第19話 思い出すこと

文字数 364文字

「この人(90歳位)はネガティヴだから、前向きに接して下さい」
 その人は、いつも何かを探して歩き回っていた。一緒に歩きながら、声を掛ける。「見つからない?」
「うん…。どうしたらええんやろ」と、その人が言う。
「なあ。どうしたらええんやろなあ」と、私が言う。
 沈黙。
「心配?」私が聞く。
「…」その人は答えない。
「心配だねえ」私が言う。
「…いやあ、そんな心配でもないんだけど」と言って、その人は可笑しそうに笑った。
 だが、この私の接し方は、「前向きな」ものではなかったのだ。
「ふたりで考え込んでどうするんですか!」
 こちらの様子をうかがいながらコンピュータに向かっていたリーダーに注意されてしまう…

 しかし、おかしいよ。
 あんな人手不足、ほんとにおかしい。
 自分で自分の首、しめてるよ。
 辞める人が多いのは、給料のせいだけじゃないよ…
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