第37話 side.湊
文字数 696文字
夢をみた。
小学生のころの記憶だ。
亜希が、お父さんが亡くなったショックで、髪が真っ白になったときのこと。
そんな亜希のことを、クラスの男子達はからかった。
そして、亜希の髪の毛を引っ張ったり切ったりした。
(いじめっこ)見ろよ。こいつの髪、白だぞ
ばばあじゃねーの?切ってみようぜ
そして奴らは、亜希の髪の毛をはさみで切りやがった。
きれいな髪だったのに。
俺が大好きな、いい香りのする髪だったのに。
だから許せなくて、その場に突っ込んだ。
ちょっと頭をつかんで脅してやれば、
そいつらより背が高かった俺にびびって
奴らも逃げていった。
首筋までになった亜希の白い髪の毛を見ながら、思った。
こいつのことは、俺が一生守るって。
真っ白い意識の中をさまよっていたら、どこからか、声がした。
よく聞こえなくて、耳をすます。
亜希の声だ。何か、言っている。
もう一度、彼女は言ってくれた。
………………は?
一瞬、言葉の意味がよくわからなくて、
さまよう意識の中、頭をフル回転させる。
亜希が。俺のことを。
――好き。
亜希が俺のことを好き。
一言でまとめてしまったら、
胸の奥と脳みそが熱湯みたいに熱く
なった。
でもすぐ、亜希がまた言う。
それ聞いて。
俺、思わず吹き出した。
心から笑ったその衝撃なのか、何なのか。
気づいたら、幽体離脱していた俺の精神が、俺の体にちゃんと戻っていて。
目の前には、泣いてる亜希がいて。
まずは、なんて言おう。俺は考えて、答えを出した。