第十一話 ハリボテ武器屋

エピソード文字数 1,580文字

武器屋『ドリームアームズ』店内にて。
パーティー4人は顔を突き合わせ、今後の事業計画を話し合っていた。
まさか私たちが、武器屋を経営することになるとはね。
みなさんとまた新しい舞台で、新しい冒険に乗り出すことになるなんて、なんだか夢を見ているみたいです。ちょっと前まで後ろ向きばかりな自分だったのに……魔王さんを打倒するために立ち上がったころの昔の自分に、ちょっとだけ戻れたような気がします。
どうせやるからには本格的にやりたいところだ。目指すはナンバーワン武器屋ってところか?
それ違うから。
言ったでしょ、目指すところは世界一の大富豪、世界一の権力者、世界でただ一人の神のごとき存在だって。私なら、そのくらい当然よね。魔王なんか、指先一つで異次元にぶっ飛ばしてやるわ。
知らないというのは幸せなことだ。経済界や金融界はそんな生やさしいものじゃないぞ。切った張ったの単純な戦闘行動のほうが、何も考えなくていいだけ遥かに気楽なものかもしれん。実力ある冒険者のライバルが絶対的に少なかったしな。だがこれからは、すべての市民がライバルだ。
まるで自分が詳しいみたいな口ぶりよね。戦士のくせに生意気よ。
実際、戦闘では超一流のエキスパートだったはずの勇者が、コロッとハメられたわけじゃないか。経済活動はありとあらゆる人間の思惑が複雑に絡まり、ある意味じゃ毎日が陰謀の真っ直中にいるみたいなものだ。相応の覚悟はしといたほうがいい。
そんな世界だからこそ、魔王さんがここまでのし上がっているのかもしれませんね……。
まぁこっちは戦闘の玄人でも、商売は完全な素人。からっきしだ。
ぶっちゃけ、何から手を付けていいかわからん。
ひとまず最初は商品の仕入から始めなくちゃならんだろう。店の商品の大半は担保に持っていかれたり、取引先への決済ができず引き上げられたりしたわけだろ。店に商品を並べないと開店もできやしない。
パーティーの資金100万Gのうちの大半、98万Gは武器屋売買に投入しちまったんだろ? 肝心の、運営資金がすっからかんだ。立派な構えの店が残ってるだけで、売るための商品がない。ハリボテとは、まさにこのことだ。
とすれば……え?
そもそも、どうすんのよこの状況。商品もないし仕入代金もないって、いきなり詰んでいるような……。
アタシらの装備を売っぱらうか。中古でも一級品ばかりだろ。まずはそれで軍資金を作って、工房から汎用品を仕入れていくとか。
すさまじい自転車操業ね。でも、そうやってコツコツやるしかないのか。
いいや、お前らは肝心なことを忘れてる。
この武器屋『ドリームアームズ』は、魔境銀行をはじめとして、取引先各所に膨大な借金を背負っているということだ。とくに、魔境銀行に対する利払いが重すぎる。あまりちまちま時間を掛けてやっていれば、いつまでたっても金利の支払いにすら稼ぎが追いつかない。仕舞いには、俺ら全員が魔王の奴隷みたいになりかねないぞ。
じゃあどうすんだよ。偉そうに指摘した以上、代替案はあるんだろうな?
俺にだって答えはないよ……。ただ現実を指摘しただけで。
結局、詰んでるじゃない。私の"世界一計画"はどうしてくれるの?
むう……。
…………。
アンタ、黙ってないで何とか言いなさいよ。男でしょ。
だから何を言えと。それに男だからって何だというんだ。このなかじゃ俺が圧倒的に一番弱いんだぞ。
自慢するみたいに言うなっつうの。
……わかりました、私に考えがあります。
武器屋『ドリームアームズ』の経営者として魔境銀行に出向き、魔王さんに交渉を持ちかけてみるんです。
魔王に……交渉……? どんな?
たぶん魔王さんは根っからのビジネスマンだと思うんです。きっと何事も、お金優先、利益優先でやってきたからこそ、今の地位があるに違いありません。それなら、利益で魔王さんを動かせると思うんですね。
私、やってみます。
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登場人物紹介

勇者

剣技・魔力ともに秀でた有数の戦闘技術の持ち主。幼いころからその力は有名で、王国政府から懇願されて魔王討伐の旅に出た。
心優しく、単純な性格。誰に対しても丁寧で、魔王にすら謙虚な姿勢で臨む。

魔法使い

まだ年若いにもかかわらず、王国魔法協会で最高の魔力の持ち主。勇者を護衛するメンバーとして王国魔法協会から派遣され、最も早くからパーティーに参加した。ギャンブル好きで、大都市にくるとカジノに入り浸る。

僧侶

教皇庁の特殊工作員。教皇庁の思惑から勇者パーティーに派遣され、魔王軍攻略に参加している。
ゾンビ30体を同時召還し使役することができるほどの驚くべき魔法力を秘め、その実力は魔法使いを上回る。タイマン勝負でも、愛用の聖鉄製大型ジャッジガベルを振り回し、戦士を圧倒する実力をみせる。表向きは清楚な女性に見えるが、パーティー内での戦闘力は、実のところ僧侶が最も高い。

戦士

ツワモノ揃いのパーティーメンバーのなかで、唯一の庶民的能力。
苦学生で、生活費を稼ぐために、冒険者ギルドに所属して時々バイト活動をしていた。あるときダンジョンに挑む勇者パーティーにポーター(鞄持ち)として雇われる。最後に加わったメンバー。
正式には今でも冒険者バイトだが、数字や法律に強く、パーティーの知能を担っている。すでに古株になってしまっており、最後まで同行しそうな雰囲気である。

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