第7話 嫁
文字数 1,119文字
ジョンの苦悩はもはや頂点に達しつつあった。母親は「嫁を見つけてくる」などとわけのわからない事を言っている。少しあたまがおかしいのではないかと不安にもなるが、なにしろ自分のことだけで手一杯、母親のことまで構ってはいられない。
ずっと部屋にこもって暮らせるわけがないと、ジョンにもよくわかってはいるのだが、しかし外に出ようとすると足がすくみ心臓は激しく波打ち、どうしても一歩が踏み出せない。敬虔なクリスチャンであるジョンは神にすがろうと、机の上の聖書をひらき熟読しだした。すると階下から母親が大声で自分を呼ぶ声がする。うるさいな、今度はいったい何なんだ! 神との時間すら邪魔するつもりかあの女は。
「ジョン、ジョン、ちょっと手伝ってちょうだいよ、あなたのお嫁さんなんだから!」
……また意味不明なことを。いい加減にしてくれよ! 腹を立てながらもジョンは、とりあえず階下に降りていった。すると玄関を入ってすぐのところに、満面の笑みを浮かべた母親が、ぐったりとして意識がない? 何者かを抱きかかえるようにして立っている。
「な、なんだよ母さん、どうしたの、誰だよそれ?」
近づいてよく見ると、それは小学生か中学生ぐらいの少女であった。
「いったいどうしたの、近くで交通事故でもあったの!?」
母親はジョンの質問には答えず黙ったままニヤリと口角を上げた。
「ちょっと、なあ、何があったんだよ!」
「あなたのお嫁さんだと言ってるじゃないの。さあ、ベッドに運ぶの手伝ってちょうだい。とりあえず一階のゲストルームでいいわ」
ジョンは母親がとうとうおかしくなったのかと身構えた。しかしぐったりしている少女をとにかく運ばなければと抱きかかえると……ジョンの中で何かが弾けた。抱き上げた少女の身体はやわらかく甘い香りがした。栗色の長い髪の毛がジョンのむき出しの腕にかかり皮膚の上をさらさらと揺れながらくすぐる。ジョンは思わず黙り込み、母親に言われるままゲストルームのベッドの上に寝かせた。
少女にはまだあどけない子どもらしさがあったが、しかし美しい娘だというのはよくわかった。ジョンはもう彼女から目が離せなくなっていた。
「ジョン、気に入ったみたいね。かわいい子でしょう? いいのよ、この子はあなたのお嫁さんなんだから。あ、ちょっと待って」
母親は黒いゴムでできた頭部全体をおおうようなマスクを出すと、ぐったりしている少女にかぶせた。それは目も耳も口もすっぽりとおおうものだったが、鼻のところはあいているので、息をするのに問題はなさそうだ。
「さあ、これでいいわ。じゃあ2人だけにしてあげるわね」
そう言うと奇妙な笑みを浮かべながら、部屋のドアをバタンと閉めて出ていった。
ずっと部屋にこもって暮らせるわけがないと、ジョンにもよくわかってはいるのだが、しかし外に出ようとすると足がすくみ心臓は激しく波打ち、どうしても一歩が踏み出せない。敬虔なクリスチャンであるジョンは神にすがろうと、机の上の聖書をひらき熟読しだした。すると階下から母親が大声で自分を呼ぶ声がする。うるさいな、今度はいったい何なんだ! 神との時間すら邪魔するつもりかあの女は。
「ジョン、ジョン、ちょっと手伝ってちょうだいよ、あなたのお嫁さんなんだから!」
……また意味不明なことを。いい加減にしてくれよ! 腹を立てながらもジョンは、とりあえず階下に降りていった。すると玄関を入ってすぐのところに、満面の笑みを浮かべた母親が、ぐったりとして意識がない? 何者かを抱きかかえるようにして立っている。
「な、なんだよ母さん、どうしたの、誰だよそれ?」
近づいてよく見ると、それは小学生か中学生ぐらいの少女であった。
「いったいどうしたの、近くで交通事故でもあったの!?」
母親はジョンの質問には答えず黙ったままニヤリと口角を上げた。
「ちょっと、なあ、何があったんだよ!」
「あなたのお嫁さんだと言ってるじゃないの。さあ、ベッドに運ぶの手伝ってちょうだい。とりあえず一階のゲストルームでいいわ」
ジョンは母親がとうとうおかしくなったのかと身構えた。しかしぐったりしている少女をとにかく運ばなければと抱きかかえると……ジョンの中で何かが弾けた。抱き上げた少女の身体はやわらかく甘い香りがした。栗色の長い髪の毛がジョンのむき出しの腕にかかり皮膚の上をさらさらと揺れながらくすぐる。ジョンは思わず黙り込み、母親に言われるままゲストルームのベッドの上に寝かせた。
少女にはまだあどけない子どもらしさがあったが、しかし美しい娘だというのはよくわかった。ジョンはもう彼女から目が離せなくなっていた。
「ジョン、気に入ったみたいね。かわいい子でしょう? いいのよ、この子はあなたのお嫁さんなんだから。あ、ちょっと待って」
母親は黒いゴムでできた頭部全体をおおうようなマスクを出すと、ぐったりしている少女にかぶせた。それは目も耳も口もすっぽりとおおうものだったが、鼻のところはあいているので、息をするのに問題はなさそうだ。
「さあ、これでいいわ。じゃあ2人だけにしてあげるわね」
そう言うと奇妙な笑みを浮かべながら、部屋のドアをバタンと閉めて出ていった。