五 神無月/野狐②
文字数 1,135文字
さてその頃、野狐 の結人は山の中にいた。
神の邪魔が入らぬよう、神無月を狙って行動に移したと言うのに、まさか神に守護されているとは思ってもみなかった。今回の作戦は失敗、と言ったところか。
九尾をくゆらせ、野狐 は低い唸り声を上げていた。
どうしても欲しかったが、神々が敵に回ると言うのはかなり分 が悪い。ここは素直に引いておいた方がよさそうだ。
「ぐるる……」
結人は低く呻くと、人間の姿へと戻った。
「ただ諦めるだけでは惜しいと言うもの……」
結人はくるりと踵 を返すと、ゆっくりと学校へと戻っていくのだった。
学校へ戻った結人はあずさたちの姿を探した。
かなり時間が経ってしまったので、もしかしたらもう帰宅しているかもしれない。
一通り見て周り、あずさたちの姿が見えないことを確認すると、結人も学校を後にする。きっとあの喫茶店にいるはずだ。自然と足を速め、あずさたちのいるであろう喫茶店へと向かう。
喫茶店の扉を開け、中を確認する。いた。やはりここだった。
結人はゆっくりと二人の元へと近付くのだった。
奏とあずさは、とりあえず落ち着こうといつもの喫茶店へと来ていた。
「それにしても驚いたわ。あずさちゃんの守護をまさかツクヨミ様とアマテラス様が行っていたなんて」
「でも、奏の守護霊のお婆ちゃんも凄い人だと思うよ」
あずさは続けた。あの九尾の野狐 から奏を守ったのだ。それは凄いことだと。
「こっちの世界に無事に戻ってこられたのは、お婆ちゃんの力なんだから、感謝しないとね」
あずさはそう言ってにっこりと微笑んだ。可愛らしいその姿に奏もそうね、と返して微笑み返していた。
「こんばんは」
そこへ声を掛けてくる者がいた。
「結人くん?」
奏は声を荒げ、いつでも立ち上がれる態勢になる。あずさも鞄の中から天狗の団扇 をいつでも取り出せるような姿勢になっていた。
「やだなぁ、こんな所で事を荒立てたりしませんよ」
結人はいつものニコニコ笑顔で話をしてくる。
「その団扇 は、諦めます。ただし、あずささん。貴女 が死ぬようなことになったら、その時はその団扇 を貰い受けます。そのつもりで生きていってくださいね」
にっこりと笑いながらさらりと怖いことを言う。
「じゃあ、これからはもう狙ってこないって約束するのね?」
奏の厳しい声に、結人は微笑みながら頷いた。そこでに二人は警戒を解く。
「これからは、ただのクラスメイトです。あずささんがいつ命を落とすのかを見ておきます」
「やだ、ストーカーじゃない」
あずさの言葉に結人はくすくすと笑うと、それだけを伝えに来たと言って店を後にするのだった。
これにて、野狐 の急襲は何とか収まっただろうか。
季節はゆっくりと移り変わり、短い秋がまもなく終わりを迎えようとしていた。
神の邪魔が入らぬよう、神無月を狙って行動に移したと言うのに、まさか神に守護されているとは思ってもみなかった。今回の作戦は失敗、と言ったところか。
九尾をくゆらせ、
どうしても欲しかったが、神々が敵に回ると言うのはかなり
「ぐるる……」
結人は低く呻くと、人間の姿へと戻った。
「ただ諦めるだけでは惜しいと言うもの……」
結人はくるりと
学校へ戻った結人はあずさたちの姿を探した。
かなり時間が経ってしまったので、もしかしたらもう帰宅しているかもしれない。
一通り見て周り、あずさたちの姿が見えないことを確認すると、結人も学校を後にする。きっとあの喫茶店にいるはずだ。自然と足を速め、あずさたちのいるであろう喫茶店へと向かう。
喫茶店の扉を開け、中を確認する。いた。やはりここだった。
結人はゆっくりと二人の元へと近付くのだった。
奏とあずさは、とりあえず落ち着こうといつもの喫茶店へと来ていた。
「それにしても驚いたわ。あずさちゃんの守護をまさかツクヨミ様とアマテラス様が行っていたなんて」
「でも、奏の守護霊のお婆ちゃんも凄い人だと思うよ」
あずさは続けた。あの九尾の
「こっちの世界に無事に戻ってこられたのは、お婆ちゃんの力なんだから、感謝しないとね」
あずさはそう言ってにっこりと微笑んだ。可愛らしいその姿に奏もそうね、と返して微笑み返していた。
「こんばんは」
そこへ声を掛けてくる者がいた。
「結人くん?」
奏は声を荒げ、いつでも立ち上がれる態勢になる。あずさも鞄の中から天狗の
「やだなぁ、こんな所で事を荒立てたりしませんよ」
結人はいつものニコニコ笑顔で話をしてくる。
「その
にっこりと笑いながらさらりと怖いことを言う。
「じゃあ、これからはもう狙ってこないって約束するのね?」
奏の厳しい声に、結人は微笑みながら頷いた。そこでに二人は警戒を解く。
「これからは、ただのクラスメイトです。あずささんがいつ命を落とすのかを見ておきます」
「やだ、ストーカーじゃない」
あずさの言葉に結人はくすくすと笑うと、それだけを伝えに来たと言って店を後にするのだった。
これにて、
季節はゆっくりと移り変わり、短い秋がまもなく終わりを迎えようとしていた。