記2 アロンはいろいろ言われた
文字数 1,689文字
クダンは一瞬硬直した。
それからおおげさに両手で胸を隠す。
「キャーッ!」
いや、今更「キャーッ!」って。
もちろん、クダンは服は着ている。
白い、それなりに神々しい衣装。
でも、どうせならもっとダブダブの服着てればいいのに、確かに胸が強調され過ぎている感じがする。
感じがする、ってのは、十七歳の俺にはちょっと刺激が強すぎるから、さすがにガン見できないってだけ。
前から歩いて来た他校の女子高生のスカートが風でめくれ上がった時、思わずわざとらしいくらい目をそらした時のことを思い出す。
ここで、リア充なら何か言えるのかもしれないけど、女の子なんてモーゼ以外ろくに話さない俺には無理。
とはいえ、全く見なかったわけじゃないし、確かに人間離れしてる。
ご本人(?)の申告によると、そもそも人間ではないらしいけれど。
ん?
今の論点はそこじゃない。
「えーと、すみません」
俺はラノベやネットで出て来る、やたらとイキった口調の主人公が嫌いだ。
普段女の子と喋ったことがない奴の願望丸出しで、読んでいる(聴いてる)方が恥ずかしくなる。
何だか、俺自身が調子に乗ってるみたいで。
一応相手は(いろいろな意味で)危険な存在だし、最低限失礼にならないよう丁寧に問い掛ける。
「クダンさん、でいいんですか?」
「だから妖怪ではないと言っているでしょう!」
クダンはまた怒鳴る。
「す、すみません。あまり大きな声で叫ぶと、他の寮生が」
「その点ならご安心を。現在はここに結界を張っていますから」
「はぁ」
ほんとかね、と思いながら、とりあえず話を進める。
「まあ、あなたの胸が妖怪かどうかはとりあえずおいておいて」
「胸!?」
「あ、胸ではなくてあなたです」
「おっぱいは妖怪レベルだよね」
モーゼが頬杖をついて見ている先は、どう考えてもクダンの胸だ。
表情を見る限り、相当ムカついてるみたいだが、それは仕方ないか。
「お兄! 文句ある!?」
「いや別に」
「余計なこと言わないで!」と言いたいところだけど、俺のせいでもあるけどここは強引に続ける。
「とにかく、あなたがモーゼに余計なことを吹き込んだんですか?」
「余計なこととはどういうことですか?」
クダンは真顔になりながらも少し安心したように俺を見た。
「川南の民のあなたたちが本来の地に戻る。当然ではありませんか」
「でも、俺たち全員、エジ校でそこそこ楽しく暮らしてるんですけど」
「そんなことは関係ありません」
「は?」
「あなたたちが川南を必要としているかどうかなど関係ありません。川南の地があなたたちを必要としているのです。これからの夏にかけて」
「ええと」
「これから牧草の刈り取りも本格化しますし、レタス、キャベツの収穫もピークです」
「そ、それって、労働力としてじゃねーか!」
「いいえ、私はあくまであなたたちをエジプトの奴隷から解放しようと」
「どっちかっていうと、川南村の奴隷にしようとしてないですか?」
「とにかく私は、ファラオ会長の魔の手からあなたたちを救うために来ましたっ!」
パワーで押し切りやがった。
「やっぱり!」
モーゼ はこっちで目を輝かせてるし。
何だよお前ら!
今田舎に引っ込んだら、俺がこれまで努力して築き上げて来た人間関係どうなるんだよ!
まあ、大したもんじゃないけど、それでもクラスの女の子と三十秒は話せるようになったんだよっ!
それをまた白紙に戻して、女の子じゃなくて牛ナンパしろってのかよっ(しないけど)!
それ、場所が場所なら死刑確定じゃねーかっ!
モーゼ以外、女の子と1分以上喋ることもほとんどなかった暗い高校生活を送っていた俺にとって、一応これはハーレム状態。
女の子二人と喋ってる男子なんて見たら、羨ましさをごまかすために「ケッ、軟弱もんが!」と吐き捨てていた今までの俺にとって、夢のような状況。
……でも、こんなに嬉しくないハーレムってあったんだね。
それからおおげさに両手で胸を隠す。
「キャーッ!」
いや、今更「キャーッ!」って。
もちろん、クダンは服は着ている。
白い、それなりに神々しい衣装。
でも、どうせならもっとダブダブの服着てればいいのに、確かに胸が強調され過ぎている感じがする。
感じがする、ってのは、十七歳の俺にはちょっと刺激が強すぎるから、さすがにガン見できないってだけ。
前から歩いて来た他校の女子高生のスカートが風でめくれ上がった時、思わずわざとらしいくらい目をそらした時のことを思い出す。
ここで、リア充なら何か言えるのかもしれないけど、女の子なんてモーゼ以外ろくに話さない俺には無理。
とはいえ、全く見なかったわけじゃないし、確かに人間離れしてる。
ご本人(?)の申告によると、そもそも人間ではないらしいけれど。
ん?
今の論点はそこじゃない。
「えーと、すみません」
俺はラノベやネットで出て来る、やたらとイキった口調の主人公が嫌いだ。
普段女の子と喋ったことがない奴の願望丸出しで、読んでいる(聴いてる)方が恥ずかしくなる。
何だか、俺自身が調子に乗ってるみたいで。
一応相手は(いろいろな意味で)危険な存在だし、最低限失礼にならないよう丁寧に問い掛ける。
「クダンさん、でいいんですか?」
「だから妖怪ではないと言っているでしょう!」
クダンはまた怒鳴る。
「す、すみません。あまり大きな声で叫ぶと、他の寮生が」
「その点ならご安心を。現在はここに結界を張っていますから」
「はぁ」
ほんとかね、と思いながら、とりあえず話を進める。
「まあ、あなたの胸が妖怪かどうかはとりあえずおいておいて」
「胸!?」
「あ、胸ではなくてあなたです」
「おっぱいは妖怪レベルだよね」
モーゼが頬杖をついて見ている先は、どう考えてもクダンの胸だ。
表情を見る限り、相当ムカついてるみたいだが、それは仕方ないか。
「お兄! 文句ある!?」
「いや別に」
「余計なこと言わないで!」と言いたいところだけど、俺のせいでもあるけどここは強引に続ける。
「とにかく、あなたがモーゼに余計なことを吹き込んだんですか?」
「余計なこととはどういうことですか?」
クダンは真顔になりながらも少し安心したように俺を見た。
「川南の民のあなたたちが本来の地に戻る。当然ではありませんか」
「でも、俺たち全員、エジ校でそこそこ楽しく暮らしてるんですけど」
「そんなことは関係ありません」
「は?」
「あなたたちが川南を必要としているかどうかなど関係ありません。川南の地があなたたちを必要としているのです。これからの夏にかけて」
「ええと」
「これから牧草の刈り取りも本格化しますし、レタス、キャベツの収穫もピークです」
「そ、それって、労働力としてじゃねーか!」
「いいえ、私はあくまであなたたちをエジプトの奴隷から解放しようと」
「どっちかっていうと、川南村の奴隷にしようとしてないですか?」
「とにかく私は、ファラオ会長の魔の手からあなたたちを救うために来ましたっ!」
パワーで押し切りやがった。
「やっぱり!」
何だよお前ら!
今田舎に引っ込んだら、俺がこれまで努力して築き上げて来た人間関係どうなるんだよ!
まあ、大したもんじゃないけど、それでもクラスの女の子と三十秒は話せるようになったんだよっ!
それをまた白紙に戻して、女の子じゃなくて牛ナンパしろってのかよっ(しないけど)!
それ、場所が場所なら死刑確定じゃねーかっ!
モーゼ以外、女の子と1分以上喋ることもほとんどなかった暗い高校生活を送っていた俺にとって、一応これはハーレム状態。
女の子二人と喋ってる男子なんて見たら、羨ましさをごまかすために「ケッ、軟弱もんが!」と吐き捨てていた今までの俺にとって、夢のような状況。
……でも、こんなに嬉しくないハーレムってあったんだね。