第31話

文字数 693文字


「相変わらず薄い反応だなあ」

「どう反応しろっていうんですか。あいつ、どうして余計なことを貴大さんに言うかな……」

 もう苦笑するしかない。実際問題、真琴に男がいようがいまいが、俺には関係のないことなのだから。

「あれから遊の機嫌がすごく悪くなったって。真琴と遊ってどんな関係なの? ってそれはもう興味津々で、聞いてきたからさ。なるほどねって思ったわけ」

 無視しても、やたら楽しそうに俺に絡んできた雫を思い出して、今度こそ大きなため息をつく。真琴が男といるのを見たとき、イラッとしたのは否定できない。あんなに好きだ、みたいなアピールしといて、お前もそんな女だったのなのかと、どこか腹立たしく感じた。だけど真琴は、なんの(てら)いも、後ろめたさもなく、まっすぐ俺をみていた。いつものように。

 そんな真琴と目があった瞬間、どこか安堵している自分に気づいてまた、腹がたった。ついでに真琴と同じ制服をきて、俺を睨みつけてきた(ガキ)にも。こんな面倒くさい感情なんて、いままで知らなかったし、知りたくもなかった。
 
「真琴は……関係ないですよ」

 我ながら間が抜けた言い方だと思う。たぶん表情に出てしまっているから、貴大さんがそれを見逃してくれるはずがない。

「関係ないって顔じゃないけどな。まあ、こうなるといいな、とは思ってはいたんだけどさ」

 そう言ってのんびり笑う、貴大さんを思わずじっと見る。

「貴大さん」

「なに?」

「もしかして、こないだ真琴を駅まで俺に送らせたの、わざとですか?」

「あ、わかった?」

 貴大さんは、目じりにシワを寄せて楽しそうに笑うから、今日何度ついたかわからない、ため息をまたひとつ零してしまう。

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