第68話  黒澤 凛  5

文字数 2,100文字

お、おい! お、お、か、華凛ちゃん。なのか?
え? か、かりん?
見られた。

家族じゃない人に……入れ替わるのを見られてしまった。



 妹さんと坂田さんの驚きの顔はずっと消えることなく、僕をじっと見ていた。


 絶対見られちゃいけないのに…… 

 家族だけの絶対の秘密を、知られてしまった。

どうして……こないでって言ったのに……

 分からない。何でそんな事を言ったのだろう。
 もう見られた後なのに、勝手に喋ってるみたいだった。


 頭が真っ白になってて、今の自分が自分じゃないみたいに……

ま、待て。何処行くんだ?
 この辺の事はあんまり覚えてなくて、そのまま階段を上がっていくと、まだ付いてくる妹さんにランドセルを投げつけていた。
ぐおっ! ま、待てって言ってんだろ! は、話をしろ! おい!
 ずっと階段を上がっていくとドアが見えた。僕はそのドアを開けると、屋上だった。

華凛ちゃん。だよな?  俺だ。分かるだろ? 

お、俺だ。虎だっ! 華凛ちゃんなんだろ?

 屋上には僕と、お姉ちゃん。そして坂田さんまでついてきた。


 行き止まり。
 迫ってくるお姉ちゃんに、僕は後ろに下がると、屋上のフェンスを登ってた。

ま、待て。 お前! な、何する気なんだ!
 下を見れば、道路がとても小さく見える。
黒澤くんっ! まって。や、やめてぇ!
は、早まるな! 華凛ちゃん! は、話を。俺の話を聞いてくれ!

 もうダメだ……

 入れ替わりである正体を見られた。
 それがどれほどいけない事なのか。僕にもよく分かってる。



 いじめられるとか。
 そんなレベルの問題じゃないって。分かってる。


 このままじゃ僕は、蓮兄ちゃんや、お父さんに迷惑が掛かってしまう。

 下手したら引越ししないといけなくなる。




 それなら……僕はここから……

 そうすれば……

もう……この身体で悩む事もなくなる

華凛ちゃん! そ、そこを動くな。

いいか。とにかく待て。俺の話を聞いてくれ。

 妹さんが近寄ってくると、僕は一歩遠ざかった。

僕はもう……ダメだ。
うぁ……
 すると、妹さんは後ろに下がっていく。

何で見たの? 何で? こないでって……


こないでって言ったのに!

…………
…………

 見られなきゃ……こんな事にはならなかったけど、もう……見られてしまったのなら、どうにもならない。



 僕は馬鹿だ。

 学校でもいじめられるし、僕はみんなの迷惑ばかり掛けてしまう。みんな僕の為に……お兄ちゃんもお父さんも、僕がダメだから……



 それならもう……

お父さぁん。お兄ちゃんごめんなさい。僕はもう……ここから……

 僕はそう言って、目を閉じると全身の力を抜くと後ろへ倒れこんだ。 


まてぇ! うおぉ~~~!

 その瞬間、妹さんが僕の名前を叫ぶ声がすると――

えっ?
 そのまま落下するはずの僕の身体は、止まっていた。
華凛ちゃん! そのまま動くな! 俺が……引き上げる!
やめて……もう、お願いだから!
じっとしてろ! 無駄な体力を使うな!
ほっといて! 僕はもうっ! 終わりなんだ!
うっせぇ! 俺も話があるって言ってるだろ!

 その時――

 遠くから声がしたんだ「華凛ちゃん」って。

 聖奈お姉ちゃんの声だ! 
 僕は目を開けると、今の状況に混乱してしまった。



 下に小さく見える聖奈お姉ちゃんが叫んでるのが分かると、僕の身体は逆さまになり、僕の左足首には、妹さんの腕一本で支えられていた。



 あの腕が離れたら、僕は一瞬で落下する。
 そう思うと、完全にパニックになってしまった。



あ、あ、あっ……ああっ!
落ち着け! 俺が引き上げる! 絶対この手を離したりはしねぇ!
下を見るな! 目を閉じろ。そのままじっとしてるんだ!

 ガクガクと震える身体。

 言われるがままに目を閉じて、動こうとする身体を必死に抑える。



 僕は飛び降りたのか? それすらもまだ分からなかったけど、時間が経つ内にとんでもない事をやってしまったのだと気付いた。

よし。いいぞ……そのまま引き上げてやる!

 足元から伝わってくる妹さんの腕の力。


 それが二本になると、最初に持っていた手を離す。そして僕の膝辺りを持とうとしたけど、片手で持てなかった。

くそっ! 俺一人じゃ……ここから上がらん!

お、おい。そこの女の子! 

…………あああっ……
クソっ! 完全にテンパって使い物になりゃしねぇ!
誰でもいいから人を呼んで来てくれ! 頼むっ!

 僕の足首に掴まる二本の腕。
 その時、僕の靴が脱げると、僕は目を開いてしまう。


 落下する靴は小さくなり、下に落ちていくと、すぐに見えなくなってしまった。

 それを見て僕の身体は更に震え上がってしまった。

落ち着け! 大丈夫だ。

こんな所で……意地見せなくてどーすんだよ! 気合を入れろっ! 虎ぁ!

 そ、そうだ。この人は虎ちゃんだ。
 こんな場面で僕はようやく思い出した。その時、虎さんはこんな事を言った。

華凛ちゃん。いいか? 先に言っといてやる。

俺もな……入れ替わるんだ! お前と一緒なんだよ!

……えっ!
お前だけじゃねぇ。俺も……男になるんだよ!
 お。同じ入れ替わり体質?
本当にいたんだ。俺と同じ……そんな奴に出会えるなんて……

初めて出会った! だから兄妹! この手は死んでも離さねぇ!

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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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