初詣の風景

エピソード文字数 555文字

 行列の最後尾に並んで、白い吐息を漏らす。その日はとても寒く、反対に陽射しはとても暖かかった。人々の囁き声があちこちで聞こえている。たくさんの星の川が連なっているように、日常の輝きがあった。
 神社の周りに行列が続いていた。毎年の、お馴染みの景色だ。ふとたこ焼きの袋を提げた女性が現れ、連れの男性と仲良く食べ始めた。とても美味しそうだ。
 男の子が笑い声を上げて飛び跳ね、近くを走り回っている。
 この風景を見られることは、本当に嬉しかった。去年はとても忙しい一年だった。徹夜続きで体力的に堪え、でも、それを乗り切った今は、どこか達成感がある。
 ふと、思い出す。昨年読者に会った時、どこかはにかむような笑顔で、話しかけられたのを覚えている。
「ああいう、ほのぼのとした小説は余裕のある心境でしか書けないのではないですか?」
 その時は曖昧に答えたが、実際はかなり切羽詰まっていた。原稿を書いている時は、地を這うようにタイプし続けていた。半分、眠りこけていた。それでも、と筆を振るい続けた。
 そんな一年を振り返ると余計に、この瞬間が嬉しく感じられた。
 行列はなかなか進まなかった。でも、その遅いペースが私には嬉しく感じられた。束の間の穏やかな一時をいつまでも、味わっていたい。本当に心の底からそう思えた。
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