第8話 夢の夢
文字数 1,307文字
一人でうんうん思い詰めていると、カナちゃんは言った。
「私はね、デザイン科でしょ。だからやっぱりデザインをやりたいんだけど……」
「……けど?」
口ごもったカナちゃんの言葉が出やすいように聞き返してみた。
「私のしたいのは、洋服のデザインじゃないんだよね……デザインっていっても、いろいろあるでしょ?」
「洋服以外で? 例えば広告とか品物とか、そういう感じの?」
「うん。それだけじゃないんだけど、きっとまだ、たくさん道はあると思うんだ」
廊下の窓に寄りかり、三人で外を眺めた。広い敷地に建物は三つ。中庭があって、校舎の後ろには、大きな山が悠々とそびえている。
「ここでできないことがたくさんあったから、私は卒業後の進路に専門学校を選ぶつもりなんだ」
「オーちゃんも? 私ももっと専門的なことが学べるような学校を探してるんだよね。私の場合は、何のデザインをしたいか、ってところも考えないといけないから難しいんだけどさ」
二人がこんなに真剣に、将来について、夢について考えているとは思わなかった。
私は、どうなんだろう……。一応、美術科に席を置いてはいるけれど、成績は残せていない。ただ自分が楽しむだけだった気がする。
後のことなどなにも考えないで、ぼんやりと出された課題をこなしていた。
(私のやりたいことってなんだろう……)
二人との温度差を感じて焦った。
私は学校を卒業したら、そこそこの募集がある企業に入社を希望して、早く学校という枠の中から抜けだしたいと思っていた。
学校以外なら、変な付き合いに悩まされることもなくなる気がして――。
やりたいことなんて、そんなにすぐには見つからなくて、社会に出て初めて見つかるかもしれない。
それでいいんじゃないのかな?
そんな風に感じていた。
なにもない空っぽな自分が突然目の前に現れて、自分をこの先どこに向かわせればいいのか悩んだ。
「二人とも凄い。やりたいことがもう決まっていて、あとはそこへ向けて頑張っていくだけだもんね」
「なに言ってるの。コイちゃんだって、きっとこれだ! って思う夢が見つかるよ」
「うんうん、私の従兄なんて、日本画の勉強をしてたのに、突然やめたと思ったら、アニメーターになっちゃたし」
「アニメーター!?」
私とカナちゃんは、そのギャップに思わず吹きだしてしまった。
「ね? 全然違うじゃない、ってさ、伯父さんと伯母さんったら、大激怒してたもん~」
オーちゃんがヘラヘラと笑う。
「もしも就職しちゃっても、他になにかが見つかったら、それからでもその勉強が始められるかな……」
「私たちまだ若いもん。そのときにはやり直す時間もあるとおもうよ」
二人の強い意志を目の当たりにして、なにもない自分を恥ずかしくも感じたけれど探すのは今からでも遅くないといって励ましてもくれる。
(この二人と、仲良くできていて良かったかも……ごまかしたりしないで、ちゃんと自分の考えを聞かせてくれるし)
向き合って自分の意見を言えるなんて、私には珍しい。でもこの二人といると、こうやって会話がどんどん続いて楽しい。
それになにより……私がほしくないものを、彼女たちもほしがらないからだ、と思った。
「私はね、デザイン科でしょ。だからやっぱりデザインをやりたいんだけど……」
「……けど?」
口ごもったカナちゃんの言葉が出やすいように聞き返してみた。
「私のしたいのは、洋服のデザインじゃないんだよね……デザインっていっても、いろいろあるでしょ?」
「洋服以外で? 例えば広告とか品物とか、そういう感じの?」
「うん。それだけじゃないんだけど、きっとまだ、たくさん道はあると思うんだ」
廊下の窓に寄りかり、三人で外を眺めた。広い敷地に建物は三つ。中庭があって、校舎の後ろには、大きな山が悠々とそびえている。
「ここでできないことがたくさんあったから、私は卒業後の進路に専門学校を選ぶつもりなんだ」
「オーちゃんも? 私ももっと専門的なことが学べるような学校を探してるんだよね。私の場合は、何のデザインをしたいか、ってところも考えないといけないから難しいんだけどさ」
二人がこんなに真剣に、将来について、夢について考えているとは思わなかった。
私は、どうなんだろう……。一応、美術科に席を置いてはいるけれど、成績は残せていない。ただ自分が楽しむだけだった気がする。
後のことなどなにも考えないで、ぼんやりと出された課題をこなしていた。
(私のやりたいことってなんだろう……)
二人との温度差を感じて焦った。
私は学校を卒業したら、そこそこの募集がある企業に入社を希望して、早く学校という枠の中から抜けだしたいと思っていた。
学校以外なら、変な付き合いに悩まされることもなくなる気がして――。
やりたいことなんて、そんなにすぐには見つからなくて、社会に出て初めて見つかるかもしれない。
それでいいんじゃないのかな?
そんな風に感じていた。
なにもない空っぽな自分が突然目の前に現れて、自分をこの先どこに向かわせればいいのか悩んだ。
「二人とも凄い。やりたいことがもう決まっていて、あとはそこへ向けて頑張っていくだけだもんね」
「なに言ってるの。コイちゃんだって、きっとこれだ! って思う夢が見つかるよ」
「うんうん、私の従兄なんて、日本画の勉強をしてたのに、突然やめたと思ったら、アニメーターになっちゃたし」
「アニメーター!?」
私とカナちゃんは、そのギャップに思わず吹きだしてしまった。
「ね? 全然違うじゃない、ってさ、伯父さんと伯母さんったら、大激怒してたもん~」
オーちゃんがヘラヘラと笑う。
「もしも就職しちゃっても、他になにかが見つかったら、それからでもその勉強が始められるかな……」
「私たちまだ若いもん。そのときにはやり直す時間もあるとおもうよ」
二人の強い意志を目の当たりにして、なにもない自分を恥ずかしくも感じたけれど探すのは今からでも遅くないといって励ましてもくれる。
(この二人と、仲良くできていて良かったかも……ごまかしたりしないで、ちゃんと自分の考えを聞かせてくれるし)
向き合って自分の意見を言えるなんて、私には珍しい。でもこの二人といると、こうやって会話がどんどん続いて楽しい。
それになにより……私がほしくないものを、彼女たちもほしがらないからだ、と思った。