間奏Ⅲ 夏とはどんなものかしら

文字数 348文字

 わたしはなにもかもを忘れて、今年の春のはじめ頃に目を覚ましました。だから今は、初めての春を過ごしている最中です。もうじき夏が来ると、みんなは言っています。夏がどんなものなのかは、話に聞いたことしかないけれど、それは想像するかぎり、今の二倍も太陽が明るくなって、気温はお湯みたいに高くなって、草樹(くさき)の緑が今よりずっと色濃くなる――というような感じで、合っていますか?
 でもきっと、実際に自分の身で体験してみないと、ほんとうのところはわからないものでしょうね。みんなは、夏が好きだ嫌いだ早く来い早く過ぎ去れとそれぞれに言っているけれど、わたしはともかく単純に楽しみです。
 秋とか冬とかになると、もうお手上げです。世界が枯れたり白くなったりする光景は、わたしの想像の外にあります。ひとまず夏を待ちます。
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