第25話 中途半端な私の能力
文字数 1,282文字
「昨日 の件だろう? そなたが引き留める理由は。体の小さいそなたが、真っ先に体調を崩したからな」
「持ち込まれてすぐに、オープンになっている部屋に充満したのです。あれを毎日吸い込んでいたら、アッという間に中毒患者が出来上がってしまいます」
「だろうな。昨夜上がって来た報告書にも、文官が数名そなたと同じ症状で苦しんでいるとある。中毒にならぬとも、体質的に合わない者もいるのだろう」
フレデリックは、上半身を起こしたとはいえ、まだ私の体に覆いかぶさっているのだけれど、先ほどのような怖さは無い。
「執務室に行って、持ち込んだ人物を特定したいです。これは、わたくしにしか出来ません。その後の事はフレデリックの仕事でしょうけど」
「だがな。昨日の今日で、また持ち込んだりはしないだろう?」
それは、そうなんだけど。でも、なんだか不安だわ。
「それにな。もし持ち込まれていたとしても、また倒れてしまうのでは話にならんだろう」
少し呆れたような口調で言ってきた。
「それでも、フレデリックを昨日のような状態の執務室に一人で行かせたくはないです」
そう言った私を優しい目でフレデリックは見てくれているけど。
「書類をここへ持ってくる。今日中に処理をしないといけない書類があるのだ。それで良いか?」
「あ……はい」
変な間があった後に、そう言ってフレデリックは寝室を出て行った。
すぐに書類とテーブルが持ち込まれ、女官がフレデリックの作成した書類の受け渡しに私の寝室を訪れる。
ここ数日は、こんな日々が続いている。
臣下も皆、それぞれの執務室やそれに準じた部屋や部署で仕事をさせているようだった。
もちろん部屋の窓は開けっぱなしにさせている。
寒い時期でなくて良かったわ。
フレデリックが仕事をしている間、私はベッドの中にいる。
私を診察した医師とフレデリックから、安静にしてなさいと言われてしまっていた。
まだ起きると頭がくらくらするので仕方が無いのだけれど。
それにしても……と、思う。
私の能力は中途半端だ。
ピクトリアン王国の純血種と、国外の人間とのハーフだから仕方が無いのかも知れないけど。
純血種だったらにおいを感じとれても反応しないかもしれない毒草に、外の人間より敏感に反応して体調が悪くなってしまう。
この国の人間たちは、中毒症状が起きるまで大半の人が体調も悪くならないので、中毒症状が出るまで気付かないのかもしれない。
もしかしたら、持ち込んだ本人すら……。
だって自分も中毒になってしまうかもしれないのに。
書類を書いているフレデリックをふと見てると、私の視線に気付いたかのように顔を上げてこちらを見た。
フレデリックも、他人の視線に敏感だ。
「どうした?」
にこやかに笑って訊いてくる。私には、表面的なものしか見えないけど。
「お仕事をしているところを、見ていても良いですか?」
「ああ。かまわんよ」
と言って、また書類作成に戻る。
その様子を、私はじっと見つめていた。
「持ち込まれてすぐに、オープンになっている部屋に充満したのです。あれを毎日吸い込んでいたら、アッという間に中毒患者が出来上がってしまいます」
「だろうな。昨夜上がって来た報告書にも、文官が数名そなたと同じ症状で苦しんでいるとある。中毒にならぬとも、体質的に合わない者もいるのだろう」
フレデリックは、上半身を起こしたとはいえ、まだ私の体に覆いかぶさっているのだけれど、先ほどのような怖さは無い。
「執務室に行って、持ち込んだ人物を特定したいです。これは、わたくしにしか出来ません。その後の事はフレデリックの仕事でしょうけど」
「だがな。昨日の今日で、また持ち込んだりはしないだろう?」
それは、そうなんだけど。でも、なんだか不安だわ。
「それにな。もし持ち込まれていたとしても、また倒れてしまうのでは話にならんだろう」
少し呆れたような口調で言ってきた。
「それでも、フレデリックを昨日のような状態の執務室に一人で行かせたくはないです」
そう言った私を優しい目でフレデリックは見てくれているけど。
「書類をここへ持ってくる。今日中に処理をしないといけない書類があるのだ。それで良いか?」
「あ……はい」
変な間があった後に、そう言ってフレデリックは寝室を出て行った。
すぐに書類とテーブルが持ち込まれ、女官がフレデリックの作成した書類の受け渡しに私の寝室を訪れる。
ここ数日は、こんな日々が続いている。
臣下も皆、それぞれの執務室やそれに準じた部屋や部署で仕事をさせているようだった。
もちろん部屋の窓は開けっぱなしにさせている。
寒い時期でなくて良かったわ。
フレデリックが仕事をしている間、私はベッドの中にいる。
私を診察した医師とフレデリックから、安静にしてなさいと言われてしまっていた。
まだ起きると頭がくらくらするので仕方が無いのだけれど。
それにしても……と、思う。
私の能力は中途半端だ。
ピクトリアン王国の純血種と、国外の人間とのハーフだから仕方が無いのかも知れないけど。
純血種だったらにおいを感じとれても反応しないかもしれない毒草に、外の人間より敏感に反応して体調が悪くなってしまう。
この国の人間たちは、中毒症状が起きるまで大半の人が体調も悪くならないので、中毒症状が出るまで気付かないのかもしれない。
もしかしたら、持ち込んだ本人すら……。
だって自分も中毒になってしまうかもしれないのに。
書類を書いているフレデリックをふと見てると、私の視線に気付いたかのように顔を上げてこちらを見た。
フレデリックも、他人の視線に敏感だ。
「どうした?」
にこやかに笑って訊いてくる。私には、表面的なものしか見えないけど。
「お仕事をしているところを、見ていても良いですか?」
「ああ。かまわんよ」
と言って、また書類作成に戻る。
その様子を、私はじっと見つめていた。