第2話 旅立ち…さらば故郷よ…
文字数 2,827文字
太陽の下、落し穴から身体半分を覗かせたソイツは、当真の方に向かって大きく叫んでいた。
当真は混乱してしまい、盛大にキョドっていた。
突然放たれたオークの咆哮が当真の耳朶を打つ。
それを聞いた彼の全身が、ガタガタと震え出した。
そうやって、震える身体を無理矢理に押さえ付けようとしていた。
恐怖により、当真はオークから目を離せないままだ。
しかしその時、当真は偶然にもある事に気が付いた。
と喚き立てているだけで、これ以上落とし穴から出てくる様子はない。
オークの目や鼻から、ドロドロした液体がとめどなく流れ続けている。
オークが苦しんでいる様子を、じっと観察していた当真。
彼は竹槍を拾い上げると、そろりとヤツに近付く。
そして、眼前にうずくまるオークを竹槍で滅多打ちにする。
バシバシッ!
しかしオークのヤツは、落とされまいと抵抗した。
オークは、落とし穴のへりの部分に両手でしがみついて離れない。
バシバシバシッ!
それは、とても長い戦いになった。
必死になって落ちまいとするオーク。それを手に持った竹槍で、ポカリと叩くだけの作業だったのだが…これは、中学1年生の当真にとっては重労働だった。
やがて当真の息が上がり、両腕が鉛のように重くなった頃。
当真は、恐る恐る落とし穴に近付いてその中を覗き込んだ。
落とし穴の中には、凄惨な光景が出来上がっていた。一体のオークは、頭を潰されて壁に寄り掛かっている。ドクドク…とその中身を溢しながら、壁に張り付いていた。
もう一体のオークは、頭を踏み潰されて倒れている。当真が落とし穴の底に仕込んだ岩と岩の間に、頭部が一体化するように挟まっていた。
当真の小便によって、オーク達は目と鼻が効かなくなった。狭い落とし穴の中で、3体のオークが恐慌状態となり暴れ回った結果、同士討ちになったのだろう。
オーク達の肉体の損傷は尋常じゃなかった。
まず当真は、竹槍でやっつけたオークの方を見てみる。
偶然に偶然が重なった結果。当真は、この怪物達を倒すことが出来た、という事になる。
当真は落とし穴にいるオーク達と、自分の身体とを見比べる。分厚い肉に覆われたオーク。そのいかにもパワーの有りそうな肉体は、容易に破壊力の高さを想像させた。
一方の当真はガリガリの骨と皮。ちょっと膨らんでいて、肉が摘めるのはお腹くらい。だから、パワーなんて有りはしない。
まともに戦っていたら、あっという間にミンチにされていただろう。人間が素手で、熊やライオンに勝てないのと同じ理屈だ。
本能で分かる…コレには勝てない。なのに無謀にも、竹槍ごときでオークに打ちかかった。そんな自分を反省するのとセットで、当真が再度ビビり始めたその時…
ブブブッブゥン…。
落とし穴から、妙な音が聞こえてくる。当真はビビりながらも、竹槍を構えて落とし穴を覗き込んだ。
ブブブッブゥン…。
穴の中で、3体のオーク達が小刻みにブルブルと震えていた。そして、その肉体が段々と霞のように消え出してゆく。
当真が大きく目を見開いて事態を見守る中…スウゥゥーとオーク達の肉体が完全に消失する…そして、
パカパッパッパッーパッパパーン!
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私立水上学園中等部1年生
生年月日 平成18年1月23日生れ
年齢12才
身長146センチメートル
体重36キログラム
胸囲 55センチメートル
胴囲 50センチメートル
腰囲 55センチメートル
備考
1年7組所属
ファースト討伐者 Tips!