09 少女ニュートン、師匠を得る
文字数 3,438文字
「『
「ふぇふぇーっ! パパの名前、『
とにかくめでたいことだ。
三人はこぞって、弟の誕生を「姉」へ祝福した。
「ところでこの字はミサホちゃんが書いたのですか?」
真昼は半紙の文字をまじまじと見つめながら、そんなふうに
「パパでえす!」
ズシャオラアッ!
「ふぇふぇーっ! これが
「それはちょっと、意味が違うのでは……」
星彦は
「ホシヒコくん! 細かいことは言いっこなしだよー! 薄毛になっちゃうよー、ウスゲーションだよー!」
「薄毛、うーん……」
テンション・マックスの少女に、星彦はますます困った顔をした。
「そうだ! 今日、学校が終わったら、みんなで征吾を見にいきましょう! とってもかわいいんだよー!」
美咲穂はこのように提案した。
「いいね! ミサホちゃんの弟くん、ぼくたちも見てみたいよ!」
「ふひひ、ぜひ案内をお願いします」
星彦と真昼はがぜん乗り気だ。
「でもそういうのって、特別な
可南はちょっと心配そうだ。
「ふえっ! カナちゃん、それなら大丈夫だよー! ママと征吾がいる病院には、パパのお
「ふしゅしゅ……」
「社会はコネクションが最強なんだわよー」
「ふしゅる、
小学生にして大人の世界をわがものとしている美咲穂に、可南は少し
このようにして美咲穂を筆頭とする科学っ子ご
*
「ママの病室はえーと……あっ、みんな! ここだわよー!」
四人が病室に入ると、
病室は個室で、この病院ではいちばんいいタイプのものだった。
ここにもやはりコネクションの力が働いているのだったが、そこまではさすがに小学生には
「ママー、遊びにきたよー!」
「ぬう、キャリバンめ! ついに
「ふえー、ママったら! また宇宙戦隊キャリバンが乗り移ってるのー!?」
美咲穂はゲラゲラと笑っている。
いっぽう残る三名は、この異様な事態にたじたじになっていた。
「ママー、紹介するよー。小学校でできた友達のカナちゃん、マヒルちゃんと、ホシヒコくんだよー」
「キャリバン・ブラックがおらんではないか。ふん、おおかた最強幹部マグマ・イプシロンの手にかかり、敗北したのであろう? 残る四人で何ができるというのかな? 五人そろわねば打つことのかなわない、キャリバン・エクスプロージョンを使うことはかなわんぞ? バカどもめ! 宇宙戦隊キャリバン、破れたりいいいいいっ!」
この
この母にしてこの子あり――
一同はそう思った。
「ママっ! つべこべ抜かさず、征吾を見せなさい!」
「お? お、おう……」
美咲子はしゅんとして、『
「わあー、かわいいよー」
「ふしゅる、おサルさんみたいだわー」
「ふひ、生物学的な事実とはいえ、実際に見ると興味深いですね」
星彦、可南、真昼の三人は、美咲子の横で眠っている赤ちゃんに夢中になった。
「ミサちゃんったら、こんなに素敵なお友達ができたのねえ。みなさん、ミサちゃんと仲良くしてあげてねー」
憑依から目覚めた美咲子は、こんなふうにあいさつをした。
「ふひひ、おかあさま、ミサホちゃんはたいへんなリーダーシップをお持ちです。さすがは
真昼がそう切り出したので、美咲子は驚いた。
「まあ、マヒルちゃんは、パパのことを知っているのー?」
「ママ、マヒルちゃんは
「まあ、それなら
きなくさい
「
「ふぇふぇー、マヒルちゃん! そんなのワシントン条約が
「ミサホちゃん、極龍の前では法規など存在しないも同然であって――」
このようなヤバい会話を三人でしているものだから、可南と星彦はいよいよ冷汗が垂れ流れてきた。
「失礼します」
うしろからした女性の声に、全員が病室の
「あっ、
彼女は例によりシックだが上品なかっこうで、手にはお見舞いの
「おかあさま、その後、お具合はいかがですか?」
「まあ、先生。そんなことお気になさらなくてもよろしいのに、わざわざ来てくださったんですね。さあどうぞ、こちらへ」
その前に立っている美咲穂以外の少年少女たちのことが、理砂にはすぐ目に入った。
「みなさんは、ミサホちゃんのお友達ですか?」
「そうなんです先生。同じクラスの、ホシヒコくんに、カナちゃんに、マヒルちゃんです。みんな科学が好きなんですよ」
「まあ、それはそれは」
「みんなで科学クラブを作ろうと思ったんですけど、クラブを作れるのは四年生になってからということで、困ってたんだよねー」
こんなふうに美咲穂は
「ふむ、なるほど……」
理砂は
「それについてなんですが、ミサホちゃん。あなたのおとうさまに申し出たのです。わたしにぜひ、あなたの、いえ、あなたたちの家庭教師をやらせてもらえないかとね」
一同は目を丸くした。
「そんな、先生、よろしいんですか? 先生にもご都合がございますでしょうに……」
美咲子は申し訳なさそうに聞き返した。
「いえ、ご心配にはおよびません。これはあくまで、わたしの意志によるものですから。それに、その子たちはなかなか『センス』があると感じますしね」
美咲穂たちはいっそう目を丸くして喜んだ。
「や、やったー!」
このようにして、少女ニュートンをはじめとする科学の申し子たちは、『