風車が怖い

文字数 1,091文字

 高所、閉所、先端、集合体…。世の中には様々な恐怖症があるが、私は風車が怖い。
 「かざぐるま」ではなく「ふうしゃ」、つまり風力発電機である。白くてでかくてベンツみたいな羽がぐるぐる回るアレである。アレがどうしても怖い。目の前に出現すると汗だくになる程度には怖い。
 どうして怖いのか考えてみた。まずでかい。でかすぎる。人間が作ったとは思えないほどにでかい。そしてデザインがのっぺりしすぎている。遠目に見ると継ぎ目がないというか、部品を組み合わせて作った感じがしないのだ。それが異物感というか、宇宙から突然飛来してきたような不気味さがある。しかもそれが山の中で突然出現したりする。そもそもが異物感満載なデザインの物体が、大自然の中に突如出現する怖さ。しかも奴らは、単体でぐるぐる回っているだけならまだしも、風の強い場所に群生している。ひとつ発見すると後ろからわらわら湧いて出るのだ。子供の頃、蜘蛛の卵を棒で突いたら蜘蛛の子が大量に出てきてトラウマになったことがあるが、それがあのサイズ感で再現されるのである。恐怖のために仕込まれたとしか思えない。
 同じ風車でも、「オランダ」と画像検索した時に出るようなやつは、パーツ感がしっかりあるので大丈夫である。確かにでかいけど、頑張れば人間が作れるような感じがする。しかし、同じ風車でも、白くてのっぺりしたアイツは人間が作った感じがしない。もしかすると近くで見れば継ぎ目が分かったりするのかもしれないが、そもそも近寄ると失神するので確認できない。
 巨大なものに対して恐怖心を抱く「巨像恐怖症」というのがあるらしいが、私は恐らく違う。何ならダムとか見ると結構テンション上がっちゃうタイプである。ダムも割とのっぺりしていることを考えると、風車がピンポイントで駄目なのだ。
 風車恐怖症を自覚したのは、車で秋田に行った時に日本海に面して大量の風車が群生している光景に遭遇したことがきっかけで、本来はそのまま南下して新潟まで行くつもりだったのを断念し、高速道路で岩手に逃げた。結構飛ばした。130km/hくらいは出していたと思う。警察より風車の方が怖かったので大目に見て欲しい。
 どうしてあんなにでかいのかを調べたことがあるが、風は高い位置ほど強く吹くため、それを拾うためにあんなにでかいのだという。とは言っても、こんなに怖がっている人がいるのだから、もう少しかわいいサイズにしてくれてもよさそうなものである。
 と思っていたら、最近小さな風車を見かけた時もちょっと怖かったので、大きさの問題ではないのかもしれない。そのうち扇風機も使えなくなるかもしれない。
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