第2話「奇妙な自動販売機」

文字数 861文字

バスに乗ると中には僕ら2人と
運転手以外には誰もいなかった。
僕がお金を払おうとするとトカゲが
「いらないよ。このバス、無料だから」
と言った。
僕は乗り物酔いをしやすい性質なので
一番前の席に座った。
トカゲは僕のすぐ後ろの席に座ってきた。
バスの扉が閉まる。
ぶるんぶるんと震えてバスが発車した。
外を見るとお店の看板の光が
ぐいんぐいんと伸びて過ぎ去っていく。
綺麗だな、なんて思いながら
ぼんやりと僕は眺めていた。
こんな怪しいバスに乗ったというのに
不思議と怖いという気持ちは無かった。
それどころか、なんだかゆったりとした
穏やかで安らかな気分だった。
トカゲが「夜景、綺麗だね」なんて
月並みなことを言ってきた。
「うん」僕はぼんやりとしたままに返事をする。
「次は無階、無階」
バスのアナウンスが響き渡る。
トカゲが停車ボタンを押す。
「もう、降りちゃうの?」僕が聞くと
トカゲは「次の停留所の所に
面白い自動販売機があるんだ、だから降りよう」
と言った。
バスが止まり、僕たちは降りた。
ピリピリと頼りなげに
光っている自動販売機がそこにあった。
ラインナップを見ると
「血液ジュース」
「氷河期ソーダ」
「悪魔のコーヒー」
「飲む地獄温泉」
「B級おしるこ」
「蜂の巣紅茶」
「宇宙の油」
「100年の青汁」
「幻覚きのこ牛乳」
など、怪しすぎる飲み物ばかりが
売っていた。
「ね、面白いでしょ」
「・・・面白いけど、飲む気に
なれないものばかりだね」
僕が言うとトカゲは
「いや、意外とイケるよ」
なんて言ってきた。
僕はとりあえず、「宇宙の油」という名の
飲み物を買ってみた。
ガコンと乱暴な音がして
飲み物が出てきた。
飲んでみるとぬるくて何も味がしなかったが、
空を見上げるといつもより夜空が綺麗に感じた。
「星が、いつもより綺麗に感じる」
僕がつぶやくと、
「宇宙の油だからね、星が綺麗に見えるんだ」
とトカゲが言った。
僕はぼんやりとしながら、このままずっと
夜空を眺めていたいと思った。
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登場人物紹介

名前:ムジナ

主人公の少年。よく幻覚を見る病的な少年である。

名前:トカゲ

主人公の幻覚の少年。よくしゃべる少年である。

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