番外編②-18 – 圧倒
文字数 3,051文字
物質刺激型超能力者は心臓において物質刺激型フィジクスのみが生成される。そのため、全ての超能力者の基本技術となる念動力・"超常現象 "は全てのタイプの超能力者の中で最も効率的、且つ強力な力を発揮する。
しかし、物質刺激型超能力者は身体刺激型フィジクスが生成されないために固有の超能力は対象物の特性をより強力にしたものが基本となる。SHADOWも例外ではなく、条件を課してより超常的な現象を引き起こす。
一方で心臓で身体刺激型フィジクスと物質刺激型フィジクスの両方が生成される超能力者の場合 (物質生成型、精神刺激型、自然科学型、特異複合型超能力者)、身体的基本性能は身体刺激型、"超常現象 "の性能は物質刺激型のそれには劣るものの固有の超能力では両超能力者よりも条件が軽減されたり、効率的であったりする。
藤村洸哉のような物質生成型超能力者は物質刺激型フィジクスがより血管の太い総頚動脈 (総頚動脈は7–8mm、椎骨動脈は3–4mm前後である) を通るために (物質刺激型超能力者ほどでなくとも)、"超常現象 "をより得意とする。
固有の超能力ではそれに身体刺激型フィジクスとの融合で、特定の物質を具現化し、超常現象を引き起こす。
更に藤村はより強力なサイクスを保有し、更に第三覚醒までを終えている。そのため、"八方美人 "は10種類 (二丁拳銃それぞれに装填される弾薬を含めれば11種類) の特殊弾薬を使用する形状に変形する。
「(仕掛けるのが早い……!)」
SHADOWは藤村が仕掛けたトラップに翻弄される。
藤村が現在使っている"八方美人 "はワルサー形状の二丁拳銃。右手の拳銃は金赤 色の装飾、左手の拳銃は紺青 色の装飾をしている。
右手の拳銃から放たれる銃弾は"別れ話 "と呼ばれ、命中した物体同士を反発し合う力を付与し、左手の拳銃から放たれる銃弾・"引き合う2人 "は命中した物体同士を引き合う力を付与する。両銃弾ともに直撃に対するダメージは無い。
この二丁拳銃には更なる特殊能力があり、大気中に浮遊させる設置型の球体を仕掛ける。
右の拳銃から設置される球体は赤みがかった透明な球体でサイクスを纏った状態で触れると弾かれて、インナー・サイクスの状態で触れると飛散する。左の拳銃から設置される球体は青みがかった透明な球体でサイクスを纏った状態で触れると飛散し、インナー・サイクスの状態で触れると弾かれる。
サイクスを纏った状態でそれぞれの現象が起こると、強制的にインナー・サイクスの状態にされ、もう1度フローを仕切り直してサイクスの分配をやり直す必要がある。
「(クソ! ダメージは大して無いのにフローの仕切り直しを強制されるのは厄介……! 仕組み自体は直ぐに分かったけど……!)」
「おいおい、影で攻撃してくることもままならないのか?」
藤村は跳躍しながら笑ってSHADOWを挑発する。
––––"影時雨 "
影の無数の礫 が藤村を襲う。藤村はそれを見て浮遊する球体を引き寄せて防御し、球体は破裂して"影時雨 "を相殺する。
「ハハ。超能力の攻撃の場合は衝突させて相殺させることができるんだよ」
予想外の表情を浮かべるSHADOWに向かって藤村は告げ、影の有効高度よりも高い位置まで逃げる。
「これならどうする?」
藤村は両手に持っている拳銃を左右入れ替えてSHADOWに向けて発砲する。
「!?」
金赤色の拳銃から放たれた銃弾が命中した照明の破片同士が引き寄せられる一方で、紺青色の拳銃から放たれた銃弾は命中した照明の破片同士が反発し合ってSHADOWの周辺を飛び交い、切り傷を付ける。
「(効果が逆になった!?)」
銃弾の種類は拳銃の種類によって見分けるのではなく、どちらの手で持たれていたかによって区別をつける必要がある。
「設置型も同じだぜ。俺がどちらの手で発砲したかを見とかないと分からなくなるから気を付けろよ。設置型に至ってはどちらの手で発砲し、更にどこに設置したかを覚えとかないといけないぞ。球体の色が変化しないからな」
それぞれの拳銃の1マガジンは12発装填。藤村は設置型と発砲を繰り返しながら弾切れのタイミングで遮蔽に隠れてリロード、または近接戦に持ち込んで一方的にSHADOWを攻撃する。
無論、この特殊弾は藤村に対しても有効で、藤村はインナー・サイクスとアウター・サイクスの出し入れを巧みに使いこなしてSHADOWを圧倒する。
「(しまった……!)」
SHADOWに"別れ話 "が直接命中する。
––––ガッ
藤村は固定されている客席を蹴り上げて"別れ話 "を付与。SHADOWに向けて蹴り飛ばし、付与された斥力で客席とSHADOWは吹き飛ばされる。
「ぐっ……!!」
SHADOWが痛みに唸った瞬間、今度は"引き合う2人 "を直接命中される。
「まずい、2発とも直撃した……!」
照明の破片や会場の座席に付与された引力と斥力によって翻弄される。SHADOWは纏うサイクスを強めて防御力を高めようと試みる。
––––メキッ
藤村は右手の拳銃を宙に投げ、その間に右拳をSHADOWの顔面に見舞う。その衝撃はSHADOWの防御を軽く凌駕してダメージを与え、SHADOWはそのまま吹き飛ばされて設置された球体に触れて強制的にインナー・サイクスにされる。
それを藤村は見逃さない。
藤村は右脚でSHADOWを空中へと蹴り上げる。その後、引き合う力を付与した照明の破片や座席を蹴って衝撃を与えてSHADOWに向けて攻撃する。
「(逃げなきゃ……)」
手も足も出せず圧倒されるSHADOWは薄れる意識の中"深淵の入り口 "を使用して別空間へと逃走しようと思考する。
藤村との戦闘開始時において別空間へと繋げた部屋を解除したものの緊急脱出のために1つだけ解除した空間を復活させることが可能となる。
––––"次元開通弾 "
SHADOWが"深淵の入り口 "を発動しようとする前に藤村は"八方美人 "をリボルバー式装飾銃に変形、"次元開通弾 " をSHADOWに直撃させて『DEED』本部ビル11階建ての3階に設置してある次元の穴に強制的に移動させる。
息も絶え絶え、出血しながら床に大の字に横たわるSHADOWに向けて藤村が"八方美人 "の銃口を向けている。
「チェックメイトだ」
SHADOWの"深淵の入り口 "は最上階または最下階の部屋しか別空間に飛ぶことができない。
「ハァ……ハァ……ハハッ」
SHADOWは微かに笑う。
「煙草、どっかにやってんじゃん……」
SHADOWの言葉に対して藤村はバツの悪そうな顔をする。その後、"八方美人 "を右手に持って構えたまま左手で器用に新しい煙草に火を点けて笑いながら答える。
「良いじゃねぇか。結構動き回ったし」
それを聞いてSHADOWは再び笑う。
「殺しなよ」
SHADOWの一言に対して藤村は答える。
「アホか、ンな事するかよ。このまま逮捕だ」
SHADOWは「ふっ」と力なく笑って藤村から視線を外して天井を見上げた。
しかし、物質刺激型超能力者は身体刺激型フィジクスが生成されないために固有の超能力は対象物の特性をより強力にしたものが基本となる。SHADOWも例外ではなく、条件を課してより超常的な現象を引き起こす。
一方で心臓で身体刺激型フィジクスと物質刺激型フィジクスの両方が生成される超能力者の場合 (物質生成型、精神刺激型、自然科学型、特異複合型超能力者)、身体的基本性能は身体刺激型、"
藤村洸哉のような物質生成型超能力者は物質刺激型フィジクスがより血管の太い総頚動脈 (総頚動脈は7–8mm、椎骨動脈は3–4mm前後である) を通るために (物質刺激型超能力者ほどでなくとも)、"
固有の超能力ではそれに身体刺激型フィジクスとの融合で、特定の物質を具現化し、超常現象を引き起こす。
更に藤村はより強力なサイクスを保有し、更に第三覚醒までを終えている。そのため、"
「(仕掛けるのが早い……!)」
SHADOWは藤村が仕掛けたトラップに翻弄される。
藤村が現在使っている"
右手の拳銃から放たれる銃弾は"
この二丁拳銃には更なる特殊能力があり、大気中に浮遊させる設置型の球体を仕掛ける。
右の拳銃から設置される球体は赤みがかった透明な球体でサイクスを纏った状態で触れると弾かれて、インナー・サイクスの状態で触れると飛散する。左の拳銃から設置される球体は青みがかった透明な球体でサイクスを纏った状態で触れると飛散し、インナー・サイクスの状態で触れると弾かれる。
サイクスを纏った状態でそれぞれの現象が起こると、強制的にインナー・サイクスの状態にされ、もう1度フローを仕切り直してサイクスの分配をやり直す必要がある。
「(クソ! ダメージは大して無いのにフローの仕切り直しを強制されるのは厄介……! 仕組み自体は直ぐに分かったけど……!)」
「おいおい、影で攻撃してくることもままならないのか?」
藤村は跳躍しながら笑ってSHADOWを挑発する。
––––"
影の無数の
「ハハ。超能力の攻撃の場合は衝突させて相殺させることができるんだよ」
予想外の表情を浮かべるSHADOWに向かって藤村は告げ、影の有効高度よりも高い位置まで逃げる。
「これならどうする?」
藤村は両手に持っている拳銃を左右入れ替えてSHADOWに向けて発砲する。
「!?」
金赤色の拳銃から放たれた銃弾が命中した照明の破片同士が引き寄せられる一方で、紺青色の拳銃から放たれた銃弾は命中した照明の破片同士が反発し合ってSHADOWの周辺を飛び交い、切り傷を付ける。
「(効果が逆になった!?)」
銃弾の種類は拳銃の種類によって見分けるのではなく、どちらの手で持たれていたかによって区別をつける必要がある。
「設置型も同じだぜ。俺がどちらの手で発砲したかを見とかないと分からなくなるから気を付けろよ。設置型に至ってはどちらの手で発砲し、更にどこに設置したかを覚えとかないといけないぞ。球体の色が変化しないからな」
それぞれの拳銃の1マガジンは12発装填。藤村は設置型と発砲を繰り返しながら弾切れのタイミングで遮蔽に隠れてリロード、または近接戦に持ち込んで一方的にSHADOWを攻撃する。
無論、この特殊弾は藤村に対しても有効で、藤村はインナー・サイクスとアウター・サイクスの出し入れを巧みに使いこなしてSHADOWを圧倒する。
「(しまった……!)」
SHADOWに"
––––ガッ
藤村は固定されている客席を蹴り上げて"
「ぐっ……!!」
SHADOWが痛みに唸った瞬間、今度は"
「まずい、2発とも直撃した……!」
照明の破片や会場の座席に付与された引力と斥力によって翻弄される。SHADOWは纏うサイクスを強めて防御力を高めようと試みる。
––––メキッ
藤村は右手の拳銃を宙に投げ、その間に右拳をSHADOWの顔面に見舞う。その衝撃はSHADOWの防御を軽く凌駕してダメージを与え、SHADOWはそのまま吹き飛ばされて設置された球体に触れて強制的にインナー・サイクスにされる。
それを藤村は見逃さない。
藤村は右脚でSHADOWを空中へと蹴り上げる。その後、引き合う力を付与した照明の破片や座席を蹴って衝撃を与えてSHADOWに向けて攻撃する。
「(逃げなきゃ……)」
手も足も出せず圧倒されるSHADOWは薄れる意識の中"
藤村との戦闘開始時において別空間へと繋げた部屋を解除したものの緊急脱出のために1つだけ解除した空間を復活させることが可能となる。
––––"
SHADOWが"
息も絶え絶え、出血しながら床に大の字に横たわるSHADOWに向けて藤村が"
「チェックメイトだ」
SHADOWの"
「ハァ……ハァ……ハハッ」
SHADOWは微かに笑う。
「煙草、どっかにやってんじゃん……」
SHADOWの言葉に対して藤村はバツの悪そうな顔をする。その後、"
「良いじゃねぇか。結構動き回ったし」
それを聞いてSHADOWは再び笑う。
「殺しなよ」
SHADOWの一言に対して藤村は答える。
「アホか、ンな事するかよ。このまま逮捕だ」
SHADOWは「ふっ」と力なく笑って藤村から視線を外して天井を見上げた。