第42話  白竹魔優視点 魔優と美優 2

エピソード文字数 4,333文字



 ※


 三時限目の授業中。

 ポケットに入れておいたスマホがブルったので確認。きっと美優からの連絡だと思った。

 

一回目のサインが来たのです。11時07分でし。

ごめんね魔優。

それじゃ放課後まで絶対持たないじゃないの。


まぁあまり怒ると美優はすぐに泣いちゃうから、言わないけど……

 私は予定通り、学校内で入れ替わりするのを提案しました。


 普通の休憩時間では時間が足りないので、昼休憩を使ってチェンジします。


 

一階の西トイレにしよう。前もあそこで入れ替わったし、人が少ないから。

あい~~! わかりましたっ!


あと、黒澤くんや染谷くんとか。聖奈ちゃんとかには優しくしてあげてくださいね

 もう……まだ言ってるの?


 この話になると、私はいつも美優とケンカしてしまうのです。



 だけど今は学校なので、私は「分かった」と返事を返します。


 美神さんはともかく……


 黒澤や染谷には……あまり近づかないで欲しいのに。

 その理由は単純明快。男の子だから。それだけ。

 美優は……男の子から身を守る術が無い。


 万が一。って事を考えると、私は美優が男と仲良くやるのがとても危険に感じる。

魔優も。みんなと喋ると楽しいのですよ。だから仲良くしようよ。

分かった。ちょっと喋ってみる


 そう返事しましたが、積極的に仲良くしようとは思わない。

 


 美優の提案に簡単に折れた理由、それは先週の件があるから。

 黒澤と言い合いになって、その後美優とケンカになって……それはもう大変でしたからね。


 

「初めて私にできたお友達」

 美優はそう言って、他の人と仲良くやろうとしている。


 その気持ちは分かる。美優はこの高校から生まれ変わろうとしてるのも知っている。


 だけどね。美優……


 私達には普通の人間とは違う。果てしない壁がある。

 それは美優だって分かっている。はずなのに……

  


わぁお! やった! 魔優がやっと分かってくれたのです!


うんうんうん! みんなで仲良くやろうねっ! きっと楽しいよっ!

 美優。そんなに嬉しそうに返事してこないでよ……

私。この高校に来て良かったよ。今、凄く楽しい。


中学校や小学生の頃よりもずっと面白いの。


 今のラインの内容で、どんな顔して送信してきてるのか、すぐ分かる。



うん。分かったよ。


だけど……黒澤や染谷に対しては気をつけてね。男の子なんだから。

それだけは絶対忘れないでね。

絶対大丈夫ですっ! 黒澤くんも染谷くんもそんな人じゃありません!

 あまり言わない方がよそさうね。ケンカしたくないし……


 

 何かあってからじゃ遅い。私はそれを恐れている。 

 美優みたいな子はすぐに騙されてしまうのではないかと。


 だから私は、美優が黒澤達と仲良くするのに反対なのよ。

 仲良くやればやるほど、美優も止まらなくなるのが……怖い。


 それは相手だって同じ。

 黒澤や染谷が、この子ならいける。そう思われてしまえば……

黒澤くんや染谷くんや聖奈ちゃんは、私の大事なお友達です。


初めて出来たお友達。だから信じたい。


分かって。魔優。お願い……

 ああ、どうしたらいいのでしょうか。


 美優……



 ※



おっけです! 異常ありませぬ。
いくよっ! 

 美優と二人で女子トイレに駆け込むと、別の個室に入って服を脱ぎます。

 

 そして入れ替わった後、ブレザーなどを交換し、あらかじめ持ってきてた女の子用の下着を装着すれば、これで完了です。


あれ? な、ない。


どおしよ。男の子ショーツ。忘れてしまわれましたっ。

あらら。だけどそのままでいいじゃない。体育の授業は無いし

しょ、しょれが。美優用のショーツだと前がモコってしてて。キツいです。


や、やっぱ脱ぎましょ。

ここはノーパンじゃないとダメっぽいです


じゃないと。こんな状態で。おっきしたら大変でしっ!

もうっ! そーいうの言わないでって、言ってるのにぃ!


先に出るよっ

にょ、にょーぱんプレイ……

あふぅ。リアルでやるだなんて。変態すぎると思いませんか?

仕方ないじゃない。忘れたんだから。


ほらっ早くっ! 御飯食べる時間がなくなるでしょ

 美優と入れ替わった私は、個室から出るとささっとトイレから出ます。

 廊下に誰も居ないのを確認してから、美樹を呼び、何事もなかったように教室へ戻るのでした。

 ここから私は「美優」として振舞わなければならない。

おかえり。遅かったわね。
すみません。ちょっと職員室行ってまして。

 ごく普通に美優の弁当を取り出して食べます。


 教室には美神さんはいるけど、黒澤や染谷はいない。きっと食堂でも行ったんしょう。

ん? 美優。どうしたの?


何だかさっきから妙に落ち着いてるわね

そでしょうか? 別に普通ですよぉ。

そう言いながら、普通に弁当を食べます。


それにしても、美神さんってすぐに異変が気がついたみたいですね。


だけどね。私は別に……変に思われても構わないんですよ。

これが蓮の言ってたクル竹さんだっけ?

確かに全然態度が違うから、すぐに分かるわね。


いつも周囲を気にしてオドオドしてそうな美優とは大違い。

まるで別人だわ。

 だって。私達が本当に入れ替わってるだなんて。

 普通の人にはまず信じられないだろうから。だから私は、そのままの自分を出してる。

 


 

 そうする事で変人に思われても二重人格に思われても……別に構わない。

 

 だって真実はバレたりしないし、バレたとしてもきっと……普通の人には理解できない。


 何よりも。私は他人にどう思われようが気にしない

 

 もちろん。私が美優に合わせて違和感なく喋る事もできるけど、そんな面倒なこと。私はしたくない。


 それに美優に「魔樹」を演じさせるのには不安だし、それなら美樹自身、自然にやらせるのがいいと思ったから。


 どうとでもなる。私はそう思ってた。

 



 ※




 美優になりすましてから何事もなく放課後が来ます。

  

 私は早速教室から出ようとすると、美神さんに声を掛けられました。


っていう事で。今度の土曜日。


昼過ぎから夕方くらいまで、みんなで遊ばない?

 美神さんは遠方組である人達と遊びたいのだそう。


 それはつまり。美神さん。黒澤。染谷。そして美優。ということ。

土曜日なら大丈夫ですっ。みんなで遊びましょう。


うんうん。一度みんなで何処か行きたかったんだよね。

土曜日。昼から夕方までなんてバッチリすぎるタイミングだ。

サイクル変えずにそのまま喫茶店でバイトできる。

もちろん俺も参加します。白竹さんはどうですか?

急な提案だったので、思わず黙っちゃったけど。私はすぐに返事をした。

はい。私も行きます。よろしくお願いしますっ!

こんな誘い……断っちゃうと美優と絶対ケンカになる。


この場面は合わせるしかないでしょう。


まだ土曜日まで日はあるから、やっぱり無理でした。とも言えるし。

ねぇ。美優。あんたの弟も呼びなさいよ
だね。弟さんも遠方組だし。その五人にしようか

うんうんっ! 俺も魔樹とは仲良くやりたいんで。

白竹さん。あいつにも聞いてみてください。

 美神さん……黒澤……染谷……


 あなたたちは、あれだけ無愛想な魔樹を……

それに。弟が許可しないと美優が出れないでしょ? 何とか説得しなさい。


無理だったら。私が直に魔樹くんに話すから。

分かりました。魔樹に聞いてきます。

 それなら私は美神さんと美優と、三人で遊ぶ方がいいんですけどね。


 女の子なら別に、そういう間違いは起こらないし、安心して仲良くなれるかもしれない。


 

で、いつの間に俺も一緒に行くって話になってるの?

え?


 だ。誰だっけこの人。すっごい胸見てくるし……


 あ~~体力テストの時に殴ろうとした男だわっ


いあ。お前は来なくていいって話になってる最中だ。

そうね。アンタは来なくていからね。分かってる?


まち合わせ場所はまた明日にでも決めましょ。

ちょ! そ、そんな殺生なっ!
西部。ごめんな。主催が聖奈だから……また今度遊ぼう。

 そんなお話をしてると、この教室に入って来たのは……美樹でした。


 あんまり来ないでって言ってるのに。

本人が来たなら丁度いいわ。


ねぇ。今度の土曜日。ここにいるメンバーで集まるわよ。

え? みんなで集まる? 

そうなんだ。


聖奈と白竹さん。そんで染谷くんと俺と魔樹で……遊びに行こう

魔樹。どうする? 

 別に返事をしなくても。答えはわかっているわよっ


 だってほら。もう美樹の顔が緩みきってるもん

はいっ! 是非行きます。ぼ、僕も仲良くしたいですっ!
よし決定。後は何処で集まるか。決めなきゃね。

こりゃ完全にクネ魔樹だ。こんな素直なハズがない。

そーなると、白竹さんはクールになる不思議。


まぁいいか。どちらにせよ今度の土曜日が楽しみだ。

 ちょっと美樹。顔がずっとふにゃけてるよ。


 嬉しいのは分かるけど、あまり人の前で変顔するのは止めてほしい。


 

まぁいっか。一緒に遊びに行っても。私がいれば大丈夫。

 なんだろうこの気持ち。


 美優が他の人と関わっていくと同時に不安が広がっていく。そんな気がする。


 

 仲良くなろうとする。それはとても大事なこと。

 

 だけど。私達にとっては、そんな事をしても結局無駄に終わる。


 結局みんな。私達の元から離れていくのに……

 

 小学生の時も、中学生の時も、今までがずっと……そうであったように。

 

 ※


 美神さんは先に帰り、黒澤達と一緒に下校します。

 今度の土曜日はどこで遊ぶのか、仲良く話し合いながら歩いていると、あっという間に家が見えてきました。


 ここで黒澤や染谷と別れると、美樹はすぐに私に寄って来ます。


魔優。土曜日がすんごい楽しみです。絶対に行こうねっ!

分かってるわっ。美優の好きにして構わないから。
うんっ! 魔優も一緒に。仲良くしよっ

 美樹……


 屈託のないその笑顔を見たのは、随分と昔。とても久しぶりな気がする。



私。このお遊び会でね……聖奈ちゃんと、もっと喋りたい

そうね。それが一番いいわっ。

彼女には体力テストでも助けてもらったし、喋ってても優しいしね。

 美樹がその気なら、心配ないかな。

 すかさず「黒澤と染谷は?」と返すと、美樹は顔を赤くしながら左右に首を振った。

だってぇ。その。お。男の子ですし。恥ずかしいよ。

仲良くしたい。けども……


それに私は女の子同士でも上手く喋れないし……

まず聖奈ちゃんがいい。

それなら美神さんと二人になれるように私が上手く誘導するわっ。
大丈夫よ美樹。まぁ土曜日は……楽しくやろっ。
うんっ! ああもう。今から楽しみなのですっ

 

 高校になってからとても明るくなった美優。


 その笑顔を見ているとね……

 

 私が魔樹として世に出た事は間違っていなかった。そう思えるの。

  

美優の為、私は女である事を捨てた。


高校から私は魔樹として。男として世間に立つ道を選んだ。


本当の私を……

魔優を知る人間は……家族だけでいい。

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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