行きたい場所と見たい景色
文字数 903文字
挑発的な口調に部員たちはざわつく、誰もがみな思うはずだ。
本当にこの人にその実力があるのかと。
「香川先生」
部長がまっすぐに教卓を見据えて話す
「私たちはここ数年にわたって、吹奏楽コンクール全国大会出場及び、大会での金賞をめざしています。…恥ずかしながら未だ果たされたことはありません、ですが先生は私たちをそこに導いてくれるということですか?」
「もちろんだ、ここにいる全員がそれを望むなら私はそこまで君たちを連れていく。約束しよう。」
そう、断言した。
「その根拠は何ですか?何をもって先生は断言するんですか?」
「根拠はない、絶対に…とも言えるわけでもない。しかし信じてほしい、全国大会に行きたいならその場所まで連れて行く。でも、その先の景色、全国大会金賞を目指すなら俺の力だけでは不可能だ。だから、」
全員がごくりと息をのむ
「ここで君たちに問いたい。覚悟を決めて私についていくか否かを。今すぐにとは言わない、明後日まで待つ。それまでに意見を聞きたい、今日のところは以上だ。」
そう言って先生は音楽室を後にした。
もう既に教室は混乱を極めていた、新入生の歓迎ムードは一転、まだ部活の中身を全然理解できていない一年も含めて今後の方針会議へと進んでいく。
先生に入れ替わり部長が教卓へと立ち、話し始める。
「香川先生が言っていたことに関して色々感じるところがある人は居るかもしれません、ですが私は一人の部員としてついていきたいと思っています。ですから、強引ではありますがここで決を取りたいと思っています。みんな、考えが決まったら目を伏せて。」
暫くしてようやく全員が目を伏せた
「それでは。香川先生を信じて全国大会金賞を目指して部活をする人。」
ふわっと空気が頬に当たる、かなりの人が手をあげているのだろう。
かく言う俺もあげている。
「…⁉みんな、顔を上げて。結論はきまったよ。」
部長はその場を見渡してこう言った
「今年、うちの吹奏楽部は香川晃平先生を信じてついていきます。目標は全国大会金賞、今年こそ金取るよ!!」
そのまま部長は報告のため、職員室へと向かった。