第9話:日航ジャンボ機墜落事故1

文字数 1,729文字

 1985年8月12日、日航ジャンボ機123便が、群馬県の御巣鷹山に墜落、女性4人生存、乗客乗員520人死亡、世界最大の航空機事故が起きた。残っていた音声は、操縦席と客室乗務員とのやり取りだった。18時24分頃、伊豆半島南部の東岸上空「静岡県賀茂郡河津町付近」を巡航高度24000フィート「7300メートル」へ向け上昇中。

 その後、23900フィートを通過した時、衝撃音が発生し、客室高度警報音が1秒間に3回鳴動した。続いて機長が「まずい、なんか爆発したぞと発言。直後にオートパイロットが解除され機体「エンジン、ランディング・ギア等の表示」の点検が行われた。

 4つのエンジン、ランディング・ギア等に異常がなかったが、航空機関士が「ハイドロプレッシャー「油圧機器の作動油の圧力」を見ませんか」と提案する。18時25分、機長は「スコーク7700『非常事態』」を発信し、東京航空交通管制部に羽田へ引き返すことを要求した。

 無線交信の後、機長が副操縦士に対し「傾きは、そんなにとるなマニュアル「手動操縦」だから」「傾きを戻せ」と指示。しかし、副操縦士は「戻らない」と返答した。その際、航空機関士が油圧が異常に低下していることに気づいた。この時機体は、垂直尾翼は垂直安定板の下半分のみを残して破壊され、補助動力装置も喪失。

 油圧操縦システムの4系統全てに損傷が及んだ結果、操縦システムに必要な作動油が全て流出し油圧を使用したエレベーター「昇降舵」やエルロン「補助翼」の操舵が、不能になった。18時27分、異常発生からわずか3分足らずで航空機関士が「ハイドロプレッシャーオールロス『油圧全て喪失)』と発出『コールアウト』した。

 機長らは異常発生直後から墜落まで、操縦不能になった理由を把握できていない模様であった。油圧系統全滅を認識しながらも油圧での操縦を試みていた。同じ事、客室の気圧が減少していることを示す警報音が鳴っているため、とにかく低空へ降下しようとした。しかし、ほとんどコントロールができない機体にはフゴイド運動やダッチロールが生じた。

 ピッチングとヨーイング、ローリングを繰り返した。DFDRには、機首上げ角度20度、機首下げ15度、機体の傾き右60度、左50度の動きが記録されていた。18時32分、航空機関士に対し客室乗務員から客室の収納スペースが破損したと報告が入る。18時33分、航空機関士が緊急降下「エマージェンシー・ディセンド」と酸素マスク着用を提案。

 18時35分、羽田空港にある日航のオペレーションセンターとの交信では航空機関士が「R5のドア『機体右側最後部のドア』がブロークン『破損』しました」と連絡している。18時37分、機長がディセンド「降下」を指示するが機首は1000メートル余りの上昇や降下を繰り返すなど、不安定な飛行を続けた。

 18時38分頃、これを回避するためにランディング・ギアを降ろそうとするが、油圧喪失のため降ろせなかった。18時40分、航空機関士の提案で、バックアップシステムを用いてランディング・ギアを降ろした。機体は、富士山東麓を北上し、山梨県大月市上空で、急な右旋回をし始めた。

 その後、高度22000フィート 「6700メートル」から6000フィート「1800メートル」へと降下。その後、羽田方面に向かうものの、埼玉県上空で左旋回し、群馬県南西部の山岳地帯へと向かい始める。機体はロール軸の振幅が縮小して多少安定した。18時46分、機長が「これはだめかも分からんね」と発言。

 やがて機体は山岳地帯上空へと迷走していく。18時47分頃からは、彼らの中でも会話が頻繁になり、焦りが見え始めていた。右、左との方向転換が繰り返し指示される中で、操縦している副操縦士に対して機長が「山にぶつかるぞ」と叫ぶなど、緊迫した会話が数回記録されている。

 この時機体は6000フィート「1800メートル」前後をさまよっていた。18時48分頃には航空機関士が、操縦する副操縦士に「がんばれー」と励ますとともに、たびたび副操縦士の補助をしていた様子が記録されている。機長の機首下げの指示に対して副操縦士は「今舵いっぱい」と返答している。
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