第7話 俺は、怒った!

エピソード文字数 614文字



 五郎は激怒した。
 必ず、あのしぶとい長屋の連中を追い出さねばならない。自分は期待されているのだ。そう思って、とことんまで長屋を壊してやった。

 なのに今。
 こうして成果を確認に来たら、どうだろう! 長屋は綺麗に元通りになっているではないか!
 納得できない。
 なにか、手品でも使ったのか?

 毛唐を味方につけて、やつらの魔術でも習ったのか?
 五郎には、親はいない。目の前で、侍に殺されたのだ。以来、ひとりで生きてきた。順風満帆の悪道を突っ走ってきたのである。

 五郎は、血走った目で一同を見まわした。一同は、ニヤニヤ笑っている。トメだけは、
「三太ったら、ご飯も食べずにダメじゃないの。少しは食べていって」
 などと言いながら、厨からお椀を持ってこようとしていた。
 そのお椀を叩き壊し、五郎は腕まくりし、見栄を切ってみせた。

「やいやいやいやい! どんな妖術を使ったか知らねーが、この五郎さまをバカにすると痛ぇ目に遭うぜ!」
 ふうわり。
 目の前を、何かが横切った。
 見栄を切っていた五郎は、目をしばたいた。なーお。鳴き声が響く。五郎は見栄を切るのをやめ、背伸びしてそのなにかに注目した。

 どうみても猫だった。シッポが二つある。そして、あろうことか、空を飛んでいる。
 なーお。
 猫が、敵意に燃えた声を放った。金色に輝く大きな瞳がにらみつけている。
 ピギーッ!
 五郎の総毛が逆立った。
 
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