急転
文字数 670文字
数日後、摂政府にカザルスがやって来た。
「よい知らせと、悪い知らせがございます」
どう応じるべきか、サキは迷う。
カザルスは思案顔でこちらを窺っているようだ。笑いか、怒りをこらえているような口の形をしている。
「良い知らせから教えてもらいますか」
「共和国がわが国に宣戦を布告しました」
「……あの、良い知らせから聞きたいと」
「皮肉抜きに良い展開なのですよ。革命が成ったお隣の国を、どう扱うものか皆、頭を抱えていたのです。承認すればわが国にも革命が飛び火するかも知れず、認めなければいずれは戦端が開かれる。むしろ、早いうちにあちらから喧嘩を吹っかけてもらったほうが……と考えていたんです」
そういうものなのか。まあ、本職が言うのだから嘘ではないのだろう。
「では、悪い話の方は」
「それも同じく、共和国がらみなのですが」
カザルスは大げさに眉を寄せた。
「申し上げました通り、今の段階で共和国から宣戦布告してもらうこと自体は歓迎すべき事態でした。ただ、その後の展開が嬉しくないと申しますか。我らの予想外と言いますか……正直、笑ってしまうのですがね」
サキは予感する。笑いごとではない話らしい。
「すでに我が国の領土へ、敵軍の侵入を許してしまいました。革命軍の精鋭、最低でも一万五千名。二日以内に、この王都へ到達する計算です。」
本当に、笑いごとではなかった。
しかしその先の情報は、もっととんでもなかった。
「ちなみにわが軍の主力は国境に集中しています。引き返しても間に合わない。この王都には、充分な兵力がありません」
「よい知らせと、悪い知らせがございます」
どう応じるべきか、サキは迷う。
カザルスは思案顔でこちらを窺っているようだ。笑いか、怒りをこらえているような口の形をしている。
「良い知らせから教えてもらいますか」
「共和国がわが国に宣戦を布告しました」
「……あの、良い知らせから聞きたいと」
「皮肉抜きに良い展開なのですよ。革命が成ったお隣の国を、どう扱うものか皆、頭を抱えていたのです。承認すればわが国にも革命が飛び火するかも知れず、認めなければいずれは戦端が開かれる。むしろ、早いうちにあちらから喧嘩を吹っかけてもらったほうが……と考えていたんです」
そういうものなのか。まあ、本職が言うのだから嘘ではないのだろう。
「では、悪い話の方は」
「それも同じく、共和国がらみなのですが」
カザルスは大げさに眉を寄せた。
「申し上げました通り、今の段階で共和国から宣戦布告してもらうこと自体は歓迎すべき事態でした。ただ、その後の展開が嬉しくないと申しますか。我らの予想外と言いますか……正直、笑ってしまうのですがね」
サキは予感する。笑いごとではない話らしい。
「すでに我が国の領土へ、敵軍の侵入を許してしまいました。革命軍の精鋭、最低でも一万五千名。二日以内に、この王都へ到達する計算です。」
本当に、笑いごとではなかった。
しかしその先の情報は、もっととんでもなかった。
「ちなみにわが軍の主力は国境に集中しています。引き返しても間に合わない。この王都には、充分な兵力がありません」