第68話

文字数 757文字

「……受験が無事終わったら、もう何も言いません。でも今は、真琴に構わないでください。あなたなら真琴じゃなくても他にたくさんいるでしょう」

 ちらりと雫を見てそう言う。何も言わないといいながら、暗にさっさと真琴の視界から消えろと匂わせるあたり、顔に似合わずイイ性格をしてる。良く言えば肚が据わっているのかもしれないが、はっきりいって小賢しい。小さくため息をついたあと、目の前で俺を見据えるリクにいう。

「いいたいことがあるなら、ハッキリいったら? 回りくどいんだけど」

 リクはしばらく俺を見つめていたけれど、吐息をついてからゆっくり口を開いた。

「……アンタ邪魔」

「うわぁ! ついに黒リク登場!」

 雫がワクワクした表情を隠しきれないように、小さく叫んだから、俺と奴、二人して雫を軽く睨む。雫はあわわわ、といってそれでも楽しそうに手で口を塞いだ。

「それって真琴の勉強云々じゃなくて、お前にとって俺が邪魔ってことだよな」

「……こっちは小さい頃からずっと一緒だから、仕方なく幼なじみやってたのに。ポッと横からあんたがでてきたら、そりゃ超邪魔だよ」

 愚痴を言うようにボソリと言った後、リクは軽く首を振った。

「それは今は置いておくけど。あんたの存在が真琴のペースを乱してるのは間違いない。真琴はずっと迷いながらも真剣に勉強に打ち込んできた。それがあんたみたいな男に言い寄られたら、普通の女の子は舞い上がって勉強なんかしていられなくなる。真面目な女子高生落とすとか、そんなに面白い?」

 素の状態になって噛みついてきたリクを、まじまじと見つめる。さきほどまでの、どこか取り繕った表情は消え、敵意むき出しだ。ただ、そのほうが話は早いしわかりやすい。苦笑を混ぜた吐息がこぼれる。ヤツはそんな俺を見て、警戒感を漂わせるように眉を寄せた。
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