前半後半、もはや別物――大藪春彦『ベトナム秘密指令』
文字数 911文字
放課後の善光寺高校、文芸部の部室。
かなり曲者な一冊なんだよ。前半は米兵による日本国内への麻薬の密輸が描かれる。こいつの捜査を公安の色んなメンバーの視点で追いかけていくわけだ。視点切り替えのタイミングも絶妙だし、新しい事件が起きたりしてかなり緊迫感がある。さすが大藪春彦って感じでさ。
とにかくだな、チームプレーの捜査でどんどん密輸ルートに迫っていくんだ。そして重要な手がかりを手に入れたところで、目指すはベトナムだということになる。ここまででだいたい半分なんだが……まだ裏表紙のあらすじに書かれてる主人公が出てこないんだよ。
ていうか、後半は大藪春彦がよく書いてるタイプのハードボイルドそのものなんだよな。俺はその手の大藪作品しか読んだことがないから、前半はわりと新鮮だった。正直、このままチームで敵に迫っていく展開も充分ありだったと思うんだよ。けど、やっぱり一匹狼が大暴れする方に行ったわけだ。