2、ネタとキャラクターのバランスって?

文字数 5,545文字

2日目以降の質問、1日目の質問へのお礼などはこちらにお願いします。


21日の座談会のメイン会場もこちらになります。


10時からスタートです

さて、10時になりましたので、本日も八鷺先生よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします!

ゲストのチョイス本当に間違ってませんか? 大丈夫ですか??

自信を持って!!
自信を持ちました!!
(回復が早いw)

さて、昨日は4コマギャグについてのお話がメインだったと思うのですが、今現在連載されている「俺のアヤカ」はショートギャグ漫画ですよね?
4コマからショートギャグに行かれた遍歴などってお教えいただいてもよろしいですか?

そうですね…ちょっと段階的な話になりますが。

昨日は感情と失敗の話をしていたと思うんですが、ギャグ4コマを描いていた頃はどちらかというと失敗の方にウェイトがありまして。


轢かれる君」って作品を以前描いてたんですが、これは車に轢かれるっていう面白い失敗の中で、キャラクターがどう感情を動かすかを意識して作っていました。

(毎回、車に轢かれる話ってすごいな……)

爆発オチみたいなものですよね。一度面白い絵面のパターンが出来たので、あとは全部それをやっちゃえばいい、みたいな。


ギャグ4コマ、特にネタに重心のあるギャグ4コマだと、ギャップの面白さとか失敗する面白さを笑うものだと思うんですが、徐々にネタ中の感情の出し方に面白味を感じるようになっていったんですね。ウェイトがずれてきて、結局人間が一番面白がるのは、人間の感情なんじゃないかって思うようになりまして。

特に感情の余韻の出し方といいますか。萌え4コマとかを見ているとそれの作り方が上手で。

それが、ギャグよりもキャラクターに興味が出てきた、という話に繋がるんでしょうか?
実際、いわゆる萌え4コマなんかはネタよりは、キャラクターの可愛らしさや感情でできている気が私もしてました。
というよりも、そのうちにギャグよりもキャラクターをやらざるを得なくなった、という感じですかね。感情を描こうとすると、単発のキャラクターよりも連作のキャラクターで複数4コマを描いた方が絶対的に表現の幅が広がるので。

萌え4コマは可愛らしさと感情に特化してますよね、すごい。

なるほど、その感情を出すための複数の4コマ漫画の連続が、最終的にショート漫画に繋がっていったんですね。
そうですね。結局のところ、4コマだとコマが足りなくなってしまったんですよね。

感情の余韻を出すのって、間を使うのが効果的だと思うんですけど、それだったら1P漫画とかショート漫画のコマ割りの方ができそうなこと多いなって感じまして。


ネタ4コマの方では車で轢くネタが個人的に一番面白くなってしまったので、経験値を上げるにはキャラ4コマなり、キャラ漫画をやっていこうという流れでした。

ショート漫画に移るにあたって、発表や練習の場を移すことになったと思うんですが、そのあたりはどうされたんでしょうか?
これも仲間内で1P漫画を見せ合う企画があったのでそこに参加したり、あとはキャラクターを作ってみて、ツイッターで1P漫画の連作を発表してみたりしていました。あとはそれを本にまとめてコミティアにも参加しましたね。
おお、八鷺先生もコミティアに! やはり、コミティアはデビューする作家さんだと、結構、参加されている率高いですね。出張編集部にも行かれたんですか?
出張編集部、存在は知っていたんですけど実際にそこに行くまでけっこう時間かかりましたね。当初はプロ志望じゃなかったので、自分が行っていいものなのか…みたいなブレーキが掛かってしまって。でも実際に行ってみたらめちゃめちゃいい経験になりました。
実際、どういう体験をされたのか、うかがってもよろしいですか?
編集さん、という職種の方々と会話できたのがまず一番大きかったですかね。ちょうど仲間内で一緒にやっていた人たちが次々と賞を取ったり担当さん付いたりデビューしたりという時期だったので、触発されていたと思います。商業サイドの方々が漫画を作るときに何を考えているのか、というのがちょっとでも理解できたのが面白かったです。
確かに編集さんと話すことで、初めて分かる知識だったり、経験だったりはありますね。プロの世界の末端に触れるというか。
いやー本当にそうですね。その場でメモ書きして、後々にまとめ直したりしてました。読むスピード早いのにダメ出しがめちゃめちゃ的確で凄かったです。ちゃんと緊張もしましたし。

出張編集部で聞いた話で、記憶に残ってるのが二つありまして、一つは「悪目立ちしないとデビューできない」っていうやつでした。まさしくそうだなぁと思いました。

「悪目立ち」なんですね。普通に「目立つ」では駄目なんですか?
どうなんでしょう、普通に目立ってもいいとは思うんですけど…。ですが主旨としては、あえて悪い部分を作るということではなくて、悪い部分や足りてない部分があったとしても、それでも何か突き抜ける部分があった方がデビューに繋がりやすい、ということだと思います。
尖った部分というか、読者の心に良いにしろ悪いにしろ、何かを残せる作品でないといけないということですね。それなら、良く分かります。
何かを残したい~~!

もう一つは、これは少し前置きが必要な話なんですが…。たしかこの時にはもう感情ネタにシフトしていて、男女がイチャイチャするタイプの4コマ漫画を作って見せていたんですね。その時にいただいたコメントで、「読む人は疲れた状態で漫画を見ているんだから、そこにノロケみたいな自慢話を読ませてしまうとあまり良くない」っていうやつでした。こっちはその通りだなぁと思う反面、そうかなぁと反発する思いもありまして。

反発?! なんとなく、八鷺先生の普段のお人柄から考えると、ちょっと驚くお話ですね。

その頃までは人に貰ったアドバイスは全部消化してやろうくらいの気持ちだったんですけど、そこで反発してしまった自分が面白くて。自慢話はともかく、ノロケ話そんなに面白いって思ってたんだ、みたいなところに改めて気付くきっかけになりました。


それまでは面白いと思ったものをだいたい言語化してメモにまとめていたんですが、元々面白いと思っていたはずのノロケ話は、こう、何が面白いのかあんまり明確に言えなくて。でも面白いという確信だけはやたらあるんだなと。

ノロケ話の面白さって、お聞きしていても良く分からなくて、でもそこから生まれた「俺のアヤカ」はすごく楽しく読ませていただいているので、まんまと八鷺先生の面白いと思うポイントにはまっている感じです。
ノロケ話、何が面白いんでしょうねアレ。みんなしてますし。でも超面白いですよね、困る~~。

『俺のアヤカ』については、ノロケ話が自慢話になりきらないように、担当さんとしっかり相談しましたね。うまくいっているといいなぁ…。

お疲れ様です、たくじです!


八鷺先生は理論的でアイデアの引き出しが

とても多いと思うんですが、

そのために普段から習慣にしていることって

ありますでしょうか?

後天的に身につくものなら是非参考にさせて頂きたいです

やさしい世界を垣間見れるのがいいのかもですね。

今、担当さんの話が出ましたが、昨日、「あしたのヤングジャンプ」の話に少し触れましたけれど、実際、担当さんがついて、「俺のアヤカ」でデビューするまでどういう感じだったんでしょう?

たくじ先生、ご質問ありがとうございます!


> そのために普段から習慣にしていることってありますでしょうか?


最近は引き出しが増やせてないので、少し前の話になるんですが…

生活の中で面白いと感じたことについて、どういう原理で面白かったのかを自分なりに言語化してメモしておくのが多かったですね。(「勧善懲悪の過剰適応」とか「全力」とか)

あとはインターネットや本が凄くて、そこに引き出しに繋がりそうなことが書いてあるので、それも参考にしています。(ネタ出し方法、マンガの描き方、とかで検索しています)

あとは思い付いたときに、スマホのメモ帳に色々と残すようにしています。あまりに自分なりがすぎて、他の人に伝えても全然理解されないことが多いです!

お答えいただきありがとうございます


>生活の中で面白いと感じたことについて、

どういう原理で面白かったのかを自分なりに

言語化してメモしておくのが多かったですね。

(「勧善懲悪の過剰適応」とか「全力」とか)


なるほど、やはり日常の面白の分析、言語化の

シークエンスは癖にしといた方が良さそうですね

ネットの方も色々検索してみます!


>スマホのメモ帳に色々と残すようにしています。

あまりに自分なりがすぎて、

他の人に伝えても全然理解されないことが多いです!


これは自分もよくやってるんですが、

たまになぜ自分でもメモったか謎のワード出てきますw

デビューまでは、そうですね…。

昨日すこし触れましたが、「あしたのヤングジャンプ」はサービス開始当初からお題部門に投稿してまして、1P漫画の部門でまず一度金賞をいただいて。

それが本誌にも掲載していただけるとのことで、その原稿のやり取りを編集さんとしたのですが、その時にたしかネームを送ってもいいという話になったので、イエーーーイ! という感じでネームもネーム以外も色々と送り付けていました。


ちょうど周りの躍進もあって、編集さんという職種の方とアクセスを取りたいと躍起になっていた時期だったので、このチャンスを逃してなるものかっていう感じでしたね…。

私も「あしたのヤングジャンプ」は見ていたんですが、キャラクター性に寄った作品が賞をもらっているイメージがありました。そこが、八鷺先生がおっしゃっていたネタとキャラクターのバランスの話につながりそうですね。

「あしたのヤングジャンプ」はネタよりもキャラクターや企画性が重視されるそうなので、実はその点でそこまで相性良くなかったみたいです。

僕の場合はギャグ4コマの時の手癖がそのままだったので、ネタを重視する癖が全然抜けてなくて、大喜利的にとにかく1Pで面白いと思うものを出したんですが、そこから次に進むにはハードルがあったみたいで…。『俺のアヤカ~』も最初から連載化の話が来たわけではなかったです。

ネタが強すぎるとキャラクターの幅を狭めるといいますか、ちゃんとキャラクターを考えてネタをやっていなかったので、次にどう繋げるのか苦労しました。

かなりのご苦労があったんですね。そこから、魅力的なキャラクターを作る方向へブレイクスルーするきっかけって何かあったんですか?
まだ苦労してます! キャラクター動かすの本当に難しいので…。

きっかけというか、編集さんにネームを送れる!っていう段階になったときに、そもそもネームが全然描けなかったんですよね。それどころか送るたびにどんどん描けなくなっていって。短いネタは出るんですけど、それをキャラクターの魅力が出るように自然につなげるのが難しかったというか。ネタだけが先行しがちで。

ほうほう。

キャラクターの前にネーム描けるようになりてぇ~、と嘆いてたときにコミティアのチラシで見たネームタンクを受講しまして、きっかけといえばここがきっかけですかね。あまり書けないですけど個人的には方法論がうまくハマってネームが描けるようになり、そこで後々にかみん先生と出会い…

そうですね。ネームタンクきっかけで、八鷺先生とも仲良くしていただけるようになって、とても感謝しております。はじめてお会いしたときには、『この人、めっちゃ頭いいなー』って思いましたw ネームタンクが八鷺先生の作劇の一助になっているのでしたら、こちらとしてもとても嬉しいです。
そこで出会ったのが、この健康青汁! ハイハイしていた赤ん坊が、今ではスキップで都庁ビルを飛び越えるように!


こちらこそお世話になりまして! 描けない状態をなんとか脱して、少しずつキャラクターと企画を考えられるようになりました。

そこから連載になりそうな企画を5本分くらいテキストにまとめて送り付けていたんですが、その時に『俺のアヤカ~』の元になった1P漫画を見直して、自信なさげに付け足しておいたのが次に進み…(というか他の5本が没になりました。)

青汁関係ない?! というか唐突にきましたね、八鷺ギャグがw
やっぱりキャラクターを作る経験値が浅かったので、そうそう上手くはいかなかったところ、振り返ってみたらキャラクターが強そうな漫画を先に出していたので、そこから掘り下げてみた感じですね。

色々と見直して、6Pのネームを4本作って送ってみたら意外と感触が良かったので、そこから話が進んでいった感じです。なんというか…、物量と執着で連載までこぎつけた感じです。

後々聞いてみたところ、文章ばっかり送っていたので読むのがかなり大変だったそうですが…、なにかしら材料になるものを継続的に送っていたのは印象が良かったそうです。今になって、やっぱり絵とかネームで検討材料を送るべきだったと反省しています。
なるほどです。継続は力なり、はちょっと意味が違いますが、編集さんは努力できるかどうかというのも見ていると思うので、それがきっちり効を奏した感じですね。
やはり、八鷺先生は努力家でいらっしゃいますね!
といったところで、本日の座談会はお開きにさせていただきます。
続きは

明日22日の午前10時から再開いたします

のでよろしくお願い致します。


それまでも、

質問など随時受け付けておりますので皆様よろしくお願い致します。

きりも良いので
このエピソードはここで閉じて最終日はつぎのエピソードで行います。
質問等もそちらでお願い致します。

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登場人物紹介

森脇かみん


漫画家。『東京ネームタンク』ネーム相談講師。


web、アプリ漫画「サイコミ」にて医療漫画「サブカルメディカル」でデビュー、連載。

連載終了後は企業案件漫画など。その他、漫画連載を企画中。

某医大医学部を中退し、漫画家になるため上京した過去を持つ。

医療知識があるので、その方面の質問に応えることもある程度可能。

日本シャーロック・ホームズ・クラブに所属する程度にミステリ好き。

八鷺一郎(やさぎいちろう) 


Web漫画家。 

インターネットで漫画を発表していたところ、4コマと1ページ漫画の部門でWebの賞をいくつか獲得。 現在は、となりのヤングジャンプ(集英社)にて

「最高は俺のアヤカ 俺のアヤカは最高」

を連載中。本作で商業デビュー。


Twitter @yasagi

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