン将軍!
ウィーンのご子息は、私が予想していたよりずっと背が高く、礼儀正しい紳士でしたな!
まあ!(嬉しい)
時に、マリー・ルイーゼ大公女、いえ、元フランス皇妃。ひとつ、お手合わせ願いませんか?


(カードゲームの卓を指す)

これは面白い!


ナポレオン・ボナパルトの妻と、彼を打ち破った将軍(ウエリントン将軍)の、一騎打ちだ! 

さて、どちらが勝つか!

[その場に居合わせた人々]


まあ、おもしろそうですこと。

[その場に居合わせた人々]


これはぜひ、見物しないと。

皆さんまで……。

それでは、少しだけですよ?

(まんざらでもない)

[フランス大使シャトーブリアン]


(部屋の隅でじっと見ている)


(傍白)

おや? マリー・ルイーゼ様は、随分ふっくらされたようだな。

いや、あれは、妊娠しているのだ!

ナポレオンは、去年死んだよな。すると……?

…………。
あれか。彼女の傍らに、いつも影のように寄り添っている、片目の……。
なるほどね。

そういえば、密偵が言っていた。

ウィーンの幼い息子が頼んでも、彼女は、なかなか来ないと。

(ルイ18世への報告)


ご安心ください。

彼女の心は、ナポレオンと、その息子の元にはないと思われます。

従って、彼女が、ナポレオンの後継者になることはないでしょう。

(傍白)


しかし、ウィーンにいる、ナポレオンの息子は違う……。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

フランツ(フランソワ)


ナポレオンとオーストリア皇女、マリー・ルイーゼの息子。父の没落に伴い、ウィーンのハプスブルク宮廷で育てられる。


無位無官のただの「フランツ君」だったのだが、7歳の時、祖父の皇帝より、「ライヒシュタット公」の称号を授けられる。

ディートリヒシュタイン伯爵


フランツにつけられた、コワモテ家庭教師。家庭教師は他に、フォレスチコリンがいる。

オーストリア皇帝フランツ


フランツの祖父。なお、「フランツ」の名前は、ナポレオンが、この祖父から貰った。

マリー・ルイーゼ


フランツの母。ナポレオンと結婚したご褒美に、ウィーン会議の時、パルマに領土を貰う。

片目の将軍(後パルマ執政官)ナイペルクと、絶賛恋愛中。

ナイペルク


皇帝がマリー・ルイーゼにつけた護衛官。後、パルマ執政官。家庭教師のディートリヒシュタインとは古い友人。

ナポレオン


エルバ島に封じられてから、百日天下を経て、セント・ヘレナ島で亡くなるまでの時代設定です。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色