第4話 第一章 『墜落者』③ 天空より・・
文字数 833文字
その時、明るい陽の光が再び雲の中に隠れ、辺りが俄かに曇った。
雪上の姿もくすんで立体感を失う。
晃子はハッとしたように顔を上げた。突然、妙な恐怖感を覚え、そのまま後ず去るような形になったその時、気を失い目を閉じていた男の横顔が微かに動いた。
・・静かに目を開き、そのまましばらくボンヤリとした様子で辺りを見つめている。
それから、その視線を遥か上空に向けた。
天空・・落ちて来たところ・・。
その視線がゆっくりと、罠に捕らえられ、動けずにいる晃子の方に向けられる。
と、その心を捉える磁力的な眼差しにも関わらず、或いは多分それゆえに、晃子は傷ついた男をそこに残して急いで立ち去ろうとした。
が、その時、踵を返し背を向けたその耳に、やや掠れたような静かな声が届いた。
「・・テュヌ・・・ピアン・・トゥ・・」
コテッジのドアは、簡単に開いた。
最初ノブに手を掛けた時はもちろん鍵が掛かっていて回すことも出来なかった。それでどうしようか・・と云うように雪の上に横たわる男の姿に目をやった。
それから再びノブを回すと、今度は難なく開いた。
雪の中の姿に振り返る。
晃子の顔に、微苦笑といった表情が浮かんだ。鍵の掛かっていたドアが簡単に開いたからって・・何も驚くことなんてないじゃない。
(・・だって、あの雪の上に倒れているのは誰だっていうの・・)
玄関の二重扉を開け放ったままホールに入ると、その両側の壁に向き合った形で両開きの扉がある。その一方を開けると、そこは広い居間のようだ。が、電気も点かず雨戸で閉め切られた室内の様子は暗くてよく分からない。
手探りで一番近くの窓を開けようとしたが、錠を解いても開かない。
(・・後で開くわね・・)
それも、いとも簡単に・・。
使われていないにしては、部屋全体にカビ臭さは感じられない。真ん中あたりに埃除けらしいカバーが掛かった大きなソファが置いてあるのが分かった。
晃子はそのカバーをサッと払い掛け直すと、再び外に出た。
雪上の姿もくすんで立体感を失う。
晃子はハッとしたように顔を上げた。突然、妙な恐怖感を覚え、そのまま後ず去るような形になったその時、気を失い目を閉じていた男の横顔が微かに動いた。
・・静かに目を開き、そのまましばらくボンヤリとした様子で辺りを見つめている。
それから、その視線を遥か上空に向けた。
天空・・落ちて来たところ・・。
その視線がゆっくりと、罠に捕らえられ、動けずにいる晃子の方に向けられる。
と、その心を捉える磁力的な眼差しにも関わらず、或いは多分それゆえに、晃子は傷ついた男をそこに残して急いで立ち去ろうとした。
が、その時、踵を返し背を向けたその耳に、やや掠れたような静かな声が届いた。
「・・テュヌ・・・ピアン・・トゥ・・」
コテッジのドアは、簡単に開いた。
最初ノブに手を掛けた時はもちろん鍵が掛かっていて回すことも出来なかった。それでどうしようか・・と云うように雪の上に横たわる男の姿に目をやった。
それから再びノブを回すと、今度は難なく開いた。
雪の中の姿に振り返る。
晃子の顔に、微苦笑といった表情が浮かんだ。鍵の掛かっていたドアが簡単に開いたからって・・何も驚くことなんてないじゃない。
(・・だって、あの雪の上に倒れているのは誰だっていうの・・)
玄関の二重扉を開け放ったままホールに入ると、その両側の壁に向き合った形で両開きの扉がある。その一方を開けると、そこは広い居間のようだ。が、電気も点かず雨戸で閉め切られた室内の様子は暗くてよく分からない。
手探りで一番近くの窓を開けようとしたが、錠を解いても開かない。
(・・後で開くわね・・)
それも、いとも簡単に・・。
使われていないにしては、部屋全体にカビ臭さは感じられない。真ん中あたりに埃除けらしいカバーが掛かった大きなソファが置いてあるのが分かった。
晃子はそのカバーをサッと払い掛け直すと、再び外に出た。