第4話-③
文字数 996文字
寝間を覗くと、富子、いや真女子の姿があった。
私が手招きすると、法師は毒の入った小瓶をつかみ、ひとり入ってゆく。
庄司殿、奥方、みな後ずさりし、柱の陰に隠れた。
と、法師が襖を開いたとき・・・・・・
大蛇がぬっと頭を向けてきた。
その大きさたるや、人を一口で呑めるほどだった。
ついに真女子が、本性を現したのだ。
法師はほうほうのていで引き返してきた。
開いた襖の向こうで、大蛇がとぐろを巻いていた。
体は雪のように白く、目は鏡のように光を宿し、
角は枯れ木のように尖っていた。
血の色をした舌先が伸びて、にょろにょろと動いていた。
法師はうずくまり、何やら呪文のようなものを唱えていたが、
大蛇の舌先が伸びて、その禿げ頭にぺろりとふれたとき、
おののき卒倒してしまった。
みなで助け起こそうとしたが、毒気にやられたと見え、
その顔も肌も赤黒く変色し、すでに絶命していた。
開かれたままの両眼が、何かを訴えかけていた。
私たちはもう、生きた心地がしなかった。
庄司殿、かくも霊験あらたかな法師ですら、この有り様です。
この大蛇は私がどこへ往こうと必ずや追ってくることでしょう。
こうなっては、この身ひとつを捨て、
万事それで片づけるよりほかに手がないように思うのです。
寝間に踏み入れば、すでに大蛇の姿はなく、
真女子とまろやが並んで座し、
いつもとは違う眼差しを向けてきた。
侍女のまろやは下がった。