ひまりプロダクション(15)
文字数 791文字
日毬の家の前は細い路地になっている。なんとか車一台が通れる道で、ちょうど玄関前でタクシーを停めてもらった。
日毬を降ろし、俺もタクシーを待たせて外に出る。
「楽しかったか?」
「うん。……こんな私のために、颯斗は気を遣ってくれたのだろう?」
「バカ言うな。少しでも嫌だと思ってたら、デートなんかに誘うわけないじゃないか」
「本当?」
不安げな表情で、上目遣いに日毬は俺を見上げてきた。
「ああ、もちろんだ。たまにはこうして遊びにいこうな。時間があれば、ちょっと遠出してみるのも良さそうだ。そのときは、日毬が言ってた京都にでも行ってみるか?」
日毬はうなずいただけで言葉を口にしなかったが、口元を震わせ、嬉しさをかみしめるように微笑んだ。
なんだ、可愛らしい笑顔ができるじゃないか。
俺は日毬の肩に手を置いて言う。
「ほら、今度の撮影は、今みたいな笑顔でな。写真でも映像でも、自然に出てくる表情が一番良く映るものだ」
「そうか……今みたいな……」
「明日から、俺ももっと頑張って、日毬の仕事を増やすように全力を尽くすよ。一緒に頑張ろうぜ」
「私の成功には、日本国民の安寧だけに留まらず、颯斗の人生もかかっていると今日知った。私は今まで以上に粉骨砕身 の努力をしていくつもりだ」
あまりに日毬らしい決意に満ちた挨拶に、思わず俺は笑いそうになった。なぜって、こんな若くて可愛らしい子が、あまりにも熱心に天下国家のことを自分の身のように感じているそのギャップが、微笑ましく思えたからだ。
しかしここで笑うと、日毬をまた怒らせてしまう。俺は笑みをかみ殺しながら、優しく声をかける。
「肩肘はらずに気楽にな。それじゃおやすみ」
「颯斗……ありがとう。それから、おやすみなさい」
礼儀正しくお辞儀をした日毬は、チラと俺を見やってから、家のなかへと戻っていった。
日毬を降ろし、俺もタクシーを待たせて外に出る。
「楽しかったか?」
「うん。……こんな私のために、颯斗は気を遣ってくれたのだろう?」
「バカ言うな。少しでも嫌だと思ってたら、デートなんかに誘うわけないじゃないか」
「本当?」
不安げな表情で、上目遣いに日毬は俺を見上げてきた。
「ああ、もちろんだ。たまにはこうして遊びにいこうな。時間があれば、ちょっと遠出してみるのも良さそうだ。そのときは、日毬が言ってた京都にでも行ってみるか?」
日毬はうなずいただけで言葉を口にしなかったが、口元を震わせ、嬉しさをかみしめるように微笑んだ。
なんだ、可愛らしい笑顔ができるじゃないか。
俺は日毬の肩に手を置いて言う。
「ほら、今度の撮影は、今みたいな笑顔でな。写真でも映像でも、自然に出てくる表情が一番良く映るものだ」
「そうか……今みたいな……」
「明日から、俺ももっと頑張って、日毬の仕事を増やすように全力を尽くすよ。一緒に頑張ろうぜ」
「私の成功には、日本国民の安寧だけに留まらず、颯斗の人生もかかっていると今日知った。私は今まで以上に
あまりに日毬らしい決意に満ちた挨拶に、思わず俺は笑いそうになった。なぜって、こんな若くて可愛らしい子が、あまりにも熱心に天下国家のことを自分の身のように感じているそのギャップが、微笑ましく思えたからだ。
しかしここで笑うと、日毬をまた怒らせてしまう。俺は笑みをかみ殺しながら、優しく声をかける。
「肩肘はらずに気楽にな。それじゃおやすみ」
「颯斗……ありがとう。それから、おやすみなさい」
礼儀正しくお辞儀をした日毬は、チラと俺を見やってから、家のなかへと戻っていった。