第14話  蓮の恋愛事情 3

エピソード文字数 2,710文字

てめぇ。いい加減にしろよ。さっきから勝手に出てきてやりたい放題、好き放題言いやがって。彼女は話があるって言ってんだろ?
 あまりにも強引な魔樹に我慢ならず、ぶちまけてしまった。

……何だ君は。僕にケンカ売ってるの?



てめーの出方次第では、そうなるかもしれねーな。


とてもじゃないけど、そんな事できるようには思えないんだけど
へぇ。やってみるか?

ここで初めて魔樹を睨んだ。明らかな敵意を見せ付ける。


マジでむかついてるので止まらないし、そこそこ強そうなヤツには戦ってみたいという闘争本能があってだな。


それに……俺に対し明らかな敵意を見せるヤツには、反撃するっていう習性があるんだよ。

…………

 魔樹の顔つきが変わった。


 染谷くんのようなレーダーがあるのか分からんが、明らかに戦闘モードへと移行したのが分かる。こっちだって闘志むき出しだからな。



 それにしても……魔樹は全然ビビってない。


 こいつも染谷くんと同じ匂いがする。


 何となく分かる。結構強いわこいつ。

まぁでもさ。お前の言いたい事は分かる。こんな綺麗なねーちゃんがいるとそりゃ心配だわな?


だが安心しろ。俺が白竹さんに惚れるという事など……天地がひっくり返ってもありえねぇから


てめぇに約束してやるよ

なんだと?

絶対に手を出さない自信がある。俺は……俺も普通に友達が欲しいだけだ。


それ以上を求めるつもりは絶対に無い。

急に語り出して二人は固まっていたが、自分の意見を全部吐き出したので、やたらスッキリしていた。

それでもてめぇがケンカ売ってくるなら、やってやるぞ。


こいつ……
魔樹。だめ! お願い! やめてっ!

魔樹は睨んだままだが、何だか妙に落ち着いているな。

だがその態勢を見て把握する。いつ飛び掛っても迎撃できるような立ち位置になってやがる。


そんな間にも白竹さんが「ごめんなさい」と何度も俺に謝ってくると、俺も彼女専用の笑顔に変化する。

いえいえいえ。いいんです。俺の方こそすみませんでした
白竹さん。あなたは何とも思っていませんからね。
美優に手をだしたら許さない

はっ! 勝手に言ってろよ。


そんなこと。どう考えてもありえねーから。

く、黒澤君……?

いいんですいいんです。白竹さんにはいつも通り優しくしますからね~


この男とは上手く行かなさそうだけど

 はっ! ふざけた野郎だ。


 喫茶店ではクネクネしてて、如何にもオネエ系に化けてやがるのに。男に対しては無愛想で頭の固いクソ野郎かよ。



 よくいるんだよこういう奴が。男と女で態度を急変させる奴がな。



 もっとも。蓮と楓蓮は別の人間として思われてるんだから、しょうがねぇんだけど。

 事情を知ってるこちらとしては……マジで胸糞悪くて一番軽蔑するタイプの野郎だ。





 その時、遠くから俺の名を呼ぶ声が聞こえてくると、俺は振り返った。



お兄ちゃ~ん!
お、凛っ! どうしたんだ?
凛がこちらに走ってくる。ランドセルを持っていないので、一回家に帰ったのだろう。
お兄ちゃん遅いから、迎えに来たよ
そっか。すまんな。じゃあ……帰ろう
あっ。すごい綺麗な人~~! お兄ちゃんのお友達?
そそ、やばいくらい美人だろ?


 お、凛! えらいぞ。

 お前もちゃんと演じているみたいだ。


 白竹さんは喫茶店で見かけた事があるが、凛では初めてだからな。

 この辺のさりげない台詞はとても大事なんだ。


 その頭をくしゃくしゃして撫でると、凛は俺の腰辺りに抱きついてくる。

じゃあ。そういうことで。さいなら

 白竹さん達に社交辞令用の笑顔を見せて、俺は凛と一緒に手を繋いで歩き出す。途中でおんぶをリクエストされたので、鞄を持ったまま凛を背負うと、一気に走り出した。





 ああ……でもなぁ。

 

 やっちまったかも知れねぇ……

 明日から白竹さんの態度が急変する可能性もあるなこりゃ。


 ちょっと言い過ぎたかもしれないとは思うものの、我慢できなかった。う~んこの辺は染谷くんを見習わないといけない。ちょっと沸点が低すぎるのかもしれない。



 だけどあんまり後悔していないとも思った。

 俺は俺の意見を言ったまでで、間違っていないと思ったから。



 ただ友達が欲しいだけで、白竹さんと話すのもその理由しかない。

 その先にあるような関係など、俺は求めていない。



 あぁ……こんな気持ち、誰にもきっと……理解できないのだろう。


 人を好きになるなんて、人を愛す気持ちなんて。

 俺にはそんな気持ちなど、無くていい。



 恋愛感情よりも、俺を……凛を……黒澤家を理解してくれる人が欲しいだけなんだ。



 ※


 

 家に帰ってからも、魔樹にケンカを吹っかけた事に後悔はしてなかった。


 アイツはアイツでケンカ売ってくるなら、買えばいいし、白竹さんとは仲良くすれば問題なしだろ。


 ただし。魔樹と交戦する事によって白竹さんと疎遠になるのならば……それは仕方がない。



 まぁ魔樹がどう出るか。だな。


 などと思っていると、午後十時を過ぎた頃に白竹さんからのラインがモリモリ着弾しだした。


 その内容とは……


 

 今日の魔樹についての謝罪が何度も届く。


 すみません。という言葉が10回以上も続き、スタンプもモリモリ届く。


 

魔樹にはいっぱい言い聞かせましたので、もう大丈夫ですよ。

良かったら、魔樹とも仲良くしてもらえたら嬉しいです。

 そう書かれていたが、本当だろうか?

 

 まぁこればかりは、また魔樹に会ってみないと分からないぞ。

魔樹って本当はとっても優しくって、良い子だから。

きっと黒澤くんとも仲良くやれると思うのです。


じゃあまた明日ね。おやすみです~

それにしても……白竹さんのラインのスピードは凄まじいな。


むちゃくちゃ早くて驚いた。


まぁでも。ラインでのやり取りはありがたいな。


姿が見えなきゃ、どっちの状態でも連絡が取れるから。

 平日は学校行ってるから、夜は楓蓮になってる可能性が極めて高い。


 つまり。蓮として電話には出られないのだ。声が違うからな。

お姉ちゃん! 早くやろうよ。


超上級コース周回しようっ!

はいはい。分かってるよ。


もう返事は来なさそうだな。

やった! お姉ちゃんがいれば、何処でも楽勝だもんね

という訳で、後は寝るまでソシャゲーでもやっておこう。


ほどよく華凛の相手をしてやらなきゃ、キレちまうからな。



こいつ。むちゃくちゃソシャゲーが好きで、良く一緒にやってるんだ。





 まぁ白竹さんの件は、明日学校に行けばどうにかなるだろ。

 

 今考えたってしょうがないし。解決しないからな。



 できれば……白竹さんの弟でもある魔樹とは仲良くやるのが一番なのだろうが……


 こればかりは俺がそう思ってても、向こうからも寄り添ってもらわないと、難しいだろう。


 

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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