62・あとがき

文字数 2,151文字

とくに信仰心のない、
一般的な価値観をもつ現代の人間が聖書の世界に放り込まれたらどうなるか…。
それが、この物語の主なテーマでした。

こういう状況に巻き込まれたら、現代とは違った過酷な
当時の社会状況を目の当たりにして、多くの人はそれを変えようと
イエスキリストのように行動する事になるのではないでしょうか。

しかしそうする事によって、歴史にあった通りに
パリサイ派、サドカイ派と対立する事になって、
結局現代の常識通りに動こうとするだけで歴史上のイエスキリストのように命がけになる…
こういった状況を描くのもテーマの一つでした。

なぜこういった状況が生まれるのか。
それはイエスキリストが広めた博愛の精神が、
現代では特に信仰心のない人の中にすら共通の常識として備わっていて…
そういったものを描くのもこの話のテーマでした。

現代の日本では、多くの人が宗教というとうさん臭さを感じ
さらに宗教は戦争の元だという意見もあったりして
とかくマイナスの面ばかりが強調されがちです。

しかし、現在のメジャーな宗教は人に道徳を訴えるもので、
悪いのは人の悪心、原罪が原因で宗教的そのものが悪というわけではない…
そういった、宗教や信仰に対する誤解を少しでも解きたいな、と思ったのも
この物語を書こうと思った大きなきっかけです。

そして聖書ラノベ新人賞の募集があった時に、そんなテーマを盛り込んで
ラノベとして軽く読んでもらおう、有名なエピソードを紹介する形にして
これを読んだ読者が本当の聖書を読んでみるような形にしよう、
それでラノベと言えば美少女だろ…それじゃ12使徒を美少女にしてと
キリスト教徒でもない自分が安直な思いつきで書き始めたのが本作です。

しかし、聖書をラノベにするのは思った以上に困難でした。
イメージとしてはもっと軽く書き上がる予定でしたが、やはり聖書の物語は本来悲劇的なもので
ラノベとして読みたい人には重たく、かといって真面目なキリスト教徒の方には
不遜で不敬な話で…と結局誰も読まないんじゃないか?と書き始めてから何度も思いました。

しかし、折角手をつけたんだからと途中何度も挫折の危機を迎えながらも
読んで下さった読者の方々のお陰で、
こうして何とか最後まで書き上げる事ができました。

次回作を書くとすると、現代に転生してきた11使徒に主人公が
現代社会を説明しながらこの世界でみんなが生きていく方法を探るとか、
主人公と11使徒の認識のズレから生じるドタバタを描いたりする
今度はラノベ色が強めの短めの作品になりそうですが、今の所執筆予定はありませんね…

今後の予定ですが、本作品で手直ししたいなと思う箇所がいくつかありましたので
そこをちょいちょい直したり、
折角こういう作品を発表する場に縁がありましたので
ショートショートとか色々書いてみようかなと思っています。

そして、本作を書いてる最中は楽しくもあったんですが、同時に恐ろしくもありましたね…
聖書にまつわる物語に没入していると神経が過敏になるのか、
それとも何かを引き寄せるのか、ちょっとした偶然が妙に気になったりします。

特に物語中で最後の最後、
モレクの司祭が主人公の墓を調べるその場面を書いて公開した翌日に
フランスのノートルダム大聖堂が炎上するという大きな事件が起こりました。

幸い死者もなく、建物や収蔵されていた聖遺物や美術品や十字架、
歴史ある有名なステンドグラスのバラ窓などほとんどは無事だったようでこれにはひと安心しました。
この事件に大きなショックを受けられた方々、心中お察し致します。

そして、これは自分にとってはとてつもなく大きな、ショッキングな出来事でした。
まさかキリスト教徒でもない自分が十二使徒を美少女にしたこんな不敬な小説を書いてるから
神がお怒りをお示しに…と、思わず自分の作品との関連を考えてしまいました。
読んでくれていた方の中にも、そう思われた方もいらっしゃったんじゃないでしょうか。

さらに本作は歴史ものも意識して書いていた作品なので、
作中には歴史という単語が頻出します。

そしてノートルダム大聖堂が炎上している最中、
テレビやネットでは歴史ある教会が、850年の歴史を持つ建物が、
歴史が、歴史がとまさにその単語が飛び交い死にそうな気持ちになりました。(2週間は胃が痛かった)

その他にも色々関連あるようなそうでもないような、どっちかわからない
面白い符号も見出した気になったり、つい色んな考察をしてみたり。
なかなか不思議な経験だったので、これについては
後日レポートのような形にまとめて発表したいと思います。


さて、長くなりましたが最後に。
本作品はキリスト教を始め、現在あるいかなる宗教も茶化したり、
貶めたりする意図はない事をここに明記しておきます。

また、本作品はキリスト教を始め、
その他いかなる宗教への入信を進める目的で書かれたものでは
ない事を記しておきます。

そして、こんな拙い文章の作品を最後まで読んで下さった方々。
その方々には、本当に感謝申し上げます。
皆さんに、よい事が訪れますように…

それでは。
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