第5話 いる世界と、いた世界。

文字数 524文字

「佐原メダカ。今から簡単なことを言うからな。お前がいるこの世界はお前がいた世界じゃないんだ。でも、ほとんどこの世界はお前がいた世界と同じだ」

「はい?」

 首をかしげるメダカ。

「やっぱ、覚えてないよなぁ」

 涙子は髪の毛をかく。イライラした時の涙子の癖だ。

「お姉ちゃん? 世界? ……うっ、頭が痛くなってきた」

 メダカはその場にしゃがみ込む。

「病。この世界で〈ディスオーダー〉と呼ばれているものだ。空間や心を扱う異能、〈ディペンデンシー〉が、知らずに自然発動してるんだよ、佐原メダカ」

「な、なにを言ってるんです、涙子さん?」

「果たして。小学四年生のときに作文に書いた、お前の『死んだお姉ちゃん』は存在したか否か。空間が歪んだのはいつの時点だかを考えてみるんだ」

 朽葉コノコは、

「まあまあ、涙子ちゃん。せかさなくていいんじゃないのかな。メダカちゃんの心に負担をかけるのはやめるのだ」

 とストップをかける。

それから、

「メダカちゃん。〈ディスオーダー〉の〈潜在者〉さんは、能力に自覚的なひとの話を聞くと頭が痛くなるだけなのだ。さ、仕事の続きでもしよーよ!」

 と、メダカに仕事の続きをするよう、促した。
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登場人物紹介

佐原メダカ(さはらめだか)

 朽葉珈琲店で働く元気いっぱいの女の子。

朽葉コノコ(くちはこのこ)

 朽葉珈琲店の一人娘。飄々とした性格。

空美野涙子(そらみのるいこ)

 私立空美野学園の生徒会副会長。ちょっと粗暴な性格。

金糸雀ラズリ(かなりあらずり)

 学園の風紀委員。コノコのことが好き。コノコを「お姉さま」と呼ぶ。

近江キアラ(おうみきあら)

 涙子と付き合っているというのだが?

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