第10話 榛名春奈、倉庫内作業中③

文字数 1,230文字

自らを縛る鎖(ためらい)を断ち切り、ついに当真は動き出す。

「ええいっ! ままよっ!!」

「おーい…私の声、聞こえてる?」

離れかけていた両腕に力を込める…興奮状態にある当真には、もう相手(はるな)の声など耳に入らない。そして彼はそのまま高らかに、自らが頼みとするスキルの名を叫ぶ。

「認識阻害全開!!!」

「もう、一体何なのよ?」

ずっと、抱き付かれたままの春奈が呆れる中、異変は起こった。

「なっ!?」

…ぞわり、とした感覚が彼女の背中を走り、場に起こった異状を知らせてくる。そのただならぬ気配に、警戒心を呼び起こされた春奈は、一気に全身を緊張させた。


『ピピッ、榛名春奈からの抵抗運動(レジスト)を確認。対象の抵抗値を算出、問題無し、続行可能と判断…スキルの連続使用が選択されました』


だが、そこまでだった…続け様に放たれる波動(スキル)が彼女の心身を強く干渉(ゆら)し、認識をズラし始める。そして、春奈の意識に空白が作られた。

「………えっ!?」

数瞬遅れての反応、このスキルの対象者は心の働きが鈍り、何をするにも後手後手に回ってしまう…。

「うおりゃーっ!」

後ろから聞こえてくる当真の叫び声。彼女には、それがやけに遠くに聞こえていた。

「…?…?…?…?…」

なんの抵抗も出来ず、スキルの効果に捕らわれてしまった春奈。彼女は小さく声を上げる。

「…あっ…」

そうしている間に、認識阻害は更なる段階へと進んだ。

「こ…れは…?」

倍以上のレベルの開きが、スキルの効力を決定付ける。

「何が…起きているの…?」

そして、榛名春奈は精神汚染ともいえる、チート級のスキル効果に晒されてしまう。

「…あ…れ…」

「…あ…ぁ…」

春奈が掠れそうな声で、小さく悲鳴を上げていた。その声を聞きながら、シテやったり! とばかりに、当真は口元に薄ら笑いを浮かべる。

「へへへっ…さあ、いよいよだ」

システムの助けを借りて、戸惑いを掻き消した当真。凄まじい速さで、場面が転換していく中、彼は(ほんのう)のままに次なる一手を放っていた。


『ピピピッ、サポートスキルの要請(コール)を確認。剥ぎ取りの(イチ)()(サン)を連続使用、対象への領域展開を完了…AIハルナ1型、模擬戦(シュミレーション)を開始します…戦力不足です、魔法の手(マジックハンド)×4が追加されました…』


EX職業(ジョブ) AV男優と連動(リンク)したシステムが局面を読み切り、当真の童貞解除(AVデビュー)へ向けて高速で答えを弾き出してゆく。

全箇所異常なし、安全確認完了(システム・オールグリーン)。これより、榛名春奈・強襲丸裸(ストリップ・ハルナ)一気呵成(すっぽんぽん)モードへ突入します』


熱き血潮をぶつける前に、まずは衣服を脱がして丸裸にする。水森当真(カレ)榛名春奈(せんせい)に対して、本気でセクロスを挑む覚悟(つもり)だった。

「スキル、弾外(ボタンはずし)…!!!」

「…!!!?」
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登場人物紹介

【水森 当真《みずもり とうま》】


本編の主人公 (12)。特に目立った長所もなく、ただ単に溢れんばかりの若さを持っているだけのスケベ小僧。クラスでも埋没気味《モブ》な生徒の一人。

【榛名 春奈《はるな はるな》】


メインヒロイン(22)。今年の春に、私立水上学園中等部に赴任した新任の女性教員。そして、周囲から爆乳と称される程の大きな乳房の持ち主。


活発で人付き合いも良く、身体を動かす事が大好きである。その一方、漫画・小説・アニメ・ゲーム等の在宅趣味も嗜む。娯楽消費者として、インもアウトもバランス良くこなす性格をしている。


また、幼少より道場に通い詰めて、武芸を学んでいた。その影響で、非常時には物事をシビアに捉えるクセがあり、常人より一歩も二歩も見切りが早い。


突如現れた、モンスター達を相手に立ち回り、彼女は強力な職業《ジョブ》とスキルを取得する。その力を使い、生き残った生徒達を守ろうと奮戦する。

【絵堂沙織《えどうさおり》】


4月生まれの23才。私立水上学園中等部に勤める新任の女性教員。榛名春奈とは同期。185センチという見上げる程の高身長を誇る女性。


異世界転移前は、長身巨乳のお姉さんとして男子生徒から人気を博していた。それゆえに、彼女は当真の対戦相手として候補に上がっている…が、それはまだ先の話。


鎧袖一触を好み、テクニカルな春奈とは真逆の戦闘スタイルを得意としている。その恵まれた体格でもって、鬼に金棒という大型武器を操り、敵を一撃で粉砕する生粋のパワーファイター。

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