文字数 506文字

    一

 子供の頃の私は、嘘つきな子でした。どうでもいいような嘘を幾つもついて、そしてそれがばれないもので、得意になっておりました。嘘をつくのが、一種の遊びのようになっていたのです。
 加えて、愚かしいことに、自分がどれだけ嘘をついたかとか、如何に工夫を凝らして嘘をつくかとか、そしてそれを親がやすやすと信じるのだということを、さも自慢気に友人に話して聞かせておりました。友人は、表面面白そうに笑ってみせていましたが、心の中では、きっと馬鹿にしていたに違いありません。本当に、恥ずかしいことをしていました。
 その嘘だって、ばれないとか、信じてもらえたからと言って、別に巧みだった訳ではないのです。ただ小さな、仕様もない嘘ばかりだっただけです。小さな嘘も重なれば、侮れないこともありますが、子供のつく嘘です。学校のあと、友人と遊びに行きたくて、習い事をこっそり休んだのに行ってきたと言ったり、自分で買ったハンドクリームやリップクリームを、友人に貰ったのだと言ったり(こういうめかしこんだ物に興味を持ち始めたと思われるのが、照れくさかったのです)、他にも、つかなくてもいいような細かな嘘を、日常的についておりました。
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