1 俺のひとりごと。人生という名の道

文字数 1,301文字

俺のひとりごと。


生きるのって面倒くさいよな。考えるべきことばっかり、あれこれあり過ぎるんだよ。たまには息抜きさせてくれ。束の間でいいから、幸せだけを感じさせろ。


この人生という道は曲がりくねってばかりで先が見えにくく、太陽は雲に隠れて肌寒い。この先もきっと、ずっと同じに思える。

下り坂が多いから、安全な場所まで戻ろう。そう願うのに、引き返すことを許さない一方通行の道なのだと気付かされただけだった。

戻れないなら、いっそ道を壊そうか。後ろの道も、前の道も。下り続け寒さに耐え続けるよりましだろう。

そんなふうに諦めかけたとき、思ったことがある。

『下り道にはもう飽きた』 

下り道に下限はない。引き返すことはできない、上ることも難しい。ここではないどこかへ行けないのなら、ここではないどこかをここに作り出すのはどうだろう。考えるべきことを考えることに飽きたから、道を舗装することを考え始めた。

暗闇。ここは俺のいるべき場所じゃない。いたい場所でももちろんない。疲弊ばかりする環境に身を置き続けること、それは辛抱とは呼ばない。去ることは弱いことじゃない、持って然るべき選択肢だ。「逃げるのか?」だと?これは俺の人生でありあなたの意見など聞いていない、勝手に言ってろ。「辛いならそうと言ってくれればよかったのに」だと?もう遅い、勝手に言ってろ。野暮な外野の声はもう気にしない。

自分のために言うべきことを腹の底に引っ込めて、代わりに痛々しい作り笑いを届けるなんて二度としない。周囲との調和を大切にしながら、同時に、自分の声と心を守ることは可能だ。その匙加減はこの下り道の途中で十分なほど経験を積んできたと、自信を持って言える。

外野が定義した幸せの道は、必ずしもみんなの幸せの道ではなく、無論俺の幸せの道でもなかった。そこと比較して悲嘆に暮れるのはもう飽きた。
幸せは待ってもこない。十分過ぎるほどにそう学び、理解した。だからもう待たない。俺なりの、俺らしいサイズで、俺好みのカタチをした、幸せの中身を作っていこう。その方が、きっと楽しい。

目の前の、どうしようもない現実。努力しても報われない日々。そこに向き合い続けた結果、決めたことがある。

『これからは俺に優しい世界を生きる』

それを実現させるために一大決心は要らなくて、巨額な投資も、強力な協力者も必須事項ではない。必要なのは、決めることだけ。あとは心が勝手に俺に優しい選択肢に反応していってくれる。経験を重ね、感度の高まった心が真実を見抜いてくれるだろう。

これからは、理不尽な人、嘘をつく人、無理強いする人、綺麗事ばかりいう人に出会えば俺の直感という名の検問に引っかかるだろう。努力を評価しない環境も、責任を押しつけあう環境も、この嗅覚で見抜けるだろう。人生経験に支えられた感覚のおかげで、これからは協力的な人々とともに互いを尊重し合い、過度な無理とは無縁な環境を選び、通りたい道を歩んでいけるだろう。

下り道の道中、その全てが布石だった。


涙を我慢するのはもうやめだ。


孤軍奮闘はもう不要だ。


犠牲者の道はもう終わりだ。


今夜は月が綺麗だ。早速それも、幸せの中身に詰めておこう。

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